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534○ シーサイド

「シーサイド」

海水浴は特別な旅行の一番の楽しみで
長い旅路の末に
宿泊先の最寄り駅に着いた電車の扉が開いた途端
溢れかえる潮風に体は宙にさらわれた
このままこの街をゆっくりと
眺めていたい反面
やっぱり体は海を求めて
太陽の下の母なる元へと飛び込んだ
無我夢中から覚めたのは
偶然出会ったとある家族の女の子
言葉はないけど彼女の目と僕の目は
少しの間繋がったのだ
わずかな時間は儚く通り抜け
以後交わることはなかった思い出
今どこで何をしているかも
思い出せない日が来るなら
今はただ感傷のままに

記憶は過去に残像を残しながら
心に薄いカーテンを重ねる
海が見える場所を訪ねた際には
あの時の光景が重なりそうな気がして
僅かに残る
消えかけの甘酸っぱさが
どうにも忘れられないように
特別な場所となっているのだ
時間が流してくれるのは
ここにはないということである

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NAKAJI

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