「純なる罪として」
世話をかけたお礼として
あなたの望むものをひとつ叶えたい
ただあなたが誰なのか
よく知らないのが躊躇の種である
多忙にかまけ一月また一月と
時間は感謝の純度を薄める
離れていくベクトルと
詳細の賞味が切れていく中で
二人は出会う前の全くの他人となり
こうして物語は書き損じることとなった
忘れた頃に車窓からみた景色が
記憶の断片をくすぐった
全身に確かに感じた熱は
終わったはずの話を引っ張り出して
書き始めてしまった
ここからは罪の薫りしかしないと
分かっているのに
人はなぜその先を知りたがる
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NAKAJI