介護予防事業について考えてみました(完)
前々回の記事から介護予防について考えてきました。
興味のある方はぜひ一読いただければ嬉しいです。
なぜ介護予防をするのか?
このテーマの根本的な問いですが、結論は、病気や怪我を正しく理解して発症のリスクを減らし、病気になった時に正しく冷静に対処するということです。
そして、介護予防は高齢になってから始めるのではなく、できるだけ若いころから始める必要があると考えています。
なぜなら、介護が必要になった主な原因は、「認知症」、「脳血管疾患(脳卒中)」、「骨折・転倒」が上位を占めていますが、これらの疾患の発症リスクは若いころからの生活習慣との関りが大きいからです。
認知症
認知症の危険囚子は、
不可逆的因子(自分ではコントロールできないもの)
➤ 加齢、遺伝、教育歴、頭部外傷、性別などが挙げられる。
可逆的因子(自分ではコントロールできるもの)
➤ 生活習慣病の未治療、過度の飲酒、喫煙、などが挙げられる。さらに、中等度以上の身体活動についても非常に多くの観察型研究が行われており、運動をしているほうが明らかに認知症の発症率が低いことが示されている。
引用:科学的根拠に基づく認知症予防 太田博明 鈴木隆雄 O.li.v.e.―骨代謝と生活習慣病の連関― 4(1): 55-57, 2014.
脳卒中
脳卒中(脳梗塞、脳出血、くも膜下出血)の危険因子は、
➤ 肥満、高血圧、脂質異常症、糖尿病、腎機能低下、多量飲酒(日本酒換算で男性 2.0 合/日以上,女性 1.0 合/日以上)、喫煙などが挙げられています。
引用:脳卒中発症はどこまで予防できるか 羽山実奈 木山昌彦 磯博康 成人病と生活習慣病 48(7): 737-743, 2018.
転倒による骨折
ロコモティブシンドロームをご存じでしょうか?
運動器疾患の有無が健康寿命に大きく影響していることが明らかとなり、2007年に日本整形外科学会はこの概念を提唱し,運動器の健康の重要性を強調しています。
ロコモティブシンドロームの原因は、
➤ 加齢による運動器機能不全、骨粗しょう症に伴う骨折、変形性関節症、
脊柱管狭窄症などの運動器自体の疾患が挙げられています。
これらは、適切な運動習慣の確立により,骨粗髪症を改善し,転倒を予防し,骨折リスクを軽減すると考えられている
詳しくは、ロコモパンフレット2020をご覧ください!
https://locomo-joa.jp/assets/pdf/index_japanese.pdf
引用:高齢期における運動器疾患の重要性 松原全宏, 田中栄 Geriatric Medicine(老年医学) 53(12): 1237-1240, 2015.
健康が重要な資本となる時代
リンダ・グラットン著 ライフシフト~100年時代の人生戦略~の中で、過去200年のほとんどの期間、平均寿命は右肩上がりで伸びてきおり、2007年に生まれた日本の子どもが107歳まで生きる確率は50%あるという研究結果を紹介しています。そして、そのような時代では、健康に老いることを意識することが重要で、そのために生活習慣を整える必要があると述べています。
若いころは、健康に対するモチベーションが低くなりやすいため、見過ごしてしまいがちです。ただ、生活習慣病は数十年の潜伏期間を経て発症するため、疾患を正しく理解して発症のリスクを減らし病気に備えることが重要です。
まとめ
私は、急性期病院で作業療法士として働いています。
病気を発症した方々に対してリハビリテーションを行いますが、「この方が病気になる前に自分にできること無かったの?」と考えることがありました。
日本人は諸外国に比べ、ヘルスリテラシーが低い※という指摘もあります。
※File No. 68 ヘルスリテラシーと意思決定支援 中山和弘 新薬と臨牀 65(3): 371-376, 2016.
昨年から介護予防教室の運営に関わる中で、もう一度、この問いを再考し、微力ではありますが、皆さんのヘルスリテラシーを高めるお役に立ちたいと思っています!
最後まで読んでいただき、本当にありがとうございました。
Shingo