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人はなぜ他人を許せないのか?【中野信子著・脳科学】

人はなぜ他人を許せないのか?【中野信子著・脳科学】今回は脳科学者中野信子さんが書かれた『人はなぜ他人を許せないのか』という本を解説します。著者の中野信子さんは日本を代表する脳科学者です。そんな中野先生が本書では「人はなぜ他人を許せないのか」ということや、すべての人が陥ってしまう可能性がある「正義中毒」というよろしくない症状などについて解説されています。


あなたはどんな時に人を許せないと思うでしょうか。浮気、差別、不謹慎な言動、ルール違反など、私たちが「許せない」と思う瞬間はたくさんあるかと思います。

私たちのそのような「許せない」という感情はなぜ起こるのか、なぜ人は他人を許せないのか。その理由について学ぶことで、他人や多様な価値観を受け入れられる器の大きな人になれると思います。ですので、本書はとてもおすすめの本です。

というわけで、今回は本書を読んで学んだことを元に、

  1. 正義中毒とは

  2. 日本社会の特殊性

  3. 正義中毒への3つの対抗策

という順番で解説していきますので、ぜひお楽しみください。

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1. 正義中毒とは

人は他人に「正義の制裁」を与えることで快楽を得ることができます。そして、そこから得られる快楽に中毒になった状態が「正義中毒」です。ここでおそらく「なんで人は他人に正義の制裁を与えると快感を得ることができるのだろう?」と思ったことでしょう。その疑問に対する答えはこうです。私たち人間は社会的な生き物であるため、裏切り者を排除する本能が発達しているからです。

さあ、なんだかややこしい話になってきましたが、丁寧に一つずつ説明していきます。私たち人間はコミュニティを形成することで繁栄し、生き延びてきた社会的な生き物です。人にとって集団を作ることこそが生き残る手段であり、とても重要なことでした。これはよく言われることですが、そもそも人類の歴史の大部分は狩猟採集の時代でした。人は約250万年もの間、狩猟採集の時代が続いた後に、ようやく1万年前から農耕をスタートさせています。その後、約250年前に産業革命が起き、やっと現在に至るわけですから、人類の歴史の99%以上は狩猟採集の時代なんですね。


でもって、この数百年でテクノロジーの急激な発達により社会は激変しています。しかし、生物の進化というものはとてもとても遅いです。生物の進化は徐々にしか進みません。そういうわけで、社会はものすごく進歩しましたが、私たち人間の体や脳みそは数万年前からそれほど変わっていないのだそうです。これが一応前提としてとても大事なことです。

では、話を元に戻します。人はそのように集団で協力することで数百万年も生きてきました。この数百万年の過程で、人は裏切り者を排除するのが上手になっていったんです。というのも、今でこそ一人で生きていくのも可能な時代にはなりましたが、そんなのはここ最近のことです。人類の歴史の99%を占める狩猟採集時代のような大昔は、集団でなければ生きていけない時代でした。

そういうわけで、集団の中に裏切り者やルールを破る人、自分の利益ばかりを優先する人がいたら、もう集団もろとも餓死するという危険性があったわけです。そんな時代が数百万年も続き、その過程で人は裏切り者を排除する仕組みを習得していったというわけです。

では続いて、この裏切り者を排除する仕組みについて掘り下げます。私たちの本能に備わっている裏切り者を排除する仕組みとは一体どんなものでしょうか?これこそが実は冒頭でお伝えしたものです。冒頭でお伝えした他人に正義の制裁を与えることで快楽を得ることができるという仕組みです。裏切り者やルールを守らない人を排除するのが私たちの本能であり、その排除する行為によって多かれ少なかれ快楽を得ることができるということです。

つまり、ここまでの話をまとめると、人は集団で協力しないと生きてこられなかった社会的な生き物である。だから人には裏切り者を排除する本能があり、その排除する行為によって多かれ少なかれ快楽を得るようにできている。そして、この他人に正義の制裁を与えることから得られる快楽にはまってしまい、過剰に人を許せなくなる症状が正義中毒であるということでした。

そして、この正義中毒というのが、実は私たちが住んでいるこの日本ではより起こりやすいという、これまた面白いことになっています。ですので、続いてはこの日本という特殊な環境について見ていきましょう。


2. 日本社会の特殊性

日本人は比較的正義中毒に陥りやすいということが言われています。どうですかね、これは納得できるところでしょうか?それとも全然同感できないという感じですか?なぜ日本人は比較的正義中毒に陥りやすいのか。それは、日本人は社会性が強い傾向にあるからです。

社会性が強いというのは、より集団で協力することを重要視するということです。これは納得できるところではないでしょうか?この社会性が強いために、日本人はより他人への気遣いができるというようないい側面があります。また、その一方で裏切り者には厳しいという一面も持ち合わせているわけです。

ではなぜこのように日本人は社会性が強い傾向にあるのでしょうか?この理由がまた面白くて、実は日本がどんな場所にあるのかというところに理由があります。結論、日本は自然災害がたくさん起こる地域であるため、昔から集団で協力する必要性が高かったというのが理由です。

皆さんご存知の通り、日本は高温多湿で激しい雨が降りますし、台風も通過します。さらには、日本はプレートの境界に位置するため、火山が多く、地震もたくさん発生します。世界中で起こるマグニチュード6以上の大きな地震のうちの約2割は日本で起きているというほどの、日本は地震大国です。このように日本は地理的に自然災害が深刻な地域です。そして、これはもちろん大昔から変わっていません。

このような自然災害が深刻であるという条件の下で、日本人はより協力していく必要があったため、社会性が高い民族になっていったわけです。

3. 正義中毒への3つの対抗策

では、どうすれば他人を許せる人になれるのでしょうか?ということで、最後は正義中毒への対抗策を紹介します。

そもそも他人を許せない人、正義中毒に陥りやすい人はどんな人だと思いますか?それは、多様な価値観を受け入れられない人です。いろんな価値観を受け入れられる人は、「許せない」という感情を持つのではなく、「まあ、そういう人もいるよね」という風に考えることができます。

あとは、他にも人を許すためには合理的であることも大事です。合理的に

物事を考えられる人は、他人を許さないということに価値を見出さない場合が多いかと思います。例えば、芸能人が不倫しようが自分には関係ないし、ポイ捨てしている人に対してそれを注意したところで、多分その人は今後もポイ捨てし続けるから、注意するだけ時間と労力の無駄だし、他人に介入したところでその人の考えを変えるというのはほぼ不可能に近いし、といった具合です。

以上のように、他人を許さないことで得られるメリットはあまりないでしょう。それどころか、正義中毒の人は「なんで自分はこんなに人を許せないんだろう」というような自己嫌悪になってしまうパターンがあるくらいです。とはいえ、母親が子供をしつけるために子供の悪い行いを許さず、ちゃんと叱ってあげるというような必要な許せない気持ちももちろんあると思います。ですので、すべての許せない気持ちが悪いものではないという前提に立ちつつ、良くない形での正義中毒に陥らないための対策法について見ていきましょう。


どうすれば多様な価値観を受け入れられたり、合理的に考えられるようになり、正義中毒になるのを防げるのでしょうか。結論、脳の前頭前野という部分を鍛えて衰えさせないことです。脳の前頭前野を鍛えることで、多様な価値観を受け入れたり、合理的に考えられるようになります。この脳の前頭前野という場所は、分析的な思考や客観的な思考を司る場所です。ですので、前頭前野が発達している人は、目先の利益よりも長期的な損得を考えて選択ができたりして、社会的地位や経済的地位が高くなる傾向があります。


この前頭前野という場所は、比較的発達するのが遅い部分でして、7歳から9歳くらいから発達し始めて30歳くらいまで成長し続けるそうです。しかし、30歳を過ぎていくと徐々に衰えていく部分でもあります。従って、20代の人はなるべく前頭前野を鍛えられるように、30代以降の人は前頭前野をなるべく若く保てるように意識する必要があります。特に年を取れば取るほど前頭前野が衰えて、より頑固になったり人を許せなくなっていき、嫌なおじさん・嫌なおばさんになってしまうので注意する必要があります。

前頭前野を鍛える方法

というわけで、今回は前頭前野を鍛えたり若く保つための方法を3つピックアップして紹介していきます。この3つの方法を採用して、ぜひ前頭前野を鍛えて器が大きい人、合理的で賢い人になっていきましょう。


新しい経験を積極的にすること

というわけで、まず1つ目は新しい経験を積極的にすることです。積極的に新しい経験をすることで脳に良い刺激が入り、脳が活性化します。新しい経験と言っても大げさに捉える必要はありません。例えば、いつもと違う道を通ってみるとか、いつもと違うお店を選ぶ、いつもと違うメニューを選ぶなどの小さな新しい経験でも大事なのだと中野先生は言っています。これと似たようなことを脳医学者の加藤敏典さんも言っています。

以前、脳の教科書という本の解説動画で詳しく話しましたが、脳は部分ごとに主に8つの役割を分けて担っています。その8つの役割とは、思考系、感情系、伝達系、理解系、運動系、視覚系、聴覚系、記憶系であり、これらを満遍なく使ってやることで脳全体が活性化し、脳全体としての生産性が上がるということを話しました。

中野先生も加藤先生もおっしゃっているように、脳のパフォーマンスを上げるためには、脳に様々な刺激を与える必要があるみたいです。そうすることで、脳が生き生きとし、仕事や学業での成果アップにつなげることができる。そして、脳を衰えさせないため、正義中毒になるのを防ぐことに直結するということです。

確かに、慣れ親しんだ行動の方が楽だし、合理的ではあります。しかし、そればかりだと脳への刺激が少なくなって脳は衰えてしまいます。不合理を選んだ方が合理的な場合もあるということです。慣れ親しんだルーティンの行動と、何か新しい体験にチャレンジすること、この2つのバランスが大事だということです。


余裕を持つ

では続いて、前頭前野を鍛える方法の2つ目は、余裕を持つことです。生活に余裕を持っておくことが、前頭前野をちゃんと働かせるためには必要です。というのも、寝不足だったり、仕事や人間関係の問題でいっぱいだったりすると、脳のパフォーマンスは落ちてしまいます。ですので、生活に余裕を持つこと、きちんと休息の時間を持つこと、やるべきことをためすぎないことが大事になってきます。

とはいえ、ストレスや困難な状況というのが適度にはあった方が脳が活性化するのもまた事実です。これはヤーキーズ・ドットソンの法則として知られるものですが、この図が示すように、人はストレスが多すぎても少なすぎてもダメです。適度なストレスがある時にこそ、最高のパフォーマンスを発揮できるというのがこの法則です。

なぜこうなるのかというと、アドレナリンという脳内物質が理由になります。アドレナリンが分泌されると、私たちは集中力や記憶力などが向上し、脳の生産性が上がります。そして、このアドレナリンは適度なストレスがある時に適度に分泌されるものです。ですので、適度なストレスがある環境でこそ、人は最高の生産性を発揮することができます。

とはいえ、どちらかというとストレスがなさすぎて困っているという人よりも、ストレスが多くて困っている人の方が多いと思います。ですので、自分なりのストレス解消法を編み出すとか、ちゃんと休息の時間を取るなどして生活に余裕を持つことが大事です。そうすることで、きちんと前頭前野を働かせることができます。

前頭前野を鍛える方法3つ目は、食事と睡眠を整える

では続いて、前頭前野を鍛える方法3つ目は、食事と睡眠を整えることです。体や脳にとって食事と睡眠はとても重要な役割を担っています。

まず食事については、もちろんバランスよく食べることが大事です。そして、特に脳のために摂るべきなのはオメガ3脂肪酸という脂質です。このオメガ3脂肪酸は脳が肥大化し発達するための原料になります。ですので、前頭前野の発達や老化防止のために必須の栄養素だということです。このオメガ3脂肪酸は、サケ、マグロ、イワシ、サバ、サンマなどのいわゆる青魚に多く含まれています。また、他にはカキなどの貝類、クルミなどのナッツ類、エゴマ油やアマニ油などにもたくさん含まれているので、これらの食品を積極的に摂ることが有効です。

では次に睡眠についてです。睡眠については個人によって理想的な睡眠パターンがだいぶ異なってくるので一概には言えませんが、少なくとも毎日6時間、できれば7時間寝るのがいいと言われています。また、夜に6

から8時間まとめて寝るのも当然大事ですが、日中にお昼寝をするのもとても有効です。お昼寝は夜の睡眠の10倍から20倍の回復効果があるという研究成果もあるほどです。お昼寝については、10分から20分くらいするのがいいという研究報告が多く、例え5分とか12分であっても回復効果はとても大きいということが言われているので、ぜひ取り入れてみてください。

睡眠不足は一時的なものも慢性的なものも脳の生産性をガクッと落とします。睡眠不足にならないようにすることは何をするにしても超重要な課題だと言えるので、ぜひ意識してみてください。

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まとめ

最後に内容をまとめます。

  1. 正義中毒とは: 人は集団で協力しないと生きてこれなかった社会的な生き物である。だから、人には裏切り者を排除する本能があり、その排除する行為によって多かれ少なかれ快楽を得るようにできている。そして、この快楽にはまってしまい、過剰に人を許せなくなる状態が正義中毒であるということでした。

  2. 日本社会の特殊性: 日本の地理的な条件によって、日本人は比較的社会性が高い民族になった。そのため、より正義中毒に陥りやすいということでした。

  3. 正義中毒への3つの対抗策: 対抗策としては、脳の前頭前野を鍛え、多様性を受け入れる器と論理的思考を磨くことが重要です。そのための3つの方法としては、積極的に新しい経験をすること、生活に余裕を持つこと、食事と睡眠を整えることがあります。ぜひ、脳に良い習慣を取り入れて、脳を鍛えていくことで、より良い人生を自ら作っていきましょう。

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