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【はじめに】ジェーン・オースティン作品に見る、摂政時代のクリスマス
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世界的に有名なクリスマスをテーマにした小説と言えば、やはりディケンズの『クリスマス・キャロル』を思い浮かべる人が多いのでは。
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初版本。
Public domain / Wikimedia Commons
ところで、ディケンズと同じイギリス出身の作家で、出版されたすべての作品に「クリスマス」というワードが出てくる作家をご存知でしょうか。
それがこの方、ジェーン・オースティン。
ディケンズより一昔前の摂政時代(※)に活躍した女性作家です。
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※「摂政時代」とは、時の国王ジョージ3世が精神疾患のため 息子のジョージ王太子が摂政として統治した時代のこと。
(どちらもジョージでややこしいですね)
摂政時代の期間については色々な解釈がありますが、ここでは1795年頃から1837年頃を指すこととします。
日本で言うと江戸時代後期くらい。
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かの夏目漱石は、著書『文学論』の中でオースティンに関してこう述べています。
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Jane Austen は写実の 泰斗なり。平凡にして活躍せる文字を草して 技神に入るの点に於て、優に 鬚眉の大家を凌ぐ。
夏目漱石・著(1907年)
(大まかな訳)
ジェーン・オースティンは写実の天才だ。
平凡だが生き生きと躍動する文章は神業の域で、男性の大作家をも凌ぐほどだ。
また文芸評論家の山本健吉はもっと短い言葉で
「世界で一番平凡な大作家の一人」」
と表現しています。
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イギリスの片田舎にある牧師の家に生まれたオースティン。
彼女は、自分の目で見聞きしたことだけを小説にしました。
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スティーブンソン村の牧師館
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Fernweh • CC BY-SA 2.0
Wikimedia Commons
故に、作品の主要な登場人物は皆イギリスの地方に住む中流階級(アッパーミドルクラス)の面々。
その内容も,ご近所同士のピクニックや舞踏会など当時の中流階級にとってはありふれた話題ばかりです。
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by C.E. Brock • Public domain
Wikimedia Commons
騎士もデンマーク王子も出てこないし、小人の国はもちろんフランスやイタリアと言った外国が舞台になることもありません。
先にご紹介した両者が揃って「平凡」という評価をしているのも頷けるでしょう。
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さて、そんな平凡がウリ(?)のオースティン。
牧師の娘ということもあり、クリスマスも当然身近な話題のひとつでした。
出版された小説全てに「クリスマス」というワードが出てくるのも納得ではないでしょうか。
(余談)
オースティン作品の「クリスマス」という言葉が出てくる回数ランキング↓
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project Gutenberg
を利用して簡単に分かるのですよ
今回は、そんなジェーン・オースティンの小説を参考にしながら、当時のリアルなクリスマスに迫ってみたいと思います。
12月1日から22日まで、毎週日曜日に投稿予定です。
ご興味を持って頂けたら、シュトーレンを食べるようにちびりちびりとご覧頂けると嬉しいです。
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《今後の投稿スケジュールとトピック》
12/1 「帰省シーズン」
12/8 「ユールログ」
12/15 「十二夜と芝居」
12/22 「クリスマスの憂鬱」
《おまけ》
卒論テーマをジェーン・オースティン作品にしようとして「少女マンガみたいじゃない」と言われた話はこちら↓
参考
ジェイン・オースティン (中公新書)
大島一彦著・1997.1.1