わたしの本棚92夜~「俳句いまむかし」
2010年5月1日から始まった毎日新聞朝刊の季語刻々の連載。毎朝、社会面に今日の一句として、坪内先生が選んだ俳句と鑑賞エッセイが載ります。10年を超えた季語刻々のセレクト版です。この本では、同じ季語の俳句で、現代の俳人と昔の俳人を並べて鑑賞しており、今昔の対比も面白い本です。「船団」の先輩や句友たちの珠玉の俳句がたくさん載っています。
☆「俳句いまむかし」坪内稔典著 毎日新聞出版局 1800円+税
今の俳句では、川上弘美氏や夏井いつき氏など売れっ子俳人たちから、小学生の俳句まで、昔の俳句は、蕪村、芭蕉、夏目漱石などの偉人たちの俳句も載っています。
〇重ね着、厚着(季語・冬)
寒ければ着重ね恋しければ逢う 池田澄子(今)
月の浦厚着童女のうなづくのみ 佐藤鬼房(昔)
〇露(季語・秋)
野の草へ露を配りにゆくところ ふけとしこ(今)
芋の露連山影を正しうす 飯田蛇笏(昔)
〇へちま(季語・秋)
学校のへちまぶらぶら子どもらも 小枝恵美子(今)
糸瓜咲いて痰のつまりし仏かな 正岡子規(昔)
〇無花果(季語・晩秋)
無花果はジャムにあなたは元カレに 塩見恵介(今)
無花果の一つ大きが愚に甘き 野沢節子(昔)
〇あおばづく(季語・夏)
あっ僕はあやまらないぞあおばずく おおさわほてる(今)
夫恋へば吾に死ねよと青葉木菟 橋本多佳子(昔)