わたしの本棚30夜~「夏子の冒険」
今年は三島由紀夫が死んで50年になるそうです。そのせいか、2020年夏の角川文庫フェア100選のなかで、この作品が含まれており、ジャケ買いしました。1953年には中村登監督、角梨枝子主演で映画にもなった作品で、生まれる前のことで観てないですが、評判だったそうです。「夏子の冒険、読みましたか? 観ましたか?」って年配の方に数回、聞かれることがあったので(わたしの名前が夏子なので)、ようやく文庫本再版で、巡り合えた感じです。50年以上も前の話なのですが、不思議と突拍子もない夏子さん、イキイキと描かれ、現代でも違和感なかったです。
☆「夏子の冒険」三島由紀夫著 角川文庫 520円+税
三島由紀夫がこんな娯楽作品、書くんだ、というのが驚きでした。20歳の主人公夏子さんは、たくさんの男性に求婚されるも、結婚に興味がなく函館の修道院へ入ることにします。「あたくし、修道院へ入るの、やめてもいいの」と函館行きの列車で出会った毅と意気投合し、彼の熊狩りに付き合うことに。母、祖母、叔母が彼女を追って北海道まで駆け付け、てんやわんやの騒動に。魅力的なわがまま娘の夏子さんが北海道を舞台に展開する奇想天外な冒険物語です。村上春樹著の「羊をめぐる冒険」はこの作品が原案と言われているそうです。文庫本には、千野帽子氏の見事な解説付きです。