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わたしの本棚56夜~「道ありき」<青春編>

 幼少期に、近くの教会に通った経験は、わたしにとって「死」の考え、とりわけ自殺は絶対してはいけないという考えを植え付けました。社会人になって、仲のよかった友人が信仰を受け入れたとき、わたし自身に迷いもありましたが、なぜか三浦綾子さんの本を読み続けました。「塩狩峠」や「氷点」といった小説に涙しましたが、やはり自伝的小説である「道ありき」三部作は大きな感動をもたらしてくれ、当時、悩めるときに読み返し、ところどこと赤線が引いてあります。文庫本の値段は、平成3年32刷のときのものです。

☆「道ありき」<青春編>三浦綾子著 新潮文庫 440円(税込み)

 「綾ちゃん、人間はね、一人一人に与えられた道があるんですよ」と幼馴染の前川正によって優しく語られる言葉が本書の主題です。敗戦による混乱のなかで、自分自身の教えることに確信を持てず教師を辞し、綾子は二重婚約したりします。24歳からは、肺結核の発病による療養生活を13年間おくります。そんな綾子を支える前川青年。自己の懺悔、青春、愛、信仰をセキララに告白し、35歳の前川と37歳の綾子が結ばれるところで青春編は終わります。人はそれぞれの道のなかで、どのようにつらく、希望などみえないようなときでも、人は人にであえるのだということを「道ありき」は静かに描いてくれています。

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