せかいのおきく~懸命に生きる人々~
慎ましやかで、懸命に生きる人を応援したくなるような作品でした。
江戸時代末期、人民の糞便を買い取り、肥料として使う農家に売る仕事があったそうで、そんな仕事に就く若者たちと、元武家の娘の交流を描きます。 理不尽な世の中で、淡い恋愛と青春が陽気に描かれた作品で、観終わったあと希望を感じ、「そこ笑うとこでしょ」という矢亮(池松壮亮)の台詞が劇場をでたあとも元気に後押ししてくれました。
☆せかいのおきく 阪本順治監督作品
1、登場人物
おきく(元武家の娘、今は父とふたり長屋に住む)・・・黒木華
中次(下肥買い、おきくを慕い、文字を習う)・・・寛一郎
矢亮(下肥買い、中次の相棒)・・・池松壮亮
松村源兵衛(おきくの父、元武士)・・・佐藤浩市
孝順(坊主、寺でおきくが習字を教える)・・・真木蔵人
孫七(長屋の住人)・・・石橋連司
2.現代と繋ぐ取り組み
この映画は、自然科学研究者と連携して、持続可能な開発目標(SDGS)を考えよう、循環型社会の回復を映画で伝えようという試みもあるそうです。「YOIHI PROJECT」より。江戸時代末期には、こういった糞尿の循環の取り組みが自然と行われていたそうで、学ぶべきことでもありました。全編モノクロなので、そんなに糞尿は気にならなかったし、7章からなる各章の終わりに、パッとカラーが入り、印象深くなっています。
3.感想
7章からなります。とにかく、黒木華がおきゃんな武家娘を好演していて、愛らしく可愛かったです。特に5章では、習字のお稽古で、「ちゅうぎ」を「ちゅうじ」と書いて悶える場面、めちゃくちゃ可愛いです。
ストーリーは、決して、楽しい世界ではなく、どちらかというと、その時代の社会の底辺を描いているのですが、暗くはないです。懸命に生きています。字が読めず書けない中次が、子どもたちと習字で言葉を学ぶシーンなどは初々しく、また、松村源兵衛から「せかい」についての概念,惚れた女に世界で一番と言ってやれ、と話される場面は、現実の親子共演で話題にもなりましたが、いいシーンでした。
雪のなか、中次がおきくに、不器用ながら手ぶり身振りで愛を伝えるシーンは、本当に美しいシーンでした。子どもたちに習字を教えていたおきくが、喉を切られてからふさぎこんでいたときに、お坊さんが来て、「言の葉こそが大切なんだ」と出てくるように頼む場面もよかったです。言葉の大切さ、美しさ、尊さが響きました。
幾度も厳しい現実にあうとき、矢亮が「そこ笑うとこでしょ」という台詞は、観ている方にも力をくれる台詞でした。90分と短いですが、糞尿を取り扱っていますが、全編に凛としたものがあり、観終わったあと、最終章の「青春」という言葉が清々しく感じる作品でした。万人に受けるエンタメ映画ではなく、時代劇という形をとっていますが、純文学系の映画だと思いました。
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*画像は公式画像から借りました。