わたしの本棚1夜~「夏物語」
今日から、読んだ本で心に残っているものを書き留めていこうと思います。原則として今年読んだ本で近年発売のもの。怠けものなので、縛りで毎日書きます。(続けられるかな・・・)
☆「夏物語」川上未映子著、文藝春秋 1980円+税
面白かったです。物語の主題はAID(非配偶者間人工授精)の話なんだけれど、それ以上に不謹慎かもしれないですが、明るい貧乏のエピソードが素晴らしかった。主人公夏子さんは大阪の下街に生まれ、姉の巻子ともに、どうしょうもない貧乏のなかで成長します。祖母の家で母親の女手ひとつで極貧の中、成長、今は東京で作家として生活しているのですが、過去の貧乏自慢は胸に感動です。中でもお金が払えなくて学校のぶどう狩りに行けなくて、段ボールでぶどう狩りをする光景など、涙の中にも温かい笑いがあります。豊胸手術を受けにくる巻子、しゃべらなくなった姪の緑子、逢沢との出会い、子どもを持ちたいと思うこと、編集者の死、非婚で子どもを産む選択。
正直、AID(非配偶者間人工授精)、体外受精の話などは、そんなに響かなかったのですが、全編にあふれる、明るい貧乏の笑いと温かさは、秀逸でした。底知れぬバイタリテイを感じてしまいました。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?