わたしの本棚第108夜~「大阪のお母さん」
大阪女性文芸賞という公募の文学賞があります。受賞後も書き続けて、出版されて活躍されている方もいます。今回の、葉山由季さんもそのひとりです。この本は、女優の香川京子さんへの取材をはじめ、多くの文献や取材に基づいて、独自の浪花千栄子さんを描いて力作です。帯は、宮本輝氏です。
☆「大阪のお母さん」 葉山由季著 潮出版 803円
NHK朝ドラのモデル「浪花千栄子」さんの一生です。ただ、朝ドラをずーっと見ていたわたしのような人間からすると、ちょっと違和感もありました。主人公の道頓堀での奉公先の主人が、本ではものすごく意地悪です。が、ドラマでは名倉潤さん演じる旦那さん、篠原涼子のごりょうさん、ともに奉公先の人は温かで、ギャップが激しいです。NHKの「岡安」は、現存するうどん屋さんの「今井」がモデルとのことで、テレビはいけずな場面を描きにくかったのかもしれないです。本は、奉公時代から涙なしでは読めない、過酷な人生を活写しており、取材に基づいたフィクションの形をとっています。
「浪花千栄子は勝利者や成功者ではなく、最後まで負けなかった女性だと思う」という帯の宮本輝さんの言葉がぴったりで、彼女の過酷な人生をたどりながら、泣きながらも勇気をもらいました。
★葉山由季★
1955年東京都生まれ。跡見学園短期大学卒。
第11回大阪女性文芸賞「二階」で受賞(選考委員・河野多恵子、秋山駿)
第27回北日本文学賞選奨「ほくろ」で受賞(選考委員・宮本輝)
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