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わたしの本棚28夜~「星の子」

今秋、話題の邦画は、「望み」(堤幸彦監督)「朝が来る」(河瀬直美監督)星の子(大森立嗣監督)と、どれも原作の小説が素晴らしい作品です。

「望み」と「朝が来る」は、物語性の強い、登場人物の喜怒哀楽のはっきりした作品で、映画でも小説でも読者の登場人物への共感や理解は変わらないと思います。ただ、この「星の子」は、小説が芥川賞候補になるだけあって、純文学系であり、主人公の心が鮮明には描かれていないので、映画の方がわかりやすいです。主人公を演じた芦田愛菜さんの好演もあり、表情で喜怒哀楽などわかりました。小説では、その部分を読者にゆだねるのですが、信仰に染まる父母に対する彼女の気持ち、嫌悪か信頼かがわかりづらかったです。野間文芸新人賞受賞作品です。

☆「星の子」今村夏子著(朝日新聞出版)1540円(税込み)

 主人公林ちひろは中学3年生。生まれたときのアトピーが水で治ったことから、父母はその水を販売する新興宗教を信仰します。年々、信仰が深まり、おかしな儀式をしたり、お金をつぎこみます。姉は呆れて、家出しますが、ちひろは両親の元で愛情を受けて育ちます。新興宗教の弊害を書くのかと思って読んでいるとそうでもなく、ちひろ自身、やっかいとは思うものの、父母を愛しているゆえに、宗教の集会などへ参加します。「流浪の月」と同じ解釈で、「事実と真実は違う」で、信仰によって家族が散財して迷惑かと思う世間の心配とは裏腹に、父母とちひろの絆は強くて意外と楽しい生活でした・・・。

 芥川賞候補になった数年前に小説を読みました。その時、正直、ちひろは被害者かな、と思って読んでしまいましたが、今秋映画をみて、どうやらちひろ自身、父母への愛情は深いです。ラストシーンの美しさも映画の寄り添いは、小説以上に優しさにあふれていました。今村夏子さんの作品は、処女作「こちらあみ子」が一番感動しましたが、この作品も、映画を観てからだと、最初読んだとき以上に深い洞察を感じてしまい、信じるということ、を考えてしまいました。

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