わたしの本棚48夜~「錦繡」
宮本輝さんの小説は、河(泥の河・蛍河・道頓堀河)の三部作も好きですが、やはり「錦繡」が一番好きです。紅葉の蔵王に行ってみたくなります。書簡形式は、インターネットやSNSが発達した今では珍しいことですが、抒情豊かで、想像力が膨らんで好きです。わたしのなかでは、連城三紀彦氏の「北京の恋」という短編小説と双璧をなす書簡形式の傑作です。文庫本の値段は、平成二年十七刷のときのものです。
☆「錦繡」宮本輝著 新潮文庫 360円(税込み)
「前略 蔵王のダリア園から、ドッコ沼へ登るゴンドラ・リフトの中で、まさかあなたと再会するなんて、本当に想像すらできないことでした」で始まる主人公からの手紙。かつて夫婦だったふたりが、時間を経て、いろんな経験をしてから偶然、蔵王で出会い、文通を始めます。往復書簡が、それぞれの人生を照らし、辛いことも温かいことも書くことで癒されていきます。夫婦でなく、恋人でもなく、友人でもなく、男と女。ふたりが尊重しあえる存在になっていくことが、生きていくことが、美しい蔵王の紅葉と一緒に奏でられる小説です。
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