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小説 続ける女 完結。

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「小説 午前二時の女」の続編。 エリート官僚の餓死というショッキングな事件。 その事件に関わったある女性の物語。
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2014年8月の記事一覧

小説 続ける女〜session16

小説 続ける女〜session16

「じゃぁ、どうして大石莉子は吉良義人の死後、脅迫状を出し続けたのか?その疑問が残るってことでしょ。」

「その通りです。大石莉子が吉良に恨みを持っていないとしたらなぜ脅迫状を出すような真似をしたのですか?」

「それは吉良への恨みではなく、同情からよ。」

「同情?」

「大石莉子が脅迫状を送りつけたのは吉良義人の死後からで、それ以前の脅迫状は吉良本人のもので間違いなかったわけよね。」

「はい。

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小説 続ける女〜session17

小説 続ける女〜session17

「自分の最後のプライドを守るため、昔の恋人に呪い殺されたように偽装しようとするその浅はかさが馬鹿馬鹿しくも哀れだったのよ。大石莉子にとって吉良義人は完璧な男でなければならなかった。昔の恋人につきまとって錯乱して死ぬような男ではあったはならなかった。だから、大石莉子は吉良義人の浅はかな偽装を少しでも信憑性を持たせるために、脅迫状を出したのよ。」

「吉良の策にあえてのったということですか。」

「そ

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小説 続ける女〜エピローグ

小説 続ける女〜エピローグ

中津川玲子さま

その節はいろいろとご助言賜りありがとうございました。

もう、吉良義人のことは私の胸の中にしまっておきたいと思います。

彼が「私に呪い殺される」という設定で自殺を行ったことを警察の方から聞いた時、正直、私は憤りを感じました。

彼が私を捨てたのに。

なぜ私にあらぬ疑いをかけるような真似をするのか。

理不尽な行いのように思えました。

しかし、幸いなことに彼の目論みはすぐに見

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小説 続ける女〜あとがき

小説 続ける女〜あとがき

まずは最後まで読んで頂いた皆さんに心よりお礼申し上げます。

この猛暑の最中、季節感のまったくない冬の物語を連載してしまい空気の読めなさ天下に恥じ入る限りです。

この「続ける女」は先日公開した「午前二時の女」の続編であり、この作品で一連の謎が解き明かされるという仕組みになっております。

「午前二時の女」では勝倫太郎という男がいわゆる探偵役で、「続ける女」では中津川玲子という女が探偵役。

前者

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