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【読書感想】どこかに置いてきた感情を思い出させてくれた
※ネタバレあり。
「ムダなことなんて、ひとつもない」
伊吹先輩の言葉に私は涙が止まらなかった。
いや、『君のとなりで。音楽室の、ひみつのふたり』を読みはじめてから、泣かされっぱなしだった。
受験に失敗した主人公のさくら。
志望校ではない学校に入学し、吹奏楽部との出会い。最初は前向きになれず、めげて落ち込んでいたが、自分と向き合いひたむきに頑張る姿にどこか自分と重ねていた。
私はさくらのような人生に関わるような失敗は経験してない。
学校も会社も希望する道に進めた。
だが、どこか常に空っぽな自分がいた。
多分それは常に周りを気にして、自分の価値を他人に依存していたからだ。
周りに認められてこそ価値がある。
そんな風に考えていたので、常に自信がなかった。自分で自分を認められなかったのである。
それでも必死で足掻いていた。
人に気に入ってもらいたい、好かれたい。いい人になりたい。
そんな感情が常に私を支配していた。
人の機嫌を損ねないように、余計なことを言わないように。相手の顔色ばかり伺っていた。相手と本気で向き合うことはほとんどしなかった。怖くて出来なかった。
結果としては、「いい人」と言うより「都合のいい人」になって適当な扱いしかされなくなった。
常に自分なりに必死で頑張って足掻いてもそれでも全く報われない。何をしても空回り。うまくいかない。
そんな中、周りが酷く眩しく羨ましく見え、自分の中で負の感情が容赦なく押し寄せる。
私の未来はお先真っ暗、頑張っても何もないんじゃないかなと自暴自棄になっていた。
そんな日々を思い出し、感涙が極まった。
辛かったんだねと自分の感情にようやく気づけた。
『きみのとなりで。音楽室の、ひみつのふたり』には途中途中で、人生の道しるべになるような台詞がたくさん書かれている。
登場人物はほぼ中学生、角川つばさ文庫のレーベルは対象年齢9〜13才と公式サイトにはあったが、大人が読んでも充分に楽しめる作品であると思う。
本当にみんな中学生なのだろうかと思うくらいにしっかりと自分の考え「自分」をもっている。
それぞれが思春期特有の悩みを抱えつつ、きちんと向き合って自分の糧に、前に進もうという様は本当に眩しい。若いって本当に強みだなと感じた。
年月を重ね、日々の生活に追われ、学生の頃のような真っ直ぐ、純真無垢な心をいつの間にかどこかに置いてきてしまった大人達へのメッセージが込められた作品でもあると思えた。
「過去はどうであれ、今をどう生きるかで未来を変化する」
伊吹先輩の言葉に私は視界がぼんやりして本を読むのをやめ、ハンカチを取り出し、涙を拭っていた。一つ一つの言葉に重みを感じ、私も作中のさくら同様先輩に泣かされっぱなしだった。自身が辛い経験をしたからこそ言える言葉なんだろう。
冒頭に書いた台詞は伊吹先輩の全てに繋がっている。
あれはさくらに言ってると同時に自分自身にも言い聞かせていたんだと思う。
読了後なんとも言えない高揚感に包まれた。
泣き過ぎて目が真っ赤になってしまったくらいだった。
時に人生には立ち止まって考えることも必要でもある。
大切なのはそこからどう動くか。
自分次第で未来は変わる。
どんなことだって、自分の糧に、力になる。
まさに、ムダなことなんて何もないから。
そんなことを教えてもらった。
この本を読んでから、自分と寄り添えるようになり、前より自分を少しだけ好きになれたような気がする。自分らしくあろうと思った。
未来は自分が思うよりきっとずっと明るくて、楽しいものだ。
生きることが苦しいとき、辛い時に本を開き、この世界に飛び込むと、ほんの少しの勇気をもらえる。本の世界は本当に偉大だ。
まさに読む人の心に寄り添うような物語であった。私の心を照らし、導いてくれるような存在である。
そういう作品にはなかなか出会えない。
出会えたのは本当に奇跡である。
素晴らしい作品を世に送り出して下さった高杉六花先生に最大級の感謝を述べると同時に大人の方にも是非読んでもらいたいと切に願う。
そして本日最新巻発売である🙌🙌🙌
非常に楽しみ。
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