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あとがき
下書き再生工場という、誰かの塩漬けになっている下書き(タイトル)をお題にもらって書く企画があって、面白そうだったので参加させていただいた。そのあとがき。
猫の正体
以前書いた通夜の猫の話に繋げるつもりでネタをもらったが、実際書いてみたらどうも今ひとつ弱いように思われる。
それで『その一』を書いて二部構成にしてみたけれど、その一が短すぎていかにも付け足した感じになった。それで『その二』も書いて三部構成にした。
構造主義的な効果が出るから、書いた文章が弱い時にはこうして保険をかける。
結局、自分ではその二が一番気に入っている。
卒塔婆ランド
卒塔婆とストゥーハ(麦わら帽子)が似ているから、『人間の証明』のストゥーハを卒塔婆にそのまま置き換えたら面白いだろうと思ってネタをもらった。ところが、実際やってみたら死ぬほどつまらない。同僚の松田とのやりとりを入れてみたけれど、どうにも一人で空回りしている感が否めない。大体、元ネタが『人間の証明』では古すぎて、わかってもらえない恐れも大いにある。
結局『人間の証明』ネタは諦めて、一旦寝かせるつもりで、カレー屋のクーポンの話を書き出したら、それが何だか卒塔婆ランドにつながった。
以下、NGテイク。
※
黒人の男が、ギザギザしたビルのエレベーターで刺されて死んだ。彼は亡くなる寸前、頻りにストゥーハと云ったのだそうだ。
全体、ストゥーハとは何のことだろうか。同僚の松田とあれこれ考えるうち、松田が「百さん、もしかして卒塔婆じゃぁないですかねぇ。きっと卒塔婆を探していたのですよ」と言った。
何で黒人が卒塔婆を探して刺殺されるのだか、甚だ要領を得ない。松田は山口の人だから、いきなりこんなことを云うのだろうと思ったら得心がいったけれど、それにしたって卒塔婆は突然だ。
「何で黒人が卒塔婆を探すのだね?」
「きっと、卒塔婆が彼と母親を結び付ける縁だったんでしょう」
「まるで道理が通らない」
「よろしい、こうですよ」
松田はサイフォンで珈琲を淹れながら、自説を語り出した。
あの黒人は米軍兵士と日本人女性の間に生まれた子で、進駐軍が引き上げる際に亜米利加へ連れ帰られた。そうして母親だけが日本に残されたのを、大人になってから探しに来た。その母親探しの手掛かりが、卒塔婆なのだと云う。
「進駐軍と母親には目を瞑るとしても、どうも卒塔婆がわからない。あんまり突然過ぎやしないかね」
「それはねぇ、母親のいるビルヂングが、卒塔婆みたいな形だったからなのですよ」
松田は珈琲を飲んで、なんだか渋い顔をした。
自分はいよいよわからなくなった。
母さん、僕のあの卒塔婆、どうしたでせうね?
ええ、夏碓氷から霧積へゆくみちで、
渓谷へ落としたあの卒塔婆ですよ。
母さん、あれは好きな卒塔婆でしたよ。
僕はあの時、ずいぶんくやしかった、
だけど、いきなり風が吹いてきたもんだから。
エンディングテーマ
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