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病床の決意とカレー

 18歳の時、私大入試の翌日に髪を切りに行ったら頭を濡らされるたびにどうも寒気がする。家に帰る間も変にゾクゾクするから、熱を測ったら38度あった。
 それで布団を敷いて寝たのだけれど、何を食っても何を飲んでも即座に腹を下す。これはどうやら尋常でないようだから医者にかかったら、インフルエンザだと云われた。
「今流行ってるのとは違う型のやつだね」とも言われた。「流行に流されない俺」と思って、ちょっと嬉しかった。

 それから丸一週間寝て過ごした。食事はずっと重湯で、全然美味くない上に、何だかずっと口の中がモワモワして大いに不快な感じだった。
 治ったらきっと、河合塾——当時通っていた——の食堂でハヤシライスを食べようと心に決めた。それから『ピッコロ』のカレーも食べようと決意した。
 河合塾のハヤシライスは地味に美味かったから食堂へ行くと2回に1回は食べていた。ピッコロはちょっと前に友人から教えてもらったカレー屋で、随分美味かったが、メニューのシステムを理解しておらず、何だか不本意なオーダーになってしまったからリベンジしたかったのである。

 果たして快復後、ハヤシライスはすぐに食べた。2日か3日ぐらい連続で食べたと思う。
 一方ピッコロは駅から遠くてなかなか行けず、ようやく行ったら店がなくなっていた。だからあの病床での決意は永久に果たされないままである。

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百裕(ひゃく・ひろし)
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