他人の不幸を笑う奴、カオナシの台頭(2023/04/06)
昼休憩の間に畜山生太郎(ちくやま・しょうたろう)が死人のような顔で早退し、ネルソン氏が「君、畜山がどうして帰ったか聞いたかい?」と小声で云ってきた。知らないと言ったら、「精神面だよ」と云う。
詳細は省くが、一連の不祥事に対する処分を今朝言い渡された。処分内容を自分たちは「どうせちょっと減給される程度だろ」と予想していたのたけれど、それよりも随分上を行く厳しさだったらしく、さすがの畜山もあまりのショックに執務不能となり、死人のような顔で早退したということだった。
「それはまた、中々のものじゃあないか。彼の性格だと相当のダメージだぜ?」
「そうなんだよ」
「でもそれは、本当に妥当な処分なのかね?」
「どうだろうね」
「なにしろ好き嫌いで判断されるのだから、いつこっちも同じ目に遭わされるか知れたものじゃぁない」
「全体、おっかなくていけないね」
「それに君、近頃はあのカオナシのやつが息を吹き返して来てるようじゃないか」
「そこだよ。実に不気味だね」
相変わらず大したことを云わない人物だと思った。
カオナシはかつて自分たちの上司だった。一時は社内に並ぶ者のない勢いを誇っていたが、調子に乗りすぎて失脚した。失脚の裏には自分とネルソン氏の仕掛けたボディブロー工作もあったので、本当に復権するとなるといささか剣呑ではある。
※
それから一日中、何かにつけて畜山のことが思い出され、その都度じわじわ笑えてきた。
他人の不幸をじわじわ笑うのはあまり品の良いことではない。それでもじわじわ来るのだから仕方がない。これもやはり当人の不徳の致すところだろう。
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