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百卑呂シの『なんのはなしですか』

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なんのはなしです課長コニシ木の子氏に回収された文章。
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#おじいちゃんおばあちゃんへ

家の中の何か

家の中の何か

 祖父母の家は戦前からあった日本家屋で、今思い出すと随分趣があったように感ぜられる。
 玄関から入って正面が居間、右が大広間、左に祖父の書斎があった。
 小学校に上がる前、呼ばれて書斎に行くと、祖父が机に向かって鼻毛を抜いていた。
「この毛抜でね、こうやるんだよ」と説明しながら抜いて見せ、「やってみるか?」と問うて来たが、痛そうだったから「やらない」と答えておいた。
 祖父はそれから抽斗を開けて、

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飴と奈落

飴と奈落

 自分が幼い頃、祖父の家は古い日本家屋でトイレが汲取式だった。
 ある時、そのトイレへ行こうとしたら、穴の底から青白い手が伸びてきて尻をツルンと撫でられる気がした。全体どうしてそんな気がしたものかはわからない。何かのテレビ番組でそういうシーンを見たの知らと思うが、もう全く覚えていない。
 自分は何だか怖くなって、あのトイレは使いたくないと駄々をこねた。
 手が伸びて来てお尻を撫でられそうだと云った

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