後輩指導が苦しいと思った時に
後輩指導はなかなか難しい。私は2年目でその役割を受け、ボロボロだったのを思い出します。まず言ったとおりに動いてくれない。今となってはそんな事は当たり前なのですが、経験が無さ過ぎて分からなかったんです。
「後輩指導が苦しい」
自身の経験や後輩の相談に乗るうちに、何が苦しいのか自分で発見し納得できると、後輩に対してほんの少しだけ上手く関われることも経験します。まずは、後輩指導の何が苦しいのか考えてみるのも必要かもしれません。
・・・・・・・・・・
澤田直也は、大学を卒業し働き始めて8年が経過した。前年まで教育の管理担当者であった先輩松本の退職に伴い、今年度から澤田が教育担当者を引き継ぐことになった。
澤田が勤める病院は、若いスタッフが人数が多い。そのため教育のシステム作りだけではなく、スタッフ教育も澤田の主要な仕事の一つになっている。
ある日後輩指導について、部下から相談があった。
「業務終わりにすみません。ちょっといいですか」
「いいよ。どうしたの?」
「もう無理です」
「というと」
「後輩指導が苦しくて、どうしたらいいのか分からないんです」
「後輩指導は大変だよね。特に何が辛いんだろう?」
「まずは言ったとおりに動かない、報連相はできない、質問にも来ない、挨拶はできない、伝えた調べ物はしてこない・・・・・・・」
それから10分後。一通り話を聞き切って澤田は切り出す。
「それは大変だね。それに対してどうすればいいのかな?」
「それが分かったら苦労しないです。だからいろんな先輩に相談しているんです。みんなが経験する道とか、まず一緒にご飯に行けとかそういうアドバイスばかりで、、、」
「まあまあ。まずは聞きに来たって時点で、既に解決する方向に進んでいるんだよ。君の悩みだから一緒に整理してみようよ」
「・・・分かりました。まずは何からすればいいですか?」
「問題は常にいっぱいあるから、まず主要な問題3つぐらいに絞ってみよう」
「だったらこんな感じです」
第1位:挨拶をしない
第2位:質問しない
第3位:報連相できない
「それについて後輩はどう言っているの?」
「分かりました、分かりましたって言うんですけど、変わらないんです」
「うん、分かった。それに対して君はどんなことをしてみたの?」
「繰り返し、繰り返し伝えています」
「他には?」
「特にないです。というか思いつかないんです」
ちょっと考えて、澤田は話し出した。
「・・・・全然違う話をしてもいい?」
「いきなりですね。どうぞ」
「掃除の仕方って習ったことある」
「えっ、掃除ですか?無いです」
「多分世の中には効率の良い掃除道具や、方法があるけど、学ぶ機会は無いよね。でも僕たちは小学生から掃除しているから掃除が出来ると思い込んでいる。教育や指導も似た側面があるのかもしれないね」
「そっか、教育について私はまだ何も知らないんだ。私の言うことを守ってくれないのが嫌なのもあるけど、これからどうしたらいいのか分からない自分も嫌だったのかもしれません」
「僕も初めての後輩指導で同じような発見をしたんだ」
「問題は解決してないけど心が少し軽くなった気もします、、、でも問題はまだ解決していません。一緒に対策考えて下さい」
「よし、じゃあ考えてみよう」
・・・・・・・・・・
後輩指導苦しくなった時、苦しさの原因は指導者によって様々で、すべてを解決できる方法は無いような気もします。
そのため、自分の苦しさの原因を理解し、解決策を考えていくことも必要かもしれません。
しかし、自分の苦しさの原因は、一人ではなかなか見つけられないことも多い。はじめの一歩として、誰でもいいから相談に乗ってくれそうな人を見つけ、話してみるのもアリかもしれませんね。