賢者の書(2009)
作:喜多川泰
評価:★★★★★
この本には、できるだけ早く出会いたかった。
がしかし、まず今出会えたことを感謝したい。
主人公サイードは、ある時祖父から、人生の成功のために必要なことを学ぶため、9人の賢者を探す旅をするように伝えられ、賢者の書を譲り受ける。
賢者の書の中には何の文字も記されていない。
出会った賢者からの教えは、パズルのピースとしてサイードに与えられる。
賢者の書の表紙にある枠にピースをはめると、白紙だったページに教えの文言が浮かび上がる。
9つ全てのピースを集め、パズルを完成させると、サイードの人生を決定づける「ビジョン」があらわれるという。
サイードの祖父は、サイードに、9人の賢者を探して教えを乞い、その「ビジョン」を確かめ、9人目の賢者に賢者の書を返してくるように伝えた。
こうしてサイードの旅は始まったのだった。
旅の道中についてはほとんど言及されておらず、賢者と出会う部分を切り抜くような形で書かれているので、構成自体はかなりシンプル。
かなり読みやすかった。
しかしそれでも、内容は金言とも言える内容が随所に散りばめられてあり、「こんなに簡単に学べてしまっていいのか」と恐縮してしまうほどだった。
まず、第一の賢者。
要約すると、全ての経験に無駄なものはない、という事を言っている。
次に、第二の賢者。
第二の賢者は、個々人の中に心という無限の可能性、いうなれば宇宙が広がっているということを言っている。
抜粋した部分は核心とは少し離れる言及の部分だが、確かに、無意識のうちに宇宙と比べてちっぽけな存在だとか思いがちなことを思い出し、自分の可能性を信じてあげたいと感じたため抜き出した。
次に、第三の賢者。
第三の賢者は、自尊心が大切なのはよく言われる事だが、それと同じくらい他者を尊重する心、「他尊心」を高めるようにと言っている。
普段生活をしていて、周りの事物が自分以外の誰かのおかげで作られているなどとなかなか意識することはなかった。そこに深い感動を覚えたため、抜き出した。
ついで第四の賢者は飛ばし、第五の賢者。
第五の賢者は、個人的に飲み込むのが難しかった。
というのも、歴史上の人物の伝記を引き合いに出しており、お恥ずかしながら私はあまり伝記ものを読まないため、身近な問題として想像することが難しかったというのがある。
かろうじて私がこの賢者から読み取ったのは、今置かれている自分の環境が良いものだろうと悪いものだろうと、ベストな言動を尽くすべき、ということだ。
そして、第六の賢者。
第六の賢者は投資について言及していた。
投資とは価値を増やすことである。
時は金なり、というように、時間に価値があるところまでは私も知るところであった。
しかし、労働は時間をお金というものに変えているだけなので価値が増えているわけではないという立場から、労働は時間の浪費活動だ、というのが第六の賢者の言わんとするところだ。
月並みな言い方であるが、その発想はなかった、という感想だ。
そして、第七の賢者。
第七の賢者は、人々がそれぞれ自分さえ幸せであれば良い世界と、他人が幸せになれるよう努める世界を例に出した。これは第三の賢者の話にもつながるところがあると思う。
そして、第八の賢者。
第八の賢者は、言葉の力について言及した。
私が特に印象に残ったのは、自分の頭の中で話される言葉、内言についての部分だ。
自分自身が考える言葉は、最も影響のある言葉だということは経験上実感したことがある。
自尊心が低かった私は頭の中で「そんなんじゃだめ」「もっとがんばれ」と自分を認めない発言を繰り返していた。
そうするとどんどん思考が凝り固まって、肩こりや頭痛など身体的症状として表に出てくるようになったのだ。
(今はポジティブな内言を増やす訓練をしている。前ほど身体的症状は多くない。)
というような経験から、抜粋した部分にはとても共感した。
最後に、第九の賢者だが、読んで確かめた方が面白いと思うのでここでは言及しない。
大変長くなったが以上で感想としたい。
小ネタとして、各賢者の名前がそれぞれのテーマに関連した意味の名前になっていたりするので、そこも確認してみると面白いかもしれない。
本書は、Kindleにて無料で閲覧可能なため是非読んでみてほしい。