ハリネズミの願い(2016)
作:トーン・テレヘン
訳:長山さき
おすすめ度:★★★★★
臆病で気難しいハリネズミが、ヒキガエルやクマ、その他多くの動物たちを自分の家に招待しようとさまざまな考えを巡らせる、短い59章からなる物語。
とても読みやすく内容も興味深いが、このハリネズミの気難しさ・ネガティブさは他の物語ではなかなか見ないレベルだ。
この本は、一見子供向けの童話ではないかという期待をさせる外観ではあるが、大人向けの童話である。
それも、
人と関わりたいけれど、どう思われるかが怖い。
人と関わりたいけれど、いざその機会を目の前にしたとき、
どうふるまえばいいかいつも不安。
という悩みを常にぼんやりと感じている人に向けた本だと思う。
もし上記のような悩みを持つ方がいれば、きっとこの本の中のハリネズミと良き友人となれるはずだ。
それか、自分と似ているあまり、静かな苛立ちを感じてしまうかも。
あらすじ
ある日ひとりぼっちだったハリネズミは、自分が他の動物たちを自分の家に招待したらどうなるだろうか、と考える。
そこで森の動物たちに向けて招待状を書き始める。
そして、ここまで書いた手紙を引き出しにしまった。
それからハリネズミは、あの動物が訪問して来たら、この動物が訪問して来たら……と頭の中で思いつくままに考え続ける。
やってくる動物たちはほとんどが明るい性格をしていてあくまで前向きにハリネズミにかかわろうとしてくる。
しかし、ハリネズミは他の動物にはない、触ると痛い針を持つような自分に自信がない。
そのため、本当は嫌なことを良いよ、と言ったり、訪問してきた動物と何も話せなかったり、早々に追い返したりする。
そして最後には手紙の内容を書き直すべきなのではないかと考える。
この手紙も書いたまま出さずにしまった。
すると、まだ招待状も出していないのに、リスが訪問してきた。
ハリネズミにとってこの訪問はとても居心地がよいものだった。
おわりに
最後に書き直した手紙に、このハリネズミはどんな性格をしているかの全てがつまっていると感じた。
みなさんは手紙を読んで共感しただろうか。
それとも、自分のことをそんな風に言うな、とか、もっと自信をもっていいとか、そんなことを感じただろうか。
私は後者だった。
この本の中のハリネズミはきっと読者自身だ。
読んでいる中でハリネズミに思うこと、かける言葉は全て自分への励ましなのだ。
そのことに気づいたら、この物語への愛がより一層深まることだろう。
この記事が参加している募集
いいんですか!私は遠慮しませんよ!