里山の循環「いのちがめぐる」
埼玉県比企郡小川町。
この里山の風土や自然との共生という点に惹かれていますが、以前より興味を持っていた『里山ぐるぐるツアー 初夏の回』に今回参加をしてきました。
良いことばかりでなく、現状や課題も認識しないと持続出来ない
自分が素敵だなと感じている里山がどんな現状であり、どんな人たちが関わってきたのか、こうしたことを間近で見て・聞いて・感じる良い機会だった。
今回巡ったところはこちら▼
【バイオガスプラント】
【杜の集会場】
【森の仲間たち】
【ため池】
【堆肥場】
▶ 循環によって営まれる農業と里山管理
「ごみ」ってなんだ? — 「バイオガスプラント」
この施設誕生の出発点は20年以上も前の2000年~2001年。
町内の生ごみ資源化と環境基本計画策定町民協議会とのこと…
行政・住民・農家・NPOにより「地域の資源(人・もの・金)で、課題解決を図る」ということからバイオガスプラント建築が計画されスタート。
これまでの約20年間で370トンの処理実績があるそうです。
基本的な仕組みは、
家庭用ごみや給食残渣を投入・攪拌→メタン発酵(バイオガス)→ ガス利用→発電(現在は行っていない)
一方で、液肥を取出し→ 地域の生産農家の水田や野菜畑に利用という流れで運用されている。
コンピュータ管理や最新機材や設備で造られた施設ではないが、
実に経験や知識や叡智が詰まった仕組みと施設だった。
同時に、「ごみ」ってなんだ?という疑問が湧いてきた…
不要になったもの?
人の口に入らない物?
汚い(表現が適切でないかも)物?
はて?自然の摂理や自然界に普通に作用している動植物が持っている力(ちから)で、ちゃんと機能するものが生まれている…
となるのに「ごみ」?って。
言葉が持つイメージや不都合な見方での解釈なのではと考えさせれた。
この施設を考え、運用してこられた方々にただただ脱帽。
いかに自分が慣習や固定観念で行動し、物事を知らないのかと反省した。
人の手が入ること、里山の摂理のひとつ — 杜の集会場
武田信玄の異母弟:信実の菩提寺として創建され、武田氏一族のお墓がある輪禅寺の前の山林を整備されているのが、上横田・下横田・中爪地区の有志グループ「杜の集会場」。
外側から見れば、普段よく見ている里山と何も変わらない・・・が、実は中を歩くと陽射しと風が入るように木が伐られ、道が出来ている。
ここは県の里山・平地林再生事業として整備が始まり、現在も杜の集会場のメンバーが整備、管理をしている。
この山は広葉樹で、ここの落ち葉は2022年より堆肥組合の堆肥として活用されているそうです。
人の「手」が入ることで、動植物との共生環境になり、循環が生み出される。
陽射しや風が心地よいというだけの話でなく、鳥が集まり、木の実や種が入り、新たな芽がでたり、実が出来、また鳥が食べに来るといったサイクルが出来てくるのだろうと。そんな気付きを与えてくれる場所と風景でした。
外来種や菌による環境変化 — 森の仲間たち
「杜の集会場」同様に、里山・平地林再生事業として活動中。下草刈り、薪づくり、道の整備や間伐などを行い、動植物の生態を観察しながら来た人たちに説明をしてくれています。
ここに茂る太い木、外見はまったくわからなかったが、カシノナガキクイムシという昆虫が入り込み、ナラ菌というカビ菌を養成してしまっているそうです。あっという間に木が衰え、最後は朽ちて倒れる…そうです。
これも致し方ないことなのですが、木の姿を観察してくださっているから、原因がわかる訳で、放置したままではその木に何が起こっているのかさえも分からない…
また外来種が増幅して、日本在来種が減ってきて来ているそうです。
地球環境の変化で刻一刻と変わっている様は、山に入って住民の方に聞かないと知ることもなかった。
食い止めることは出来ないまでも、こうした環境変化が身近に起こっていることは、知っておかないといけないし、関心のある人たちにつないでいかないといけないと感じた。
先人たちの叡智が風土を活かす ― ため池
今回のツアーの中で、一番に関心があったのが『ため池』。
今の時代のように電気や機械のない時代に、どのように造ったのか?しかも、水田や畑づくりにとてもうまく活かされている…
その観察眼や知識や工夫にただただ驚かされる。
2022年には、日本農業遺産「比企丘陵の天水を利用した谷津沼農業システム」として認定を受けている。
川がない、この山と山に挟まれた窪地を天水で水源化したこの知恵がスゴい。水は高いところから低いところに流れる、まさに機械や電力のない時代にこうした自然の摂理を活かした谷津沼のため池は、おどろき。
しかもここが造れたのは元禄年間(1700年代)、約9年の歳月がかったそうである。
この地で暮らす人たちの覚悟と知恵なんでしょうね。
また一大プロジェクトとして造られたんでしょう。
近年は耕作人も減り、高齢化も進む中で、沼管理をする人が離れているしまっている。加えて、さすがに200年以上も経てば、強度も弱まっていく訳で、補強も急務である。また、山を崩した開発から水が溜まらない…という状況も緩やかに表れてきている。
それはそうですよね…高いとこから流れる水。高いものがなければ流れてこない。
200年も続いていたことが、50~60年の間でなくなりかけている…
暮らしも産業も変化してきた中で、先人たちのように、私たちもその土地を理解してどうすべきを、考えて、引き継いでいかなければ・・・とこの「ため池」でも考えさせられた。
自然観察や農業は、大人の理科学習だ — 堆肥場
今回のツアーで、一番の「目から鱗」だったのが、堆肥場の見学。
事前に植物性の材料だけの堆肥を作っていることは知っていましたが、実に興味深いお話を聞かせてもらえた。
堆肥は、土を良くするもの。
土が良くなると微生物が良く働き、野菜や植物が安全に良く育つようになる。
そのために草チップ、里山の落ち葉、米ぬか、もみ殻で自然発酵させる。
発酵には酸素と水が必要で、定期的に切り返しながら空気を入れながら水分、温度管理をしていく。
発酵中の堆肥に手を近づけると、想像以上の温度。
これが自然の力なんだと体感した。
カラダで感じたことを自然科学から論理的に説明、解説してくれたので、学びの発見もたくさんあった。
理科を学ぶことの意味がわかった。— もっと早くにこうした気付きを…
まぁ、大人になったから理解できることもあるんですが(笑)
自然との関わり方を考える「まなびの場」
今回の「里山ぐるぐるツアー」の想像以上の満足度!
里山を歩きながら、自然を愛で、感じる楽しさと人と自然との関わり方を考え学べるツアーでした。
人も自然の一部である訳なので、それぞれが有機的に機能していかなければ、やはりバランスは崩れてしまうのだろう・・・
今の自分が直接行動へ移せることは少ないかもしれないが、関心を寄せること、見たもの感じたことを伝えること、小さなことかも知れないけど、まずはそれだけは続けることからスタートしたいと思う。
循環で出来た野菜を摂る。私たちも自然の一部
ツアー最後は、ランチタイム。
スタッフの一人である松澤さんが、バイオガスプラントの液肥と堆肥場の堆肥を使用してつくられた野菜を使ったグリーンカレー。
調理をしてくれたのは、軽トラキッチンカーでアジア屋台飯を提供している『ピンポン飯店』さん。
やはり野菜がおいしい。野菜の味が濃縮されており、しかも新鮮で歯触りも食感もよく、美味しくいただきました。
自然の恵み、エネルギーを摂らせていただきました。
このように感じることは、とても贅沢なこと。
これで、私たちもこの地区での循環に加われることになりました。
まさに「いのちがめぐる」循環を食べて実感!
ツアーを企画、ご案内してくださったスタッフの方、現地毎でお話をしてくださった方々、一緒にぐるぐると回った参加者の方に感謝です。
秋以降も開催される場合は、ぜひ参加してみてはいかがでしょう。
きっと今までの自然の見え方が変わって来ると思います。
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