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サイユウキ「再」第2話

悟空は
「ほぉ。なら早速、
      今日は面白いものが見れそうだ」
と悟空が言った。

悟空の隣を見ると奴の姿がない。
「ちっ、悟空に気を取られていた。
           奴は何処だ!?」

「二蔵っ!後ろっ」と親父が声をだした。

奴は手に持った短刀を一振り。

シュッ

俺は紙一重でなんとかかわした。
「ちっ、正直親父の言葉が無ければやられてたな…それにしても全く動きが見えなかった」

だが、奴の攻撃はとまることなく続く。
俺はなんとか奴のスピードに着いていくのが
やっとだった。
だが、段々とそのスピードにも慣れ
俺は言った。
「おい、ガキ!あまり調子に乗るなよ」
俺は、奴の振り抜く腕を掴みおさえつけた。
「大人をなめるなよ!トドメだ」

俺は奴の袖を引っ張り抑えてつけようとした。
だが、そこに奴の姿はなく、俺はただ布を握っているだけだった。

ドカッ

「ぐわっ」
奴の拳が俺の脇腹をえぐる
だが俺も負けじと蹴りを入れる

そんな接近戦を繰り返している中
俺はある事に気づいた。

それは奴の首に掛かっているあの飾りだ
もし三蔵と悟空の関係が本当なら
奴の首に掛かっているのは、
間違いなくその昔、悟空が付けていた
ヒタイアテてだ。

「そうかっ!悟底は悟空からヒタイアテを受け継いだが悟底の頭の大きさではひたいに収まらず首飾りにしているに違いない」
「だったら、そのヒタイアテを縮めればどうにかなるかもな」
「でもどうすれば?たしか術式があったような、それにしても奴の攻撃、なんて力だ!?」
俺は奴の攻撃を塞ぎながら過去の記憶を辿った。 

そう、ガキの頃親父がヒタイアテての話をして
いたあの日の事を思い出していた。

だが、悟底の凄まじい攻撃は止まらない。

その時
「もうこれで終わりだ!」
「お前は天竺へは行けない。三蔵様の意志は僕が継ぐ!だから死ねっ」
と言って腰から短刀を2本取り

「斬鬼斬眠っ」
と発して竜巻の様に切りかかってきた。

2本の短刀を遠心力を使う事で切ったあとに
物凄く重い力が加わる事で切り込みが深くなる。
また、そのスピードで2本が4本、4本が16本と

ブサ ブサ ブサっ

「二蔵ぉ〜」
「二蔵様ぁ〜」

全てを交わす事は出来ず、ただ受ける事しか
出来ない。

切り刻まれる身体。

遠のく意識。

俺は、
「いてぇーなっ、頭がフラフラしやがる」
「それにしても声も出ねーや」
「死ぬってこう言うことなんだな。俺はこの賭けに負けたのか?」

薄れゆく意識の中、夢をみた。
違う。これが走馬灯ってやつだな。

何か懐かしい風景。
そこには、ガキの頃の俺がいた。

「母上、母上っ」
「二蔵、どうしましたか?」

懐かしい声だな。

「母上、写経ができました」

「そうですか、見せてくれますか?」

「いかがでしょうか?下手かな??」

「そんな事ないですよ、とても上手ですよ」

「ほんと!?やったー!!」

「そうだ!お父様にも見てもらいましょ!」

「えぇ父上に?いいよ、また話長くなるから」

「あっ、噂をすればお父様が
          戻ってこられましたよ」

クソ親父だ。

「おー2人揃って何を話していたんだ?」

「別にっ」

「二蔵、お父様に向かってその態度はダメですよ」

「あなた、二蔵が上手に写経をしたのですよ、
ほら二蔵、お父様に見せてあげなさい」

「はいっ」

なんて下手な写経だ。

「おーこれはなんと見事な!上手だ」

「ほんと?」

「あぁほんと上手だ!!」
「私が二蔵の年の頃はこんなにもうまく描けなくてよくお爺様にガミガミ言われたもんだ」

これより下手だったのか?

「そしてよく庭で不貞腐れていたんだ。
でも、そんな時にいつも三蔵爺様は話をしてくれたんだよ。私は本当に三蔵爺様の話が大好きなんだ。だから、私もいつか天竺へ行きたいと言う思いがあったんだ。かと言っても少し怖いって思いもあったけどな・・・」

「ねっ母上、言ったでしょ!?」

この頃からだ。

「ですね(笑)夕飯まで少し時間があるからお父様のお話を聞いてあげましょう」

クソ親父の話は長い。

「三蔵爺様が旅を始めてすぐに、岩の牢獄に閉じこめられていた悟空に出会ったんだ。悟空は大変凶暴な者で悪さばかりしておったそうだ。そんなある日悪さばかりしている悟空を止める為にお釈迦様が悟空のもとへ向かったのだ・・・」

悟空の話か?
そう言えばこんな時もあったような・・
でも死ぬ前に過去の記憶を振り返るってのは
本当だったんだな。

まぁ最後だしなっ!ちゃんと聞いてやるか。

「で、あまりにも暴れまわる悟空にお釈迦様も
抑えきれずに岩の牢獄へ封印したわけだ」
「それから数100年の時を経て三蔵爺様が天竺へ向かう際にそこを通ったって訳だ」

ガキの俺は興味津々で
「で!?で!?悟空はどうなったの?」

「悟空は、三蔵爺様にこう言ったようだ」
「俺をここから出してくれ、出してくれたら
お前をこの天上天下の支配者にしてやる」と

「でも爺様は」

「支配者?私はそんな事には興味はありません。今は天竺へこのお経を届ける旅の途中だから
そなたが出たいならここから出してあげますよ」
と言って封印を解いたようだ。

悟空は数100年ぶりに岩の牢獄から出る事ができて、三蔵にこう言った。
「バカか?お前は、何が興味がないだ?」
「この世は喰うか喰われるかの2択だろ?」

三蔵は
「そなた名は?」

悟空は答えた
「俺様は斉天大聖孫悟空」
とてつもない殺気を放つ悟空。

そんな悟空を見て三蔵は
「悟空、そなたがどの様な運命を今まで進んで来たのか分からないが辛かったんですね」
「でも、もう大丈夫。これから先はもっと楽に
人生を歩みなさい。」

何かを見透かされた気がした悟空はこう言った。
「楽に生きる?そのつもりだっ!俺はこの世界の支配者となり、俺を縛った釈迦すら滅ぼす」
と言って三蔵に襲いかかった。

ドカッ

「な、なんだ?これは!?離せっ!離せっ」

三蔵はお経を唱えその術で悟空を縛り抑えつけていた。

全く身動きのとれない悟空。

そんな悟空に三蔵は言った。
「悟空、これがそなたにとって最初で最後の
チャンスです」

どんなに力を使っても動けないまま
「は・・はな・・せっ」
そう言いながらもがく悟空に
「今、ここで命を終わらせるか、それとも私と
共に天竺へ行くか?選びなさい」

「・・・天竺だと・・クソ・身体がっ・・」
三蔵は術を強めた。


「ぐわぁぁ」

悟空の身体は縛りつけられてその力で今にも
骨が砕けかかっている

三蔵は容赦なく術を強めこう言った。
「悟空、そなたはもったいない。いつ朽ちるかわからないその命、人生は楽しまなくては」

「は・・はなせっ」
と言って力付くで動こうとしている。
そんな悟空に三蔵はとどめをさそうとした。

その時だった。

「わかった・・俺の・・負けだっ・・」
と言って悟空は気を失った。

三蔵は術を解き気を失っている悟空の隣に
腰をかけていた。

目を覚ました悟空は
「あれっ?お、俺は?気を失っていたのか?」
「骨が砕け、全身がボロボロになった様だったがなんともないっ。これはどう言う事だ?」

三蔵は
「あぁ安心なさい。そなたは無傷ですよ」

その言葉を聞いて身体を動かしながら悟空は
「無傷?そんな事は・・確かに・・」

そんな不思議そうな悟空を見て三蔵は
「あれは幻術です。私がそなたに幻術をかけたのです。だからそなたは私の術にただかかっただけです」
と笑ながら言った。

悟空は理解したのか
「幻術?そう言う事か!?結局俺はお前の掌で踊らされていたって訳だな」
と言った。だけど三蔵は
「それは違いますよ、悟空」

悟空は
「違う?どう言う事だ?」
その問いに三蔵はこう答えた。
「悟空、そなたが単に純粋だから、私の幻術にかかったのです。ただ、それだけのことです」

悟空は
「やられたな」

すると三蔵は立ち上がり
「悟空、私と共に天竺へ向かいましょう。
そなたがいれば道中なんの心配もございません」
と言って手を差し出した。

悟空は
「わかった。一緒に行ってやる」
三蔵は
「それは大変頼もしい」
と言って再び手を差しだした。

すると次の瞬間。
「なんてな、そんな事言うわけねぇだろ!?」
と言って悟空は再び三蔵に襲いかかった。

その急な悟空からの攻撃に動じる事なく三蔵は

「共鳴剥離(きょうめいはくり)」

と、唱えると

悟空はもがき苦しんだ

「頭がぁぁぁ」

頭をおさえながらあまりの痛みにもがき
のたうちまわる悟空に三蔵は
「悟空、やはり純粋なそなた。こうなる事はわかっていました。だからこそそなたにこの金箍呪(きんこじゅ)をつけていてよかった」

もの凄い激痛が悟空を襲う。
「ぐわぁっ あ・た・まがっ、割れそうだっ」

三蔵は言った。【共鳴剥離】
「そなたが私との共存を破る事で私との関係が
切れる事による金箍呪の呪縛、今後、私の意に
そむく事でひたいにある金箍呪の力が発揮する。言えば私がそなたを縛り支配する」

「くっっ、本性だしたな!このイカれ坊主が」
「それにしても・・割れそうだぁぁ」

三蔵は
「悟空!!勘違いするなっ!」
「私は力でそなたを縛りたいとは思わない。
でも今のそなたから私自身を守るにはこれしかないのです」

頭の激痛はさらに強まり
「ぐあぁ〜っ」
「負けだ。俺の負けだこの命お前にくれてやる」
「この先、生かすも殺すもお前に委ねる」

すると三蔵は
「共存同意(きょうぞんどうい)」
唱えると金箍呪はゆるまり元の大きさに戻った。

「はぁ はぁ」

三蔵は再び手を差し出し悟空に言った。
「共に天竺へ参りましょう」

すると悟空はひざまづき
「御意!この斉天大聖孫悟空、三蔵あなたと
共に天竺へ。そしてこの命にかえてあなたを守り天竺へ導きます」
と言った。

恐らくだが、悟空はこんな自分を止めてくれて
なお受け入れてくれる人を探していたのだろう。

三蔵は言った。
「悟空、命は粗末にするものじゃありません。
もし、この旅路の途中、死に直面する事もあるでしょう?でもその時は私の命より自分の命を守る事を優先しなさい」

悟空は
「俺は大丈夫だ!だから・・」
三蔵は悟空の話の途中でこう言った。

「だからですよ。そなたは強い。強すぎるって言っても過言ではございません。だからですよ。
だからこそ私では無く他の弱者を守りなさい」
と言って手を差し出した。
悟空はその手を力強く握り締めた。

「悟空、痛いですよ」
と笑いながら言った。

そして、西へ沈む夕陽を見ながら

「1度きりの人生楽しみましょう
        最後に笑ってられる様に」
と言った。

これが、三蔵と悟空の出会いだった。

そんな記憶を見た俺は
「金箍呪(きんこじゅ)か!?それと・・」
とその術式を思い出していると後ろから誰かが
話かけてきた。
「そなたは?そこで何をしているのですか?」

俺はその姿を見て
「あんたは?もしかして三蔵?」
「三蔵なのか!?本当に居たんだな」

驚く俺の姿を見て
「何をそんなに驚いているのですか?」
「もしや、そなた一蔵の?」
俺は
「あぁ、その息子だ」
すると三蔵は
「と言う事は二蔵ですね?」
俺は
「俺を知っているのか?」
と聞くと
「もちろんですよ。知ってるも何も、今起きてる事全て見てましたから」
と言った。
続けて三蔵は
「ところで二蔵ここで何をしているのですか?」

俺は、
「賭けに負けて多分死んだんだと思う。
だからあんたが俺を迎えにきたんだろ?」

三蔵は
「はっぁはは」
「面白い事をいいますね」
「何をどうなってそう思ったかは知りませんが、心配しなくてもそなたは死んでませんし、私は
迎えにも来てませんよ」

俺は
「死んでない?どう言う事だ?」

三蔵は
「これはあなたの記憶に私が今居るだけです」
俺は
「俺の記憶に?」

三蔵は
「細かい話は今は置いておいて、ところで
そなた、天竺へ行くようですね?」

(まさか本当にあの世から見てたんじゃないだろうな?)

俺は
「今その天竺に行けるか行けないかって話のせいで死にかけてんだっ!」
と言うと

「本当に行く覚悟はありますか?」

俺は
「だから、そのお陰で今こんな・・」

すると三蔵は
「なら、私はそなたのその賭けに乗りましょう」
と言った。

三蔵が言ったその言葉は、天竺って所が本当に
あると思わせる様な言い回しだった。

(悟空にしろ三蔵にしろ、本当に天竺は存在するのか?)

俺は
「なんだよ?いきなり!!でも賭けに乗るって
言ってもまずはあのガキを倒さないといけない」
「三蔵!?あのヒタイアテの術式を教えてくれないか?」

三蔵は
「ヒタイアテですか?」
俺は
「あの・・悟空の・・金なんとかって言う」

「金箍呪ですか?」

「あっ、それそれ金箍呪」

すると三蔵は
「わかりました。でもその前にいいものを見せてあげましょう」
と笑顔で話す三蔵に俺は              
「いいもの?」
すると三蔵は人差し指を唇に当ててこう言った
「ちょっとイカサマでもしましょう。イカサマでも勝ちは勝ちですからね」
俺は
「イカサマだと?」
三蔵は
「はい。イカサマです」
「ただしバレなければですが、そうしたらイカサマもイカサマではないのですからね」
「久しぶりに斉天大聖孫悟空と遊びますか」
と、なんだかか嬉しそうに言った。

そして俺にこう言った。
「二蔵、1度きりの人生楽しみましょう
          最後に笑ってられる様に」
と言って術をとなえた。

「輪廻転生」
         【次回:玄奘三蔵法師】

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