京都鉄道博物館にて 国鉄電機 EF66-27・EF65-2085 特別展示を見てきました
去る8月20日(土)から8月28日(日)までの間に京都鉄道博物館にて実施されていた、国鉄型電気機関車の特別展示イベントを見に行ってきました。
京都鉄道博物館は、JR在来線と繋がる線路が博物館内に引き込まれているという特徴を生かし、現役の車両を博物館内に入線させて展示する、特別展示イベントを定期的に実施しており、今回はEF66-27とEF65-2085、この2機の機関車にコキ107形またはコキ104形と呼ばれるコンテナ貨車1両を連結した状態で展示されました。
カラーリングの変更や改造、あるいは引退といった紆余曲折を経て姿を消しつつある国鉄型の電気機関車ですが、この2機はいずれも国鉄時代にデビューした当時のオリジナル・スタイルに近い出立ちを現代に残す機関車です。
京都鉄博の特別展示イベントならではの、普段見るのは難しい距離感での接近写真を楽しんで頂ければと思います。
撮影日
2022年8月22日・8月25日
使用機材
FUJIFILM X-T3
XF16-80mmF4 R OIS WR
やも言われぬ感情がこみあげる特別展示イベントでした。
個人的に「EF66が牽引するブルートレイン」という形態の列車が好きで好きで仕方がなく、またそれが自分が写真を撮り始めたきっかけのひとつでもあるので、今回のイベントでEF66を眺めているあいだに襲われていた感情の正体は、自分の原点からくるものであるのだろうなと思います。
27号機は貨物機であったので、寝台列車を牽引した経験は恐らく無いか、仮にあったとしても、本来運用に入る予定の機関車が故障して動かせなくなった場合などに突発で牽引したくらいなものではないかと考えられます(実際にライトパープルを基調とした、いわゆる旧更新色の貨物機が緊急で寝台列車を牽引した事例は複数あります)
なので、あのころ自分の目にひときわ輝いて見えていた機関車たちと27号機は厳密に言えば違うものではあるのですが、かと言って当時、EF66のフォルムをじっくりと眺めるような余裕をもって見れていたかと言えばそうではないので、当時抱いていた憧憬を堪能するには充分すぎる良いイベントでした。
ありがとうございました。
さて、ここより下では今回展示された2機の機関車を解説したいと思います。
EF66
現在のJR貨物の前身である国鉄が1968年に製造した直流電気機関車です。当時、名神・東名高速道路の開通によって輸送シェアを拡大させていたトラックへと対抗すべく、貨物列車の高速化を目指して設計・製造されました。
大きく分けて3種のバリエーションがあり、1両のみが製造された試作機で当初EF90と呼ばれていた900番台、量産機である0番台、JR貨物発足後に製造され外観デザインが大幅に変更された100番台で、今回京都鉄道博物館で展示されたのは量産機の0番台、更に細かく分けると2次車グループに属する27号機です。
近年、ファンのあいだで「ニーナ」と呼ばれ愛されている27号機は今から49年前の1973年8月、兵庫県にある川崎重工業社の鉄道車両工場にて製造されました。当初は下関運転所に配置され、'84年に現在も所属する吹田機関区へと転属。'87年の国鉄分割民営化の折にJR貨物に継承され、その後は終始、貨物列車の牽引をその主たる任務としていました。
製造当初に配置されていた下関運転所と言えば、いわゆるブルートレインを牽引する機関車たちが名を連ねていた名門です。
かつて東京や大阪から九州を結ぶ寝台列車、ファンのあいだで九州ブルトレなどと呼ばれていた列車が運行されていた頃は、EF66もその牽引の任を担当していました。が、EF66が寝台列車の牽引を務めるようになったのは1985年からで、先述のように27号機はその前年に吹田へ転属しているため、これがEF66-27が寝台列車を牽引したことは無いのではないかという推測の根拠となります。
今日まで主に東海道本線や山陽本線およびその周辺路線を走る貨物列車の牽引を担当。これまでの走行距離は地球を230周できる約918万kmとされ、日本の物流を支える一端として走り続けてきました。
EF65
1965年に登場した平坦路線向けの直流電気機関車で、国鉄が製造した電気機関車としては最も多くの数が製造された車両です。
EF65は大きく分けて0番台、500番台、1000番台の3種が存在します。
0番台は純然たる貨物用機関車ですが、500番台は20系寝台客車を牽引する各種機能を備えた高速旅客列車用のP形と、1,000tクラスの貨物列車を牽引するための機能を備えたF形の2種類が製造されました。この500番台のP形は英語で旅客を表すPassengerを、F形は貨物を表すFreightの頭文字から取られたものですが、1969年から製造が始まった1000番台は、この500番台の2種類を統合した汎用機であり、P形およびF形の機能を併せ持つことからPF形とも呼ばれています。
今回、京都鉄道博物館で展示された2085号機はPF形こと1000番台をルーツとする機体で、後年行われた改番によって現在のナンバーになった経緯があり、1977年の新造時点では1085号機を名乗っていました。
新製時に現在の所属先でもある新鶴見機関区に配置され、1987年の国鉄分割民営化でJR貨物へと継承。'88年に減圧促進ブレーキ改造が施され、ナンバープレートの色が車体色と同じクリーム色から現在の赤色へと変更。
2007年に更新工事Cが施工され、ライトパープルとディープブルーのツートンカラーを纏う、いわゆる貨物更新色に変更されました。
2012年には省令改正に伴った新たな保安装置の搭載と、また旅客社所有機との区別のために車号が変更され、ここで現在の2085号機へと改番されます。
そして今年2022年3月、最後の全般検査を出場しました。
全般検査とはパンタグラフ、台車、車輪や各種機器など走行に必要な主要機器をすべて取り外して総合的なメンンテナンスを行う、鉄道車両の中で最も大掛かりな検査のことで、定期的な実施が法令で義務付けられています。そして、その検査出場が最後と明言されたということは、遠からずの引退が確定的になったということを意味しています。
今回の検査出場でカラーリングが更新前の青15号とクリーム1号のツートンカラーへと戻されており、これはEF65の更新工事の施工が全車終了し、車体の色で更新機か未更新機かを見分ける必要性が薄くなったためとされています。
参考
JR貨物の電気機関車とコンテナ貨車の特別展示について(2022年7月13日付 京都鉄道博物館 公式ニュースリリース)
JR貨物の電気機関車とコンテナ貨車の特別展示関連イベントのおしらせ(2022年8月12日付 京都鉄道博物館 公式ニュースリリース)
※イベントで展示されていた解説パネル等も参考に執筆しております