【読書記録】2020年11月(前半)
ごきげんよう。ゆきです。
毎月月末に投稿しようと思っていた読書記録ですが、思いの外読書が捗っていて大変な文字数になりそうなので、月の前半と後半で分けて記録していこうと思います。というわけで11月前半分スタート。
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小学校四年生のとき、深津九子は母親の瑠美子に捨てられた。九子は施設に保護され、母は幼児虐待容疑で逮捕された。心に闇を抱えながら善寺川学園に通う深津九子は、担任教師・三塚が寄せる後ろ暗い気持ちを利用して彼を支配し、クラスの男子・西野を下僕化、同級生の井村里実からは崇められていた。ある日、瑠美子の消息を知るチャンスが巡ってきた。運命は激しく動き出す。予想外の展開、そして驚愕のラストが!書下し長篇完全犯罪ミステリー。
久しぶりに手が止まらなくなる読書体験をした。前半は主人公の行動や事件後の取り調べが訥々と語られていくのだが、終盤に差し掛かるにつれてどんどん綻びが見え始め、「もしかして……?」と思う間も無くエンディングを迎えるスピード感が途轍もない。一行でそれまでの内容がひっくり返る、というのは珍しくない作りだが、綺麗に騙されるのはやはり楽しい。
ちなみに、途中で結末は予想できる(と思う。私は残り5分の1くらいで察した)。ただこの著者、非常に登場人物の行動や心理の描写が上手いので、自分の予想通りに物語が進んでいっても読み続けてしまう。助詞がおかしい部分や、文章が破綻していると感じる部分が数箇所あったのが残念なところ。作家の癖なのだろうか。
私は親から虐待されたこともなければ身近にそういった経験を持つ人間がいたこともないので全てフィクションとして読んでいたが、確実に同じような経験を持つ子供がこの世に少なからずいる、と思うと胸が張り裂けそうになる。この本の主人公・九子の母親であり超ド級のクズ親、瑠美子に対してずっと「頼む、もうこれ以上変なことはしないでくれ、酷い言葉を娘に投げつけないでくれ」と必死で願っていた私は相当に親の愛を信じているんだな、とふと気が付いたりもした(ちなみにこの願いはことごとく叶わない。クズオブクズ)。
九子の行動は決して褒められたものじゃない。それでも読者は九子に自身を重ね、味方になってしまうだろう。そして、反論の余地なく騙されるのだ。「殺していい人間なんてこの世にはいない。しかし、殺してしまいたくなる人間はいるものだ」。途中の刑事のこの一言が、物語をもっとも端的に表していると思っている。殺しちゃだめだなんて綺麗事では済まされない世界なのだこの物語は。
ところで、私がいちばん鳥肌が立ったのは読了後にカバーを見た瞬間だった。詳しくは言えないが、これはぜひ多くの人に経験して欲しい。いろんな感情が混在した「ああ~!」が口から洩れてくるだろう。この物語を表紙だけで全て表した作者に脱帽。
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感想に入る前に、もしこのnoteの読者さんの中に「触法少女」を読んだ方がいらっしゃったら教えていただきたいことがありまして……主人公・深津九子の誕生日って10月23日でしたよね?前作でとても重要な日付だったと思うのですが、続編であるこちらだと終始10月22日として書かれているのは何故なのでしょうか……。初めはトリックなのかなと思って読み進めていたのですが、結局最後までそれに対する言及が一切ないまま終わってしまいました。紙書籍だと正しいとか?電子書籍だけ間違えてしまっているとか?もし誤植だとしたら、前作の設定が大事にされていない感じがしてなんだか残念だなぁ……。
はい、本題。基本的に続編があっても続けて読むことは私の場合あまりないのだが、前作がとても印象的だったのと登場人物に嫌というほど感情移入してしまっていたので続けて読んだ。この続編のあらすじが前作のネタバレを含んでいたので引用は割愛。要は前作の後日譚である。
いやー面白かった。大満足。相変わらずおかしな文章は散見されるが、息もつかせぬ展開は健在。今回の方が読者の推理力が試されるという点ではミステリー要素が強かったと思う。私はまだ人の親にはなっていないので純粋に楽しんだが、いつか子を持った時にこの物語を読むとまた違った感情が生まれるのだろう。親とはいえ1人の人間。綺麗事だけでは生きていけないときも沢山あるはずだ。それでも這いつくばって綺麗事に寄せていけるくらいの強い親になりたいものだ。
終始読みながら色んな可能性が見えてきて頭の中が大混乱。前作同様時間を忘れて世界に浸った。色々と中途半端な状態で放り出された人たちがいたので、さらなる続編に期待している。
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顧客の家に呼ばれ、子供の首吊り死体の発見者になってしまった保険会社社員・若槻は、顧客の不審な態度から独自の調査を始める。それが悪夢の始まりだった。第4回日本ホラー小説大賞受賞。
こ、怖〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!!!!!!!めちゃくちゃ怖〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!!!!!!!幼い頃父親の書斎にこの文庫があったり、実写映画のオープニングだけリビングで見たりした(母親がやんわりと停止したのを憶えている)という記憶が思い出されて手を出してみたのだが非常に怖かった。こんなもの未就学児に見せようとするな父よ。止めてくれてありがとう、母。
ホラー耐性は人並みにあると自負していたが、無性に怖かったので読了してからずっとハッピー・ジャムジャム(しまじろう)聴いてる。
何が怖いって、幽霊とか妖怪とかではなくこの恐怖の根源が人間だということ。人の心を持たないサイコパスとの戦いがずっと描かれている。主人公が平凡な会社員である故にサイコパスの異常さが引き立って尚更怖い。私は編集者になる前、銀行員だった経験もあるので窓口の場面はリアル過ぎてずっと鳥肌が引かなかった。
グロい描写もあるので苦手な人は注意だが(私も得意ではない)、グロいグロくない以前にこの敵(名前は伏せる)が気味悪くて怖くてグロさとかどうでもよかった。さて映画観よ(は?)。
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磨かれた文体と冴えわたる技巧。この短篇集は、もはや完璧としか言いようがない――。驚異のミステリー3冠を制覇した名作。
「もういいんです」人を殺めた女は控訴を取り下げ、静かに刑に服したが……。鮮やかな幕切れに真の動機が浮上する表題作をはじめ、恋人との復縁を望む主人公が訪れる「死人宿」、美しき中学生姉妹による官能と戦慄の「柘榴」、ビジネスマンが最悪の状況に直面する息詰まる傑作「万灯」他、「夜警」「関守」の全六篇を収録。史上初めての三冠を達成したミステリー短篇集の金字塔。山本周五郎賞受賞。
『黒い家』の恐怖を和らげようと手に取った、先月読んだ『氷菓』の著者の短編集。完全に『氷菓』のノリで開いたら全然雰囲気が違うので驚いた。同じ著者とは思えない。『氷菓』がラノベ寄りなら、こちらは本格イヤミス。ここまで書き分けられるなんてすごいなと純粋に感心してしまった。そして私はこちらの雰囲気の方がずっとずっと好きだった。
夜警:殉職した新人警察官を懐古しながら、殉職に隠されていた真実を辿る物語。サクッと読めてちゃんとミステリ要素も詰まっていて小気味良い。ここに出てくる新人はどこの会社にもいるタイプの人間だと思うので、他人事とは思えないリアリティさもある。
死人宿:2年前に消えた恋人を追い、辿り着いたのは自殺の名所となっている宿。その晩発見された遺書の書き手を推理していく。これはイヤミスの「イヤ」の部分が強い。最後に絶望に切り替わるこの感じ、堪らない。
柘榴:はい1番好き!イヤミス×美少女が大好物なのでニマニマしながら読み終えた。離婚協議中の親とその2人姉妹の物語。母親がもう一噛みしてくれたら良かったな。もう少し長めで仕上げてもらいたかったと思うくらい好き。
万灯:これは終わり方が良かった。「え、ここで私放り出されるの?」感。この後どうなったんだろうと想像力が掻き立てられる。具体的な現在の主人公の境遇が描かれていないので想像し放題で面白い。仕事一筋の会社員が犯した事件の前後を追う1編。
関守:初めからなんとなく展開は見えるお決まりのパターンだった(イヤミスが確定している短編だから尚更)けれど、登場人物の描写が上手いのでじっくり浸れる。とあるライターが都市伝説を追った先に見えてくる真実の物語。短いけれども伏線がぎっしりで楽しい。
満願:表題作。殺人を犯し裁判にかけられていた女性が、控訴を取り下げた理由を掘り下げていく。短編ながら登場人物にしっかり感情移入させる書き方は流石。真実を知ったところで、私は女性を嫌いになんてなれなかった。女性の満願成就を願う。
Kindle版だと解説が無いらしくて残念。自分の想像力で細かなことは補えるし、そちらの方が楽しいかなとは思うけれど、一応紙書籍でも読んでおこう。しかし、短編集は1話の余韻に浸る間もなく次の話が展開してしまうから読むのが逆に難しいな。
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非常に物騒なラインナップになってしまいました。趣味ダダ漏れ。後半は少し明るいものを読みたいなと思っていますが、きっとまた似たような本を手に取ってしまうのでしょう。ビジネス書、実用書もぼちぼち手を出す所存です(予定)。
同じ本を読んだ方たちと語り合う「読書会」というコミュニティに興味津々な今日この頃。
See you next note.