アンビバレントな子ども達
前回の記事で子どもの『落ち着かない理由』がいくつかわかってきたところで、今回は愛着の種類について参考になったことをまとめてみたいと思います。
『「愛情の器」モデルに基づく愛着修復プログラム』 米澤好史著 2015.10.20 福村出版
がとても参考になりました。本著は愛着障害の分類、発達障害との見分け方、愛着障害の子どもに対して、どのように対応すれば、愛着形成を促すことができるのか、具体例が多数記されています。
子どもに変化が…!手応えあり!
この本で得た知識を参考に、保育現場で『落ち着かない子ども』に対して対応を変えてみると、子どもの反応に変化が見られてきました。
詳しくはまたの機会に!
愛着障害は改善する可能性がある
愛着障害は後天的な特定の人物との関係性の問題です。関係性が修復、または別の人物と愛着形成、関係ができれば、症状は改善していく可能性があるそうです。
(これは、先天的障害の発達障害とは大きく違う点ですね。)
そして、愛着形成する人物は必ずしも親でなければいけない訳ではないとのこと。(保育士や教師、看護師だっていい。子どもが「信頼して、安全基地と思える存在」に誰かがなればそれでいい。)
親と愛着形成ができることが一番望ましいことです。しかし、現実はそう甘くないのでは、とツヤ子は感じています。
愛着の種類
本著に記されていた『エインズワースのストレンジ・シチュエーション法による愛着分類』がとても参考になったので、簡単にまとめたいと思います。
そして、ツヤ子は実際の子育ての場面で起きていることが「これかな?」と、いう感じで、(例)を考えてみました。
1.回避型
【子どもの特徴】
母子分離に泣いたり、混乱しない。再会しても喜ばず、よそよそしい。
抱っこを求めず、抱っこを止めても抵抗しない。
養育者を安全基地として探索行動をしない。
(例)登園時、サラッと親御さんと別れ、淡々とお友だちと遊び始める。
寝かしつけ(添い寝や胸や背中をトントンする)しようとすると落ち着かない。
怖い思いや困ったことが起きても、養育者(親、保育士など)に助けをもとめない。
【養育者の特徴】…拒絶型
子どもと接触が少ない→(例)人混みなど危険が伴う場所でも子どもを抱っこしない、手を繋がない。
子どもを遠ざけたり、統制しようとする→(例)「ママ(パパ)行っちゃうよ!」と言って、何かを訴えている子どもを置いて先に行ってしまう。スーパーなど店内を子どもが勝手に歩き回り、親の視界から消えても気にしない。子どもが上手く出来ないで(着替えや靴を履くなど)もたもたしていると、離れたところから「早くして!」と言う。
2.安定型(←どの子もこれを目指したい!)
【子どもの特徴】
母子分離で混乱し、再会時には喜びと安堵を示す。身体接触を求め、それによりすぐに落ち着く。
養育者を安全基地として探索行動をする。
→(例)登園時、親御さんと別れると大泣きするが、保育士さんが抱っこなどすればすぐに落ち着く。お迎えが来ると喜んで帰宅する。怖い思いをすると、養育者のところへ助けを求めに来る。
【養育者の特徴】…一貫的情緒的応答型
子どもの訴えに敏感。
子どもに対して調和的かつ楽しげな関わり。
過剰な働きかけも少ない。
態度が一貫している。
→(例)子どもの安全に配慮し、抱っこしたり、手を繋いで移動する。
こどもの未熟な動作(着替えや食事動作など)のできるところは子どもの自主性にまかせ、苦手なところは手伝いつつ、丁寧にやり方を教える。
3.アンビバレント型(←保育園で一番多いと思います)
【子どもの特徴】
母子分離で不安や混乱がある。
養育者と再会時、落ち着かず、接近を求めつつも、叩いたり等の怒りを向けたり、矛盾した行動が見られる。
用心深く、探索行動が少ない。
→(例)登園を色々な理由を言って渋る。お迎えを喜び、親御さんに抱きついたかと思うと、次の瞬間、全力ダッシュでどこかへ行ってしまい、なかなか帰宅しようとしない。(登降園にグズグズしないと、他の時間は親に相手にしてもらえないと思っていることが多い。)
新しいこと、環境の変化に敏感で、不安がる。(担任が不在で、代わりの保育士が入ると落ち着きがなくなる。)
【養育者の特徴】…非一貫的恣意的鈍感型
子どものサインに鈍感。→(例)子どもの「ヤダー」「つまんない」など、言葉をそのまま鵜呑みにし、振り回されがち。
子どもの感情調整が不得意。→(例)子どもがぐずった時、なだめたり、遊びや場所を変えるなどしてあやすのが苦手。ジュースやお菓子、スマホなどモノでご機嫌をとりがち。
自分の都合や気分によって対応が変わりやすい。そのため、対応タイミングがズレやすい。→(例)養育者の都合でスマホを渡しているにも関わらず、子どもが夢中になってしまい、養育者が止めて欲しいタイミングで止めないと怒る…。
4.混乱型
【子どもの特徴】
突然、体を、すくめる。
顔を背けて親へ接近し、しがみつくとすぐに床に倒れ込む。
接近と回避が同時に起こる、矛盾した現象が特徴的。ぎこちない動き。場違いな行動。
うつろな表情。固まって動かないことがある。
→(例)鋭い目つきで相手(保育士やお友だち)を威嚇する。そうかと思うと保育者の膝の上にうずくまるようにしがみついてくる。
泣いているので抱っこするが、しがみつきながらも、養育者を叩いたり、噛みついたりする。
【養育者の特徴】
虐待の可能性がある。
精神的に不安定突発的行動が多く、パニックを起こし、子どもを怯えさせやすい。
まずは大人の対応を考えなくては…
ツヤ子が本著を読んで、一番に思ったことです。
忙しい日々の中、どの親御さんも保育士さんも間違いなく頑張っているのはわかります。
けれど、上記の愛着分類を知ると、やはり大人の対応がどれだけ子どもの心に影響を与えるか…。
どれだけの大人がこれに気づき、納得して、自分の行動をかえられるのかなぁと、考えると…。
避けて通ることは出来ないことだと思うのですが…。
日本はアンビバレント型の愛着障害傾向が多め
本著に愛着分類の比率は回避型(21%)安定型(67%)アンビバレント型(12%)と記されていますが、これには文化差があり、日本は回避型が少なく、アンビバレント型が多いとのこと。
しかし、ツヤ子が最近、保育園の親御さんを見ていると、拒絶型(子どもは回避型)の行動をとる方増えている印象です。
理由はわかりませんが、親の方が『子どもと距離を取りたがっている』そんな雰囲気です。
経済的に豊かでも、両親と暮らしていても愛着に問題を抱えている子ども達
両親が離婚して、親が忙しく、スキンシップが足りずに愛着に問題を抱えてしまったとか、
貧困がゆえに虐待を受け、愛着障害になってしまったとか…はっきりとした理由で問題を抱えている子もいます。
しかし、今、保育園で愛着障害の症状が表れている子ども達は、両親と暮らし、親の仕事も安定し、経済的に困窮している訳ではない。
にも関わらず、子ども達は親からのスキンシップに物足りなさを感じ、安全基地を作りたくて様々な『落ち着きのない行動』をしているのではないかとツヤ子は感じています。
追い打ちをかけるのが保育現場
不安定な親子関係に追い打ちをかけるのが、今の保育業界の抱える問題点だとツヤ子は考えています。
そもそも、人手不足(職員の配置基準が現実的ではない)で子ども達に充分なスキンシップを持つことが難しい。(→愛着形成がしにくい)
保育感の違いから職員の子どもに対する対応が統一されにくい。(→非一貫的恣意的鈍感型の養育者の特徴…?つまり、アンビバレント型の子どもになりやすい可能性がある。)
一斉保育は子どもを強く統制する結果になる可能がある。(→拒絶型の養育者の特徴…?つまり回避型の子どもになる可能がある。)
このような環境で、自分が子どもだったらどうします?
赤ちゃんからの目線で考えてみたら…。
僕は赤ちゃんだから、話せないんだ。だから、泣いて、やってほしいこと伝えたいんだけど…。
僕が「抱っこして〜」と泣いたら、大人はスマホを見せてくれたよ。キラキラして面白いね。眠いのもなくなるよ。不思議だね。でもさ〜、朝はとにかくねむいし、だるいし、もう、ヤになっちゃう!!
わたしは最近、歩けるようになったんだ。歩くの楽しいよ。大人が「行っちゃだめ(←どーゆーこと?)」って何か言ってるけど、楽しいから歩きたいの。あと、これをすると、「抱っこして〜」って泣くとスマホを渡されるんだけど、大人が抱っこしにきてくれるの!うれしい!歩いて楽しいし、最後に「抱っこ」もしてもらえるから、最高!
と、最近、ツヤ子は子どものココロの声を勝手にアフレコしています。
「〇〇ちゃん、もしかして、そんな感じ~」と、ツヤ子がアフレコした赤ちゃんに声をかけると、
赤ちゃんがぎゅ〜と、私を抱きしめてくれます。
最近、小さいお友だちが増えている気がしています。
子どもって、素直に生きているだけなんですよね…。
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