君の名は
おはようございます。
救護施設のぺーぺーです。
今日は、うちの施設にいた利用者さんの事例です。
長いです。ごめんなさい。有料です。
どーぞ。
○君の名は
ある日、うちの施設にその利用者はやってきた。
中肉中背のフォルムと、少し大人しいハムスターみたいな性格を兼ね備えた、ちょっと可愛い組み合わせの利用者だった。
そんな彼には名前があった。
名前はそうだな、分かりやすいように『田中』としよう。うん、そうしよう。
別に五十嵐とかでも良かったんだけど、田中の方が、ありきたりでいいよね。
そんな田中さんの情報は、入所する前に役所から貰ったA4用紙1枚だけ。
そこに書いてあるのは、名前や生年月日、年齢とあとは性別ぐらい。
なんとも情報が少ない利用者だ。
あとは、そうだな。
田中さんは歴史が苦手なようで、今の総理大臣はかろうじて知っていたけども、ちょっと遡るとサッパリ分かんない。
自分のことも、さっきの紙に書いてあったこと以外、何にも教えてくれなかった。
というか、何にも覚えていなかった。
田中さんは記憶喪失だったんだ。
○仮の姿
何を隠そう、『田中』という名前は世を忍ぶ仮の名前だ。本名はまだない。いや、覚えてない。
このnoteでは仮名に仮名を被せて書いてるから、もう何が仮なのか分からないな、、
まぁ、本人も自分が何者か分からないと話していたので、それでいいや。
この名前にしたって、生年月日にしたって、生活保護を受けるにあたっての便宜上のもので、本当の情報は何一つないんだけど、
にしたって、生活保護って凄いよね。
戸籍が分からないってことは、日本人かも分からないんだけど、とりあえず保護できるんだから、本当に凄い。
あ、唯一性別は確かだった。
ある日の田中さんが笑いながら、『記憶は全く覚えてないけど、アレが付いてるし、たぶん男だと思う』とか言っていて、
そんなオヤジみたいなセクハラスレスレの話をしてたから、たぶん田中さんは男で間違いないよ。(たぶんね。笑)
そんな陽気な田中さんだから、記憶はないけど、すぐに人気者になっていった。
○脳は不思議
そう言えば、記憶喪失って記憶を失っちゃうけど、ほとんどの人が読み書きとか言語は残ってる。
何人か記憶喪失の人を支援したことがあるけど、ほとんどの人が問題なく出来ていたし、
田中さんもスラスラと日本語を話すし、書けるし、人間の脳って不思議だなーって毎回思う。
あと、記憶喪失って、一時的だったり、自分に関わることだけだったり、色んなタイプがあるんだけど、
田中さんは、ある一点から記憶が全く無くて、プツっと記憶が切れちゃってるって言ってた。
まぁ、
それでも、何故か前向きで明るい田中さん。あんまり悩んでないのか、そう見せないのか、
僕、1日に1回ぐらい『何か思い出した?』って聞いていたんだけど、(聞きすぎだよね)
田中さんは『まぁ、昔のことの思い出し方なんて分かんないし、今を楽しく生きるしかないね』っていつも答えてたな。
なかなか良いこと言うね。
ほんといいキャラの田中さん。
いつしか、施設の生活にも慣れちゃって、何でもできる田中さん。でも記憶は半年経っても戻ることなくて、僕は改めて提案をすることに。。。
○新しく生まれ変わりません?
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