京極夏彦という作家
ミステリーとサスペンスの違いってなに?と聞かれることは少ないけどハッキリと答えがある。ミステリーは犯人がわからないままストーリーが進んでいくのに対してサスペンスというのは犯人がわかっている状態でハラハラドキドキさせるというに言われる。倒叙ミステリーとかもあるので中々分類は難しいけど、京極夏彦さんの作品は本格派ミステリーという言葉がピッタリとあう。
フリーのグラフィックデザイナーとして生計を立てていた京極夏彦さんが、バブルがはじけて仕事が減り、企画書を書く中で書いた小説というのが処女作である『姑獲鳥の夏』だった。それもゴールデンウイーク中なのにお金がなく暇なので書かれたらしく、印字(プリント)にお金がかかるからというので印刷代の足しになればと講談社に作品をおくると編集者は「有名作家がいたずらで送った」と勘違いするくらいの作品だったので即出版、即デビューとなった逸話があるくらい。
とりあえず、初期の三作品をシュアしてみたいと思いました。
デビュー作 「姑獲鳥の夏」
最初に作品「姑獲鳥の夏」が刊行されたときは、新書で分厚いというまでもなかったし、そこまで華々しい感じでなかったけど、手にした人たちはびっくりしたと思う。僕は発売されたときには買わずに半年ばかりしてから買った記憶がある。読んだ後の衝撃といったらなかった。
「20か月子供を身ごもっている女性がいる」という不思議な話から始まるこの物語は戦後間もない時代背景と三流小説家の関口巽の不安定なワトソンぶりにシャーロックホームズを彷彿とさせるストーリーに夢中になって読んでしまった作品。『百鬼夜行シリーズ』といわれるシリーズの最初の作品になる。京極堂といわれる中禅寺 秋彦の謎解きはホームズばりで時代背景と個性的なキャラクターが次々に登場してくる様は圧巻。映画化もされたり、アニメ化もされています。
百鬼夜行シリーズ(長編)
1994年 - 『姑獲鳥の夏』
1995年 - 『魍魎の匣』『狂骨の夢』
1996年 - 『鉄鼠の檻』『絡新婦の理』
1998年 - 『塗仏の宴 宴の支度』『塗仏の宴 宴の始末』
2003年 - 『陰摩羅鬼の瑕』
2006年 - 『邪魅の雫』
2023年 - 『鵼の碑』
1,000ページを超える作品群で圧巻なんだけど、キャラクターが個性的でしっかりと読めるのがすごいところです。
「魍魎の匣」
長編の2作目になる。大財閥と女子高校をうまくかみ合わせてある。当時、高校生と担任の高校教師の恋愛ドラマが大ヒットしていたり、少しアブノーマルな恋愛が表に出始めた時代でもあった。そこらへんも加味されている。
女子高校が嫉妬や生活感の違いから友人である同級生を突き飛ばして列車事故に合わせてしまう所から物語が始まっていく……大財閥がでてきたり、江戸川乱歩の『芋虫』ばりのグロさがあったりと読み終わった後の高揚感が半端ない作品。こちらも映画になっています。
ブックチューバ―(Book tuber)というユーチューブで本の感想を出しているYouTuberのマサキ/Masaki BooksさんのYouTubeでも。それでも詳しく解説してあります。
「狂骨の夢」
ここら辺から登場人物のキャラクターがはっきりとしていく感じがある。探偵で他人の過去が見えるという探偵の榎木津 礼二郎や警察官であり榎木津と幼馴染の木場 修太郎など他の作品では主人公となるような人物の過去や見せ場が豊富になっていく。
物語の冒頭から朱美という女性が何人も「人を殺した」と言い始める。同じ人物なのか?それとも違うのか?そのなかで殺人事件おこったり、集団自殺がおこったり、髑髏事件がおこったりしてキャラクターは別の事件をおいながら逗子にみんな集まっていく……
映像化したら面白いと思える作品。作品にお金がかかるからなのか映画にはなっていないけど、するりと読める作品なのにページ数は相当厚いという作品です。
感想
これだけの作品を残せるのもすごいけど、小説を書こうと思って書いてそれがこれだけの作品になっているのもスゴイ。最新作の『鵼の碑』も最高に面白かったし、次回作も書かれるらしいので、楽しみが増えそうです。