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関西人は「せやねん!」と「よ〜いドン!」を軸に行動している

 ふとテレビをつけると、お茶の間を瞬く間に演芸ホールへと変えてしまうような、おちゃらけた声。お笑いコンビ「かつみ❤さゆり」の❤さゆりが食品メーカーの広報の人に雑な絡みをして、それにかつみ❤が派手にツッコんでズッコケる。関西人なら誰しもが一度は見たであろう朝の情景。もはやこれを当たり前に見られることがありがたい。

 実際、せやねん!のコーナーでかつみ❤さゆりがメーカーの商品を取り上げることの広告効果は絶大であると思う。刺激に慣れた現代人に必要なものは、それを上回るインパクト。かつみ❤さゆりのオーバーとも言えるリアクションは見慣れた関西芸人たちのそれらと何ら変わりはないものの、対企業という真面目な場面で繰り出されるとたちまち強烈な印象を残す。

 そのせやねん!で紹介された食品メーカーの商品は、その日の関西人の食卓に並ぶ。そして、よ〜いドン!で紹介されたお店は、その日の主婦たちの井戸端会議において一発目の議題になる。関西人の行動原理はほぼ全て、「せやねん!」と「よ〜いドン!」に基づいていると言っても過言ではない。
 これはもはや、社会学の領域だろう。

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 関西の商店街の中にあるお店に行くと、入口のところに88パーセントくらいの確率で、「人間国宝さん」のステッカーが貼ってある。これはよ〜いドン!内の"となりの人間国宝さん"というコーナーで紹介された証に貼られるもの。関西人からすればこれは所謂「踏み絵」である。これが貼ってあればとりあえず安心であるという、ある種のブランドみたいなものになっている。
 また、これと同じ様なもので「やすとものプレミアム商品券のポスター」もある。商店街に足を踏み入れるとこのポスターを嫌という程目にするが、これがあればとりあえず変な店ではないということが確認できる。
 関西人は実はかなりの小心者。初めて行く店や、前評判のわからない店に入るのは実はかなり苦手なのだ。

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 ところで、基本的に関西在住の主婦は、朝の時点で晩ご飯の献立やお出かけ先が決まっていないことが多い。「今日の晩ご飯何にしようかしら」「どこへ行こうかしら」という朝一発目のぼやきがまさにそれで、これは何十年も繰り返し同一的日常を送っているが故の退屈であり、これぞまさに贅沢な悩みだと思う。この悩みにスッポリと覆いかぶさるのがこれら2番組ということだ。

 また、せやねん!や、よ~いドン!に行動原理を支配されているのは何も主婦だけではない。私たち若者もまた、ロイコクロリディウムに支配されるカタツムリなのだ。
 若者たちは、インターネットに溢れかえる膨大な量の娯楽と情報に打ちのめされ正常な取捨選択が不可能になった結果、またテレビの前へと回帰してくる習性がある。なんやかんやで腐ってもテレビ育ち。スマホが登場する前の私たちは皆、テレビに歯をガリガリ食い込ませていた子どもだったのだ。星が森へ帰るように、リア・ディゾンが米国に帰ったように、私たちの原点はやはりここにある。
 せやねん!で紹介されるメーカーの商品は、別に目新しいものでもない。なんなら長年愛されるロングセラー商品なことが多い。スマホばっかり見ていたら意外と気づかなかった、そんなことに改めて気づかせてくれるのがこの番組なのかもしれない。

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 今日もまんまとせやねん!に脳幹を支配されたカタツムリと化した私は、気づけば近所のスーパーのお菓子コーナーを徘徊していた。お目当てはもちろん、せやねん!で紹介された製菓メーカーの新商品。とりあえずひとつ買って帰るとするか。
 売り場を一瞥。気のせいか、普段より陳列されている商品の数が少ない気がした。多分、関西のあらゆる地域には、私と同じようなカタツムリがまだまだいるはず。
  
 
 

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