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月報:2024年9月

月報:2024年9月

 秋分の日を過ぎたころからぐっと涼しくなり、さみしい風が吹く季節が来た。夏のかけらと冬の予兆の両方が入り混じっていて、不思議と心地よい。ずっとこの淡さが続いてくれたらいいのになあ。

■最近のこと

 しまむらひかりさんのデザインのクッキー缶があまりにかわいらしく、幸せな気持ちに浸っていた。ぽってりとしたいぬの愛らしさよ……。

 アイシングクッキーの理屈はわかるけれど、その技術のすさまじさがいつ

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月報:2024年8月

月報:2024年8月

 夏だけがぽっかり浮かんで見える。季節には連続性があるはずなのに、夏だけが突然現れたかのように異質だ。
 夏に参っています。暑い。溶ける。じりじりと灼かれるたびになにかが削り取られていく。強大なエネルギーを持つ夏と根比べをしている心地になる。参りました。そう両手を上げてもなお、夏は続いていく。

■「HIKARU UTADA SCIENCE FICTION TOUR 2024」東京公演のこと

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月報:2024年7月

月報:2024年7月

 梅雨と真夏をさっくりと混ぜ合わせてマーブル模様を作ったような天気が続いている。食べ終わる直前のパフェの底のように無秩序だ。暑さにすっかり参っているけれど、まだ夏の前哨戦さえ終わっていない。
 生のライチとパッションフルーツを買った。ライチは思いのほか剥くのがむずかしく、果汁で指がひたひたになる。花の蜜をあつめて閉じこめたようなみずみずしさがあって、美味しかった。パッションフルーツはまだ食べごろで

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月報:2024年6月

月報:2024年6月

 浴室に、寄る辺のない夜にだけ使うシャンプーとコンディショナーを置いている。それらはペトリコールという、雨の香りの名をもつ。このふたつで一日の澱を洗い流すと、雨の日の土と、木々と、花の香りに包まれる。
 世界に対してチャーミングな嘘をついている。晴れの夜にも雨を連れてくることで、穏やかに眠れるような気がした。いつかボディソープも置けるようになったら、いよいよ雨に溶けることができるかもしれない。

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月報:2024年5月

月報:2024年5月

 春になったおかげで、朝の光が清々しい。ある休日に早起きをして、近くのパン屋さんまで歩いた。大通りを進み、住宅街を抜け、並木道を渡る。風はぬるく、咲く花々の色がまぶしい。
 温かいパンの袋を下げながら帰路についたとき、散歩するいぬといぬが挨拶を交わす場面を見かけた。それだけでもう良い日だ、と思えたことがうれしかった。

■Edenのあたらしいアルバムのこと

 Edenのあたらしいアルバムである『

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月報:2024年4月

月報:2024年4月

 春の眠りが生クリームのようにやさしいから、たくさん眠ってしまった。気がつけば白木蓮の季節は過ぎ、桜が街を一色に染めあげていた。花が咲いてようやく、その木が生きているのだと実感する。
 いっせいに咲いていっせいに散るのがなんだか怖いけれど、蕾たちがひそひそ話を繰り返しては咲く日を決めているのだとしたらかわいいな、と夢想する。

■最近のこと 

 SCRAPが提供するサブスクリプションサービス「M

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月報:2024年3月

月報:2024年3月

 愛すべき友人から花束のようなお菓子が届いた。明るい紅と桜色が眩しい。春はもう密やかに訪れていたみたいで、目の前の景色が明るいひかりを帯びた気がした。
 窓を開けて、まだつめたい風を浴びる。遠くの方で鳥がさえずっている。マカロンを齧ったとき、かすかに立ちのぼる苺の香りが世界の匂いと混じりあう。こうして春は芽吹いてゆくのかもしれない。

■最近のこと

 先日、漢字検定の準1級に合格した。172点で

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月報:2024年2月

月報:2024年2月

 私の咳が止まるのと入れ替わるように春一番が吹き荒れた。猛々しいのにあたたかくて不思議な風だ、と毎年のように思う。
 この月報のヘッダーは龍が如く8のワンシーン(©️SEGA)だけれど、このゲームが気になっているひとは必ず龍が如く7からプレイしてほしい。理由はきっと、このキャプチャのシーンにたどり着いたときにわかるはずだよ。

■原稿のこと

 久しぶりに筆を取り、ジュン茨の短篇を書いた。そのうち

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月報:2024年1月

月報:2024年1月

 年が明けてから本当にいろいろなことがあって、悲しみや無力感にぐったりして、すべてを覆い隠すように白く染まった街を見つめていた。今は感染症の後遺症の咳が止まらないのだけれど、咳をするたびに私は生きているのだと実感する。みんなでご自愛しようね。

■最近のこと

 荒野をゆくような気分で日々を過ごしていたので、クッキー缶を作った。丁寧さが求められる営みをこなすことで、安寧や平穏といったものを手繰り寄

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月報:2023年12月

月報:2023年12月

 冬を乗り切るための営みは、なんだか儀式めいているような気がする。やわらかい毛布を膝に掛け、紅茶に温めた牛乳と蜂蜜を混ぜ、ぬいぐるみたちをそっと撫でる。街からは木々のざわめきが失われ、うっすらと雪が降り積もっている。静かな世界ではページを繰る音がよく響く。「寒さは豊かさだ」という言葉がとても好きです。

■2023年のこと

 年の瀬のどこか落ち着かないような、浮き足立っているような慌ただしさが好

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月報:2023年11月

月報:2023年11月

 寒いね。ひとつ雨が降るたびにぬくもりが洗い流されて、無駄が削ぎ落とされた冬が来る予感がする。なんだか風邪ばかり引いていた月でした。

■「永遠の都ローマ展」のこと

 某日、東京都美術館にて「永遠の都ローマ展」を観た。

 ローマ美術といえば、その後の時代に大いなる影響を与えた存在という印象が強い。およそ2000年ほど前に生み出された美が脈々と受け継がれ、生き残り、あるいはその魂が様々な文化に組

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月報:2023年10月

月報:2023年10月

 夏の残り香が消えないうちにクリームソーダを飲んだ。いまの季節が永遠だったらいいのにな。芸術も食も行楽も読書も、すべて秋でなくても楽しめるけれど、秋の夜長においてはなんだか特別に思えてうれしい。

■『次元交わる学級会からの脱出』のこと

 某日、リアル脱出ゲーム原宿店にてリアル脱出ゲーム×にじさんじ『次元交わる学級会からの脱出』に参加した。

 本公演はバーチャルYouTuberグループ「にじさ

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月報:2023年9月

月報:2023年9月

 季節は、吹く風から先に秋に変わる。陽光はまだ夏だけれど、それも次第に薄れていくのだろう。かすかに感じる金木犀の香りは現実のものなのか、あるいは記憶のなかで香っているのかがわからない。お散歩をしたいと思っているうちに冬になりそうだ。

◾️brilliantdays42のこと

 某日、brilliantdays42に参加した。ジュン茨プチオンリー「純白の茨の花」が開催されており、すさまじい活気だ

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月報:2023年8月

月報:2023年8月

 世界が暑すぎる。暑い。真昼の街のなかにいると、からだの縁がうだるような夏に溶けていくような気さえする。
 陽射しの熱が抜けなくて、何度も何度も熱を出した8月だった。それでも、暑くないと書けない文章があるような気がするから夏は嫌いになれない。うそ、たぶん冬の方が好き。

◾️原稿のこと

 7月に受けた資格試験の結果が出た。知的財産管理技能検定という試験の2級で、無事に合格していたので安堵する。こ

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