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今度は家に来てくれんさい。
昨日米びつを見るとほぼ空だったので母にお米を分けてくださいと連絡をした。
実家のお米は叔父が作っている低農薬米でどこにも出荷せずに身内で消費している。
以前は祖父が作っていて、叔父が後を継いで田んぼの世話をしている。
私は物心つく前からずっとこのお米を食べており舌にすっかり味が馴染んでいる。
甘みがあって粘りもある艶々のお米を食べなれているのであまりお米に気を使っていないお店でご飯を食べるとその味の差に愕然とする。
なので自宅で食べるお米はほとんど買ったことが無い。
とても恵まれた環境にあることを感謝しつつ日々のご飯をかみしめている。
そんな事を考えながら実家に行くとついでに晩御飯を食べていきなさいと言われた。
願ってもいない話だったのでいったん帰宅して妻と一緒に再び実家に行った。
仏壇に線香をあげて祖父に挨拶をしてから居間に行くと父が野球中継を熱心に観ていた。
母はいつもの通り台所で忙しなくパタパタと動き回っていた。
昨日の晩御飯は鶏団子鍋だったのでさっそく鶏団子を作るのを手伝う事にした。
鶏ミンチをよく練って粘りを出す。
そこにささがきにしたごぼうとみじん切りにした長ネギを入れる。
後は卵と味のアクセントになるタコのみじん切りを加えて片栗粉を投入。
味付けは塩とお酒。
しっかり混ぜたら鶏団子の種の出来上がり。
後は鍋に入れる野菜を切っていく。
白菜とシメジ、えのき、ねぎ、大根をザックザク。
鍋に白だしを入れて火を点けて沸騰させる。
その間に副菜の準備。
母作っていたカボチャの煮物とレンコンサラダを盛り付けて準備完了。
テーブルに鍋と料理を並べてまずは乾杯。
昨日のお酒はビール。
グラスにトックトクンと注いで父の音頭でグラスを合わせる。
キューッと飲むとよく冷えており飲み心地がたまらない。
早速かぼちゃの煮物を食べる。
カツオ出汁が効いておりしっかり煮込まれているのでほっくりと甘かった。
私はあまり煮物を作らないのでこういった味が嬉しい。
クイッとビールを飲み干して次はレンコンサラダを食べる。
レンコンをスライサーでスライスしてサッとゆでてそこにベーコンを合わせてマヨネーズとマスタードで味付けをした変わり種。
パクッと食べるとレンコンのショリショリとベーコンの脂の美味さをマヨネーズがまとめており最後にマスタードのピリッとした辛みがくる技ありの一品。
昔から母がよく作るサラダだが久しぶりに食べるとやっぱり美味しかった。
そのうちに鍋が沸いてくるので鶏団子を丸く整形して野菜もバサッと
大胆に入れる。
フタをして待つこと五分、クツクツと火が通るので早速食べる。
何はともあれまずは鶏団子から。
アフアフと言いながら口に含むとジュッと鶏の旨味が広がる。
ごぼうが臭み消しになっておりみじん切りのタコがコリコリとした食感で海鮮の味が加わっておりかなり美味い。
野菜と一緒にモリモリと食べた。
この鶏団子鍋は割と新顔で子どもの頃はこんなしゃれた料理は食べたことがなかった。
一度食べてみるとその味の良さに納得のご馳走である。
何よりも大人数で食べる食事と言うのはそれだけで賑やかで楽しい気分になる。
妻は父と麻雀談義をしながら鍋をつついていた。
ある程度食べたら具をさらって洗ったご飯を入れて卵でとじて鶏雑炊を作った。
これがまたお米の一粒一粒に鶏の出汁が染みており後を引く味だった。
みんなで分け合って綺麗に完食。
もちろん後片付けは率先して手伝った。
食後に母の淹れた美味しいコーヒーを堪能した。
楽しい時間と言うのはあっという間に立つものでわりと遅い時間までいてしまった。
父にまた来るねといって母に自宅まで送ってもらった。
食材もあれこれ分けてもらったので冷蔵庫の在庫状況は潤沢である。
親という存在はありがたいなぁとしみじみ思う夜だった。
近いうちに家に招いてご馳走をしようと強く思った。
孝行をしたい時には…とはならないようにしたい。
お父さん。お母さんご馳走様でした。