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あの頃はマジメちゃんでした。
お昼にコンビニによっておにぎりとお茶を買った。
会計を済ませてお店を出ると数台の自転車に乗った中学生らしい集団に出会った。
おお、そうかそういえばこの辺りの中学校は卒業式がすんだばかりだったなと思い普通より少し長めの春休みを謳歌している姿が羨ましかった。
私の卒業式の思い出は小学生の時に卒業生代表の答辞を読んだことである。
その頃は成績もそれなりに良くて毎年学級委員を務めていたのでいわゆるいい子だった。
先生の言うこともよく聞いていたので覚えがめでたかったのだろうう。
卒業を控えた二月に職員室に呼ばれて答辞を読んでくれと言われた時に自分なんてとんでもないと断った。
しかし担任は一度ではあきらめず私を説得してきた。
あまりにも言われるのでそのうち根負けして了承した。
その日から早速原稿を書くように言われたのでウンウンと頭をつかって書き上げた。
その原稿を担任に見せると容赦なく赤ペンが入りボツになった。
それから三回くらい書き直して提出したがオッケーはもらえなかった。
マンガくらいしか本を読まない子どもだったのでボキャブラリーも貧困で大苦戦だった。
最終的には担任がつきっきりで原稿を書いた。
ほとんど自分の言いたいことが書けなかったので、これだったら先生が書けばいいのにとこの大役を引き受けたことを軽く後悔していた。
原稿が仕上がる頃には卒業式まで残り一週間というギリギリのタイミングになっていた。
次の段階は原稿を読み上げる訓練だった。
体育館の壇上に登って入口に立っている担任に聞こえるように大声で原稿を読み上げる練習を本当に数えきれないくらいした。
ただ声を張り上げればいい訳ではなく抑揚や感情を込めた声を出すように求められた。
これがスパルタでダメ出しの嵐だった。
体育館ではクラブ活動をしている生徒が沢山おりチラチラ見られるのも恥ずかしかった。
散々練習して本番の直前にどうにかこうにか仕上がった。
そして迎えた卒業式当日。
式は粛々と進んでいよいよ答辞を読むことになった。
壇上に上がり校長先生の前で原稿を広げて朗々と読み上げた。
めちゃくちゃ緊張していたが声が裏返らないように必死だった。
マイクがあったので大声を張り上げる必要が無くあの特訓は何だったのだろうと思った。
あっという間に読み終わって自分の席に戻ると全身からドッと汗が出た。
それから卒業証書を貰って在校生に見送られながら教室に戻った。
その時に担任から良かったぞと褒められたので大役を果たした開放感に浸った。
家に帰ると卒業式に来ていた父が何だか誇らしげだったので私も嬉しかったが、こういう経験は一度でいいなぁと心から思ったものである。
ああ、懐かしいなと思いつつ昨日の晩御飯を思い出してみる。
スーパーに足を運んで何がいいかなと思って歩いていると豚のこま切れ肉が二割引きだったのでこれで決まり。
後はお酒と野菜を少々補充して帰宅。
早速料理に取り掛かる。
豚肉を細く切って塩コショウをして片栗粉をまぶしておく。
ピーマンと玉ねぎを細切り。
フライパンにニンニク、ショウガを入れて油を敷いて火を点ける。
パチパチと鳴りだしたらそこに豚肉を入れる。
ある程度火が通った段階でピーマンと玉ねぎを投入。
肉と野菜に火が通ったら醤油、砂糖で味付けをして最後にワサビを嘘でしょ!というくらい大量に加える。
後は軽く炒めて豚肉とピーマンのワサビ炒めの出来上がり。
それから冷凍庫のご飯を使ってチャーハンを作る。
チャーハンの具は卵の玉ねぎのみ。
フライパンに油を多めに敷いて熱していく。
モウモウと煙が出てくるまで我慢したらそこに溶き卵を流しいれる。
間髪入れずそこにご飯を入れて全体に卵をコーティングさせていく。
そこに玉ねぎを加えてさらに炒める。
味付けは醤油と塩こしょう。
鍋を豪快に振ってよく炒めたら仕上げに鰹節をドバドバと加えて混ぜる。
これでおかかチャーハンの出来上がり。
汁物は半端な野菜を使ったみそ汁。
ようし出来たよーと言って妻を呼ぶ。
二人で手を合わせていただきます。
お酒は私はハイボール、妻はレモンサワー。
まずは乾杯してキュビーッと飲む。
心底お酒が美味しいので健康だなと思う。
ではではと炒め物を食べる。
パクリと食べると肉の旨味とピーマンの爽やかな苦みにワサビが加わってキリッとした味である。
大量にわさびを入れているが火を通すと辛みがだいぶマイルドになって柔らかい味が全体をまとめているのでなかなか美味い。
妻は辛いものは苦手なのだがこれは大丈夫みたいで良いおつまみになるわと言ってパクパク食べていた。
私も二杯目のハイボールを作りながらモグモグとつまんだ。
みそ汁を合間に挟んでチャーハンも食べる。
スプーンでグワッとすくってモグリ。
具がほとんど入っていないシンプル極まりないチャーハンだが鰹節の旨味と玉ねぎのショリショリした食感が楽しい。
味つけもちょうどよくお酒のつまみになった。
二人分で二合のお米を使ったが時間をかけて完食。
さすがに量が多かったので大満腹だった。
妻と学校の思い出を話しながらの楽しい晩御飯だった。
さぁて今日は何を食べようかな。
子どもの頃の懐かしの味を再現しようかしら。
母直伝の料理、レパートリーはまだまだありまっせ。