画家の肖像
東京ステーションギャラリーで開催されている『佐伯祐三 自画像としての風景』を見に行ってきました。
東京ステーションギャラリーは今回初めて行ったのですが、まさかエレベーター降りたら即展示室になっているとは…トイレは1階にしかないので、先に行っておくのが吉です。
美術館巡りにハマり出した頃は、印象派を中心とした華やかで分かりやすい作品が好みだったのですが、ここ数年は、印象派を離れた頃のセザンヌやユトリロ、ヴラマンクと言った画家の作品が気になると共に、近現代の日本洋画をもう少し知りたい気持ちがありまして、そんな折に、この展覧会の開催を知って、開幕まもない東京会場に駆けつける運びとなりました。
東京駅の一角、赤い煉瓦造りの壁を利用した展示室内は、若干窮屈さはありますが、佐伯祐三の、素朴で抑えた色味の作品ととても雰囲気があっていました。
特に関連する他の画家の作品もなく、全て佐伯祐三オンリーという贅沢な構成。最初期から晩年の絶筆と思われる作品までを網羅した回顧展は、若くして亡くなった画家の生き様そのものでした。
私は特に、土佐堀川の滞船シリーズや静物画に心惹かれましたが、日本にいてもフランスにいても、街角の風景を粛々と描き続け自分の表現を模索し続けた作品は、どれも目を奪われてしまいます。
佐伯祐三は30才の若さでこの世を去ってしまうので残された作品はそこまで多くないのですが、今回出品されている作品を見ると、制作年がそんなに離れていない(当たり前といえばそうなのですが)ので、その制作スピードにも驚かされますし、ずっとずっと描き続けて痛かったのだろう佐伯の情熱が垣間見えます。
代表作である『郵便配達夫』は思ったよりも大きく、前半の自画像や他の肖像画に比べると、表現も変化していて、その違いも面白いです。
また以前、静岡市美術館の『プチパレ美術館展』で見た、モーリス・ユトリロの『ノートル=ダム』とほぼ同じ構図の絵があり、図録の解説にも、佐伯がユトリロを手本としていたという手紙の記述があったことから、もしかしたら、佐伯祐三と同じ絵を自分も見たのかもしれないと思い、美術館巡りの醍醐味を味わった瞬間でした。
それにしてもこの展覧会、男性のお客様がすごく多いと感じました。大抵の展覧会の男女比は8:2女性の方が多い印象なのですが、今回は6:4位?特に年配の男性客が目立っていて、自分も近代日本洋画の展覧会は久しぶりだったので、普段見に行っている展覧会との客層の違いに驚きました。
私は15時の時間指定で入場したのですが、それなりに人がいたので、これからもっと混むだろうなぁと思いました。気になる方はお早めに。東京駅で2時間、充実した時間を過ごせますよ。
この日は、午前中にアーティゾン美術館で全く別ジャンルの展覧会を見ていたのですが、そちらの感想は別に記しましたので、よろしければこちらもどうぞ。
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