モノトーン映像で伝わるものって何だろう――『パリ13区』を観て。
その映画を観ていて一番インパクトが大きかったのは、(ほんの数分を除いて)全編モノトーンの映像だったこと。真っ暗な映画館の中でみる白黒の映像は、なんだか現実のスクリーンと館内の境目が曖昧で、夢を見ているような気分になった。
こんにちは、のんです。
映画『パリ13区』を観ました。
ふいに、この作品っていつの時代? と混乱しそうになる。けれど、スマートフォンやマッチングアプリの登場で、ああ、今の自分が生きている時代と同じ、現代なんだなと気づく。逆に、それがないと時代がいつかわかりにくい。この作品は、ずっと昔から変わらない、普遍的な恋愛の物語なんだな、と痛感した。
同時に、白黒映像=昔の映像という無意識のバイアスが自分にかかっていたことに気づいたことが新鮮だった。1時間45分という上映時間。考えてみると、こんなに長時間、大スクリーンでモノトーンの映像を見た経験はなかったように思う。
おどろくほどインターネットが普及して、スマートフォンを持つことやSNSが当たり前になった。どこにいようと、何時からだろうと、人と出会ったり、会話するだけなら結構簡単にできてしまう。けど、容易く接点を持ったからといって、本当にわかり合うことはむつかしい。
ヒロインの一人であるエミリーは、コールセンターのオペレーターとして働いている。おしゃべりで、思ってもいないことを口に出してしまうこともあり、トラブルも少なくない。性に奔放な面もあり、マッチングアプリで男性と出会っては体を重ねる女性だ。
モノトーンになって伝わってくるのが、言葉とは裏腹な本音。「目は口程に物を言う」とはよく言ったものだなあ、と思う。つい感情が高ぶって、エミリーの口から突いて出た言葉と、その目から伝わる本心が矛盾していると伝わってくる。
洗練されたモノトーンの映像と、チャーミングな登場人物たちの交差する過程を見つめた1時間45分。観終わった後、私たちの持つ悩みって、シンプルにそぎ落としていくとずっと変わらないものなんだな、とそんなことが頭をよぎった。