書籍「ムーミンの生みの親、トーベ・ヤンソン」を読んで
皆さんはムーミンという作品をご存じでしょうか?
知らない方は少ないんじゃないでしょうか?
私自身はちゃんとムーミンを意識したのが、埼玉県にあるムーミンバレーパークに行ってからです。
バレーパークに行って、ムーミンを知ったそのすぐ後にムーミンコミックス展というのが八王子にある美術館で開催されていて、そこに行って初めてトーベヤンソンという方が描かれた作品であることを知りました。
ムーミンの世界観に惹かれていきながらも、生みの親であるトーベヤンソンさん(以下トーベ)を知る中で、彼女の生き方・考え方に共感、尊敬の念を覚えていくようになりました。
もっと深くトーベのことが知りたいと感じて、「ムーミンの生みの親、トーベ・ヤンソン」という書籍を手に取りました。
訳360ページほどの書籍で、読んでいるとあっという間に読めてしまうほど読みやすく、興味深い内容となっているので、ご興味がある方は是非一度手に取って読んで欲しいです。
今回は本書籍を読んでの感想になります。
トーベヤンソンについて
トーベはフィンランドのアーティストで、画家・小説・劇の脚本・挿絵制作・漫画・児童文学・絵本など幅広く活動をしていたそうです。
私はムーミンの作者という印象しかなかったので、元々画家であったり劇場の脚本を執筆したりされているなんて思いもよりませんでした。
トーベに共感する点として、学校が嫌いだったということが挙げられています。
学校の教育・環境になじむことができなかったというのです。
絵を描くことが好きだった彼女ですが、教師に描き方を指示されながら描くことは苦痛以外のなにものでもなかったようで、思い出したくない過去として語られているそうです。
トーベは中学校で学校を中退し、挿絵の制作を始めるなどしながら芸術の道を歩み始めました。中退をすることで、アーティスト以外の道を断ったということですね。
こういう逃げ道を断つという決断を16歳の時にしているというのですからすごいですよね。
私は学生のころ本当に学校が嫌いで、集団になじむことができず、決まった時間を言われたとおりに授業をするというのが苦痛で仕方ありませんでした。
また、学生時代のトーベのエピソードにクリスマスの催しで冊子を作って友達に販売をして、学校で怒られたということがあったそうです。
同じような体験があって、小学校4年生のころに、私は自分が持っているゲームソフトをなんと、友達に売るということを行いました。
もうやらないだろうゲームを公園の遊具の上に広げて、同級生相手に販売をしたのです。
勿論、後で親にばれてものすごく怒られてしまいました。
買い与えられた自分の所有物をなぜ販売してはいけないのかということに納得できなかったことを覚えています。
トーベの尊敬するところ
トーベは語られるところによると、海外に旅行をしながら、絵の勉強をするために、様々な学校に入学をしては勉強をしていたそうです。
絵を描くという自分の好きなことを徹底的に学び、その技量を高めていったのです。
名前しか聞いたことありませんが、フランスの名門校「エコール・デ・ボザール」への入学も果たしたそうです。
ただ、そこでの勉強は退屈だったようですが。
一つの興味に対して学び続ける姿勢というのが一貫しているので、とても尊敬しています。
また、一時期絵画の世界を離れることになり、再び絵画の世界に戻った際には一から始めるつもりで絵画に取り組む姿勢や美術界のはやりの流れに対して、本当にこれでよいのだろうかと考え、流されることなく自らの考え方を確立していこうとした姿勢、自分というものを曲げるのではなくて、変化をさせていく、それと共に成長していくところにトーベのすごさを感じました。
トーベは更に先に述べたように多岐にわたる仕事をしている点もすごいと感じる点です。
確かにいろんな仕事を経験するということはあると思います。しかし、多くは一時的な仕事であったり、経験や学びのためにやっていることが多い中で、継続的にそれらの活動をしていたというのが、驚きであると同時にどうしたらそれほどの仕事をこなすことができるのかと不思議に思うほどです。
ムーミン作品について
ムーミンは元々トーベがサイン代わりにあるいは風刺画でちょこっと書いていたキャラクターが元になっている。
そのキャラクターを物語上に登場させることで、ムーミンの世界は出来上がっていったそうです。
ムーミンの魅力はキャラクターは勿論ですが、今読んでも色あせない面白さだろうと思います。
これはムーミンの世界が、現実の政治や経済、歴史といったものを取り入れることなく、普遍的な人間感情をもとにしているからではないかと思っています。
ちなみにムーミンの正式名称はムーミントロールです。
トロールという言葉を聞くと、棍棒を持った巨人というイメージがあるので、最初に聞いたときは驚きました(大体ドラクエのせい)。
ムーミン作品は小説・絵本・コミックスが存在します。
コミックスは定期刊行の冊子に掲載されていたそうで、トーベにとって初めての経済的安定に繋がった仕事であったそうです。
というのも、絵の仕事というのは必要に応じて依頼を受けるものであったので、経済的には不安定でありました。
また、絵の販売も行っていましたが、それも高額というわけではなく、生活の足しになる程度だったそうです。
仕事をする空間であるアトリエを維持するためにもお金が必要ですし、生活をするためのお金も必要。そんな彼女にとって定期的な収入を得ることができるコミックスの仕事はとても魅力的だったのです。
私も会社を離れて、個人で稼いで仕事をしていきたいと考えていますが、そうなった場合の経済的不安定さが恐ろしいと思うことがあります。
安定的な収入があるというのは心に安らぎをもたらすのです。
ただ、このコミックスは長くは続きませんでした。というのも、日々継続的に描き続けるというのは中々にハードなことです。それも、先方の求めるものに合わせてとなれば、それは想像するに難くないです。
その為、トーベは弟のラルスにコミックスを任せて、ムーミンコミックスからは手を引いていきます。
経済的な安定よりも、自分の幸せを考えたときにどちらを優先するかという話ですね。
人生はたった一度きりしかありません、そんな中で自分の幸せを後回しにして、経済的な余裕ばかりを考えてしまうのはどうなのでしょうか?
まさに、今の時代にこそ問われるべきものではないかと思います。
誰だって、幸せを感じて生きていきたい。そのためにはある程度のお金が必要にはなります。しかし、お金を得るのは生きるため、そして、自らの望む生活をするためです。
望む生活とは怠惰に過ごすことなのでしょうか?
少なくとも、私は仕事をせずにだらだらしたいわけではありません。
創ること・表現することそれを求めて日々活動しているのです。故に、それを通して、生活が成り立つのであれば、それこそが幸せなのです。
だからこそ、何のために仕事をするのかという問いを日々自分に問う必要がある。
トーベはそれを感じながら、多忙を極める毎日を過ごしてきたのではないかと思いました。
あとがき
ひょんなことからムーミンを知って、作者であるトーベヤンソンのことを知ることになりました。
全く持って知らなかったですし、当時は興味も全くなかったのに、今では大好きな作品のひとつで、コミックスも何冊も持っていますし、アニメーションも見てしまいました。
ムーミンを見る中で、自分自身も世界の流れに左右されないような作品を生み出したいという気持ちと、創作や表現活動を通して、多くの人を喜ばせるようになりたいと思うことができました。
興味を持って、ほんの少しでよいから踏み出してみると新しい世界が開けるということを忘れずにいたいと思います。
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