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2023年ルヴァンカップ決勝、アビスパ福岡と非日常

2023年11月4日土曜日の朝、私は千代田区のホテルで静かに和朝食をとっていた。いつもパン食なので、白いご飯に少し温かい焼き鮭、巻き麸の入った味噌汁が既に非日常を感じさせてくれる。

昨日は羽田に降りたのが17時頃。夜は旧友と有楽町に出かけたが、酒は残っていない。節度が勝った。チェックアウトし外に出てみると、部屋の窓から見たままの、抜けるような青空。キンとした関東のそれ。私が好きなやつ。福岡とは湿度が全然違うなといつも思う。特別な日である今日は、いつもの東京よりも気持ちがいい。もう優勝だ。

大江戸線にはアビサポ、浦和レッズのサポがちらほら。おや、そんなに混雑していない。ほどなく国立競技場駅に着き、走り出したいのを我慢しながら階段を早足で上れば、ドーンと隈研吾の競技場が目に飛び込んでくる。何度か来たことあるけど、いつも工事中だったからようやく触れることができる。

そして先に並んでくれていた先輩にLINEしつつ姿を探そうと見渡すと、とんでもないアビサポの数。凄まじい人の列というか集団。グッズ売り場にも並ぶネイビーの群れ(途中で諦めました)。

えっこんなにいます?普段。

そして、このネイビーが全員「アビスパ」なんだよなっていう安心感と、包容されている感覚。いつもアウェイに行く人は多少慣れてるんだろうけど。いやー、完全に非日常。

無事仲間と合流できて、しばらくするとスタジアムに人が動き出す。ガヤガヤする中、自分だけに聞こえる高鳴る心臓の音。ああ、ヤバい。決勝で国立にいるんだよな俺ら。とグッとくる。

ゲートを通過すると、なんとアビチア(アビスパ福岡オフィシャルチアリーダーズ)がずらり並んでお出迎えしている。おおお、これは予想外の付加サービス。いつもベススタで一体感を演出してくれているアビチア。昔は人数も少なくて拍手も疎らだった。しかし、年々その活動が認められ、今やベススタにはなくてはならない存在である。

今回、マネー的な事情から国立のグラウンドに立てそうになかったところ、国立にアビチアをっていうクラファンが立ち上がったのよね。「オフィシャル」チアなのになーとは思うけど、クラブも色々とあるんでしょう。そんな紆余曲折を乗り越えた彼女たちが目の前にいる。なんにせよ、推しのSAWAちゃんともハイタッチできたしここでもグッとくる。

思ったより広くない席に座ると、自分も国立競技場の一部になった気分だ。ああ、東京オリンピックは生で見たかった(チケット当たってたんだけどな!!)とか思いつつ、少し時間があったので、一旦スタジアムを出て、散歩がてら近くのJR信濃駅にあるバーガーキングに向かった。

そこで目の当たりにしたのは、のんびりと改札から歩いてくる浦和のサポーターたち。もう試合開始前と言えば前。なんというか、日常なのだ。前日に飛行機でやってきて、朝から早起きしてご飯もおかわりなんかしちゃいながら張り切ってここにいる私とは正反対。ベンチでゆっくりと楽しそうに缶ビールでも飲んでる人もいるじゃないか。

け、決勝やぞ?

まるでピクニックにでも来ているみたいだ。完全にサッカー観戦が日常に溶け込んでいる。アクセスや雰囲気、チームの数などなど多くの要因があるんだろうけど、都心と九州の田舎との差を感じた。浦和レッドダイヤモンズが積み重ねてきた歴史もあるんだろうな。ゲットゴールフクダ!

バーガーキングのあるフロアに佇む、つば九郎神社で一応勝利を祈願し、席に戻る。ようやくビールを一口。オウフ、めちゃくちゃ美味い。ピクニックでなく、こっちは勝たせに来てる。景気づけのオノボリビールである。

しかし最近ようやく気付いたけどサッカー観戦のときは飲まない方がいいね。脳に刻まれる記録の溝が浅くなる感覚がある(要するに内容を覚えてないことが多々ある)。しかしスタジアムで飲むビールは、シチュエーション上、最上位にある。多分一番美味い。この話はまた別の機会に。

試合開始が近づく。選手がウォーミングアップに入ってくる。我々大歓声。我々の席の後方のでっかいビジョンに映し出されるアビスパのエンブレム。聞き慣れたノブリュウa.k.a.信川竜太のいつもと少し違う選手紹介に泣きそうになる。そしてまた大歓声。

コレオ用のビニール袋を全力で振るシャカシャカ音。サポの頭上を滑り落ちてくるビッグフラッグ。何故か聞こえてくる「跳ばない奴はサガン鳥栖」(どんだけ鳥栖好きなん)。あああ、たまらん。非日常空間に私はいる。健康にこの日を迎えられてよかった。

どこにこんだけの人がいたんでしょう笑



そして、初めてづくしで緊張をすこーしだけ抱える我々の大歓声を抑え込むかのような、浦和の圧倒的なコレオ、地響きのような「ウィーアーレッズ」。クソゥ、素晴らしい。敵なのに。完全にエンタメとして確立されている。このサポーターこそが浦和レッズだ。相手が浦和で良かった。大声を張り上げそれに立ち向かいながらも、私はありがとうと小さく呟いた。

試合開始。その5分後、まさかのシャドー起用の前寛之が紺野の折り返しを押し込む。いつものアビちゃんと違う!と、ほとんどのアビサポが思ったと思う。前半アディショナルにも紺野からのボールを宮が合わせて2点目。湧き上がるネイビー。もう5バック!5バック!いうて。

後半、グローリのPK獲得で勝負あったと思ったら、山岸が外し(ちょw)、嫌な予感のまま、いつものアビちゃんっぽく明本に決められる。しかし酒井ゴリのクロスは速くてワクワクするね。そしてGK永石の活躍もあって、何とか逃げ切り試合終了。

一気に大粒の雨が降ったような歓喜の声の音の中で、仲間とも知らん人ともハイタッチし、抱き合う。降り止まないその雨に打たれながら、次第に何か色々とこみあげてきて、仲間に見られないようにタオマフで顔を覆った。涙が止まらなかった。非日常の極み。今もウルっときてしまう。歴史的瞬間、私はそこにいた。

落ち着いた頃、星のシールがどこからか回ってきた。皆嬉々としてTシャツやユニに貼っている。すげー。準備してた人仕事できるんだろうな。この空間が安堵と優しさに包まれてて幸せすぎる。みんなが味方。

試合後しばらくして、これも初めて見るセレモニー。遠くで、これも見たことのない台数のカメラの前で誇らしそうに集まるアビちゃん。続く胴上げ。城後の「これで弱いアビスパともさよならです」で湧き上がる我々…

しばらく余韻に浸りながらスタジアムを後にし、東京駅で一杯やって、気分よくお土産を沢山買いこんで新幹線の最終に乗り込んだ。新幹線での東京-博多は人生2回目。人生初のグリーン車は飛行機よりも快適だったな。

博多駅には0時前に到着。構内にはアビサポも多くいて、フワフワとした満足感を引きずりながら自宅へと向かう。た、た、楽しかった~。

次の日は朝から仕事で、午後からは子供のサッカーの試合と、日常は思っていたよりも早くやってきた。翌日月曜日の福岡市役所前の祝勝会で最後の余韻を楽しみつつ、この夢のような非日常の数日間は終わった。まぁ、当たり前だけどこの日常があってこその喜びがあるんだよね。

こんな経験をさせてくれたアビスパ福岡と、このクラブに関わる全ての人に感謝している。そして、もっと多くの人にこの経験をしてもらいたいから、また何でもいいからタイトルをゲットしよう。

サッカー観戦、多分家でゆっくりとDAZNやスカパーを見た方が見やすい。国立はピッチまで正直遠かったし、ベススタもゴール裏なんてオフサイドも分からない。寒いし暑いしビールも飯も少し高い。が、スタジアムには非日常が待っている。雹が降っても盛り上がる。あの信濃駅前のようにアビスパが日常になってほしくもあるけど(勝手に私が思っているだけで彼らにとっても非日常なんだろうけど)、非日常は、私たちのすぐそばにある。


ルヴァン杯について、今更ながら記憶を辿りながら書いてみた。やっぱり文字にしておくことって大切なんだなと思う。自分史的に。記憶って日に日に薄れていくものだから(要はすぐ忘れる)。

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