ついにコンペの日程決まる!
ライバル会社の製品を使っている企業のキーマンと携帯電話でやり取りすることになり、商談は大きく前進したかに見えました。私の直属の上司も「これは脈がある」と感じ、やり方は全て私に任せてくれることとなったのです。
前回はここまでお話ししました。
少し余談になりますが、お客様と携帯でのやり取りを頻繁にしていたことで、月間の携帯費用が私だけ6万円にも達し、総務部から注意を受けるハメになりました。まあそのぐらい恋人同士のように頻繁に話していたことになります。
さて話を本題に戻します。上司から自由裁量権を委ねられた私は、お客様からの質問は全てその場で自分の判断で答えてOKということになりました。これは営業にとってはかなり異例な待遇になります。
重要なのは対応スピード
営業では、お客様から何か問い合わせがあったり、質問を受けたりした場合は、一度会社に戻り上司の判断を仰ぎ、その後、後日回答するという形が普通の営業のパターンです。
しかしこれでは時間がかかりすぎます。特にお客様のキーマンがせっかちだったこともありますが、ライバル社より先に商談を進めるには何よりスピードが大事です。
お客様から質問をされ、それを会社に持ち帰ることをせず、その場で私が判断して回答できることは、かなりの時間短縮になります。
上司はそれを見越して自由裁量権を私に委ねてくれたのだと思います。それだけ信用してくれていたことにも感謝しました。
このやり取りはお客様のキーマンからしてみてもとても新鮮に映ったようです。
「お前とのやり取りは、他の営業と違ってテキパキ物事が進むので楽でいいや。」
そう言っていただき、評価も上がったように感じました。ただ、今思えば、この上司から貰った自由裁量権というものは、本来であれば社内規定違反ギリギリの行為だったように感じます。
まさに勝つためには手段を選ばない背水の陣のような気持ちで商談に挑んでいました。
思いのほかビッグな商談
ちなみにこの商談、概算費用でなんと約30億の商談でした。この規模になると当然みんなが目の色を変えて必死に食らいついてきます。
この時点ではまだ受注できていたわけではありませんが、もし30億の商談を受注できると、営業の個人ノルマの約6年分ぐらいに匹敵します。
この商談を手中に収めることができれば、社内でもまさにスーパーヒーローものです。
でも私はその時、なるべく冷静を心がけ、一喜一憂せずにキーマンと話をすることに徹しました。
また、この気の短いキーマンをなるべく怒らせないように…ということも重要なファクターでした。
ちなみに、「大至急タバコを買って来い!」と言われて走って自動販売機まで買いに行ってことは幾度となくあります。今なら相当なパワハラで処分されることと思いますが、当時のうちの営業はこんなことを平気でやっていました。
今の若い営業マンにはとても想像がつかないことと思います。それどころか馬鹿じゃないかと思われるかもしれません。
でも当時はこれが営業の基本スタイルであり昭和の営業ここにあり!と言わんばかりの腕の見せ所となっていました。
コンペの日程が決まる
そんなやり取りが約2ヶ月間続き、キーマンからは「そろそろどちらかの会社に一本化したい」という意向が伝わってきました。
商談を2社とやるのは面倒だというのがキーマンの言い分でした。こうなると俗に言うコンペの提案勝負になります。もちろん提案価格が最重要になるのは間違いありません。
ライバル社とうちの両社が行う提案は、同じ日に実施することとなり、また決定もその日のうちに伝えるとの意向がキーマンより伝えられました。提案の日程が遅ければ遅いほど有利になってしまうので、不公平がないように同じ日にしたということのようです。
疑心暗鬼になる
これまでにキーマンから情報は十分もらっていました。なので私の頭の中では、提案の内容と大体の提示価格は決まっていました。
しかし、「もし同じことをライバル会社にも話していたら……」などと考えたら、疑心暗鬼にもなりました。
本当に信じていいのだろうか……そればかり考えて悩んでいました。
さて最終コンペはどういう結果になったでしょうか...この先は次回またお話しさせていただきたいと思います。
本日も最後までお読みいただきありがとうございました。