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ロフォーテン国際芸術祭(LIAF2024)SIAFラボ 《Island Eye Island Ear》 制作レポート


ロフォーテン国際芸術祭(LIAF2024)
会期:2024年9月21日〜10月24日


SIAFラボは、2021年から2024年にかけて進めてきたプロジェクト《Island Eye Island Ear》(通称:IEIE)をノルウェーのスボルベルで開催されたロフォーテン国際芸術祭(LIAF2024)にて発表しました。IEIEはデーヴィッド・チュードア、中谷芙二子らによって半世紀前に構想された、島をまるごと楽器にするという未完のコンサート計画を再考し、今日的な実現可能性を探るアートプロジェクトです。


2024年9月15日(日)
ノルウェー、ロフォーテン諸島にラボメンバーの小町谷、船戸、日下、仲本が到着。初日からオーロラに迎えられる、まさかの歓待ぶり。部屋のテラスから眺めるオーロラの下、魚釣りをするラボメンバーたちは感動しきりでした。これ以上ない環境で、プロジェクトの準備を進めていきます。

2024年9月16日(月)
展示で使用するパラメトリックスピーカーを組み立てました。パラメトリックスピーカーは、超音波を使って特定の方向だけに音を届ける音響装置。デーヴィッド・チュードアが考案した「サウンドビーム」にまつわる1974年の実験記録を参照し、当時用いられたパラボリックアンテナをアップデート。当時は存在しなかった、パラメトリックスピーカーを使って、島中に音を張り巡らせます。

2024年9月17日(火)
ラボメンバーの平川が合流。会場となる島の下見を行い、パラメトリックスピーカーの設置位置の検討を行いました。当日のコンディションは天気次第。本番まであと3日です。

2024年9月18日(水)
リサーチャーの中井悠と明貫紘子がノルウェーに到着。パラメトリックスピーカーを島に持ち込んでテストを行いました。デーヴィッド・チュードアの構想を実現するため、同じ会場ではマルセル・デュシャンやアンリ・マティスの親族でもあるRobert Monnier & Gill Eatherleyによる凧や、オリジナルメンバーのMargaretha Åsbergによる鏡を用いたパフォーマンスが行われます。

2024年9月19日(木)
展示会場の一部です。1978年にデーヴィッド・チュードアがIEIEを構想したクナーベルシェア島の記録映像と、1989年にサンフランシスコでRobert Monnier & Gill Eatherleyが行った凧揚げのワークショップの記録映像、そしてSIAFラボが2023年に北海道江差町のかもめ島で行った実験の記録映像が並べられています。スボルベルのショッピングモールでは、ワークショップで地元の小学生が制作した凧が飾られていました。

2024年9月20日(金)
E.A.T.伝説のディレクター、ジュリー・マーティンが合流。ジャッキー・マティスの開発した凧が上がるのを見届けています。E.A.T.はアーティストとエンジニアのコラボレーションを促進することを目的として1966年にNY設立された団体です。デーヴィッド・チュードアが50年前に構想したIEIEの作品のうち、指向性スピーカーと凧、そしてMargaretha Åsbergの鏡の3つがノルウェーの島で揃いました。

ロフォーテン国際芸術祭のオープニングが、巨大な造船所のドックで行われました。造船所横の展示会場では、ノルウェーをテーマにした映像作品が多く展示されていました。ロシアのウクライナ侵攻の際、サイバー攻撃により、インターネットが繋がらなくなった極北諸島で、自前でラジオ局を作ったアマチュア無線士たちのドキュメンタリー Astrid Ardagh "On Air"(Film/21min/2024)など、興味深い作品が見られました。

2024年9月21日(土)、22日(日)
ロフォーテン国際芸術祭(LIAF2024)にて《Island Eye Island Ear》を無事に公開しました。1978年にデーヴィッド・チュードアが構想した、島を丸ごと楽器化するというプロジェクトの実現は、SIAFラボのおよそ4年にわたるプロジェクトの集大成です。Julie Martin、Margaretha Åsberg、Robert Monnier & Gill Eatherley、中井悠、明貫紘子、そしてSIAFラボという3世代に渡る親密なコラボレーションは、2度と再現できない奇跡的なパフォーマンスになりました。この場に立ち会えたことに、心から感謝したいと思います。今回の公演及び、これまでのSIAFラボの活動は、YouTubeで映像記録を観ることができます。これからはまた皆個人として、活動を続けて行く予定です。ご期待ください。

SIAFラボ活動記録2021-2024

中井悠氏によるプロジェクトに関するエッセイ

THE ART NEWSPAPER レビュー


[SIAFラボ] 小町谷圭、石田勝也、船渡大輔、平川紀道、日下貴詞(アシスタント)、久保田晃弘(スーパーバイザー)
[アーティステックリサーチャー]中井悠
[キュラトリアルリサーチャー]明貫紘子
[映像記録・執筆] 仲本拡史

Island Eye Island Ear, Lofoten 2024

Artists
Sound: SIAF LAB.; Kei Komachiya, Norimichi Hirakawa, You Nakai and Jacob Kirkegaard
Choreography for Mirrors: Margaretha Asberg
Kite tails: Robert Monnier and Gill Eatherly, Jackie Matisse Estate

Ultrasonic Directional Speakers
SIAF LAB.; Kei Komachiya, Katsuya Ishida, Daisuke Funato, Norimichi Hirakawa, guest curator Hiroko Kimura-Myokam, and documentation by Hirofumi Nakamoto

Curators
Marianne Hultman, director, North Norwegian Art Centre
Kjersti Solbakken, Loften International Art Festival 2024

Producer
Berte Tungodden Ynnesdal, North Norwegian Art Centre

Advisory Board
Julie Martin, Experiments in Art and Technology
Phil Edelstein, Composers Inside Electronics

Island Eye Island Ear, Lofoten 2024 has received generous support from Nordic Culture Point, EU-Japan Fest, Bode 2024, Sasakawa Foundation and the Norwegian Embassy in Tokyo.

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