大倉さんを観に小倉に行った話
8月中旬、ナイロン100℃「江戸時代の思い出」大千穐楽を観るために小倉に行った。
推しの舞台を観るために遠征するのが当たり前になってしまった。東京に続き今回もまた、だ。それも本来ならその日は仕事だったのにチケットがとれた時点で臨時休業することに決めた。他の日がんばるから許してつかーさい、の気持ち。
小倉滞在時間は約8時間。そのうち3時間ちょいは観劇でお芝居前後の数時間のみがフリータイム。
当初は小倉といえば門司港じゃん、と単純に考えたのだけれどもし何かあって開演時間に間に合わなかったらと思うとちょっと怖くて行けなかった。さすが小心者。
それで結局、小倉城に行った。
「江戸時代の思い出」の劇場が北九州芸術劇場で、小倉城がすぐ横だったからだ。
ここなら安心。再建された天守閣だけどいい。城好きだから。築いたのが毛利元就というのもいい。わかるひとだけわかりゃいい。
小倉城にはなぜか宮本武蔵がいた。
宮本武蔵って小倉出身なのかと思ったらそうじゃなくて、最も長く滞在した地らしい。えーと、7年。ななねん?…7年で一番長いってことはあちこち行ってた人なんだねえ。転勤族か。あたしゃ巌流島くらいしか知らなくて悪かったよ。
まったく知識のないまま行っているので、いろいろなお侍さんがいたけど誰一人ピンと来ないまま見学してレモネードを飲んだ。
5Fのカフェからは今から行く北九州芸術劇場がよく見えた。
下には綺麗な庭園が広がっていたんだけれど、そっちはまるで見ずに、わたしは北九州芸術劇場ばっかり見ていた。
あああそこにさっき見たお侍さんみたいな格好をした大倉さんがいるんだな、と思うとちょっと嬉しくてフッと声が出てしまい、隣にいた外国人観光客(ほんとーーーに外国人観光客ばっかりだった)にニコッとされてしまった。お互いにハバナイストリップ!だよ。
さて本題。ここからかよ!ここからだよ!
ナイロン100℃「江戸時代の思い出」はナンセンスコメディーの時代劇だ。
ナンセンスコメディーってのは『意味付けを拒むような作品』『だじゃれなどたわいない笑いを売り物にする喜劇』だそうだ。
さてそう考えて改めて「江戸時代の思い出」を思い出してみると、確かに意味付けはできない、というか意味付けしようとも思わなかった。でも「たわいない笑い」なんてのもなかったと思う。あれのどこがたわいないの?は?!とグーグル先生に噛みつきたいくらいだ。
東京公演では最前列ということもあってとにかくヘラヘラぽや〜んと熱に浮かされたようになってしまって、だってそりゃそうでしょう、ずっと目の前数メートルにいるんですよ推しが。そりゃぽやぽやしちゃうでしょうよ。
それでもとにかくおもしろかったことだけは覚えていた。何が?と言われると、何がって言われても困るとにかく観て!と答えたくらい笑ってたことしか覚えていない。
オープニングの3人娘の歌からしてもう最高でこの先の面白さが約束されたようなもんだった。英語詞だったけれど映像に訳もついていてぐふぐふ笑った。パンフレットをじっくり読んで緒川たまきさんの作詞と知ってから聴くとまた格別。
話の展開はとにかく唐突。何の説明もなくポンとその世界に投げ出されて、それがポンポンどんどん続いて、伏線?何それ?収拾?え?という感じで第一幕、二幕、と話が進んでいく。
前回、ネタバレになるってんで全然書けなかった点だけ拾うと。
客席にスポットを当てての『心の声』を勝手にアフレコするのも面白かったけど、急に客席のカップル(劇団員の猪俣三四郎さんと水野小論さん)が立ち上がって「こんなくだらないの見る価値ない」と言って男性が帰ろうとするくだりはもう涙が出るくらい笑った。
女性が「悪いよそんなの、演じてるひとたちに失礼だよ」というのに対し男性が「いいんだよ!ロンドンではそうやって客が意思表示するんだ」(台詞はうろ覚えです)と言いいながら通路を進むのだけれど、そこに「席にお戻りください」と現れるのがザンバラ髪に矢が刺さった鎧姿の落武者で、「あなた誰ですか!」と聞かれての答えが「北九州芸術劇場の者です」。これが東京では「本多劇場の者です」だったので、来るぞ来るぞとわかってたのに爆笑しちゃったわたくし。
さらに落武者…いや、劇場の人は「ここはロンドンじゃありません、野田秀樹じゃあるまいし」とたたみかけてて、演劇好きなお客さんにはもうたまらなかったんじゃないかな。眼鏡太郎さん演じるこの劇場の人、三幕にも出てきてそこもまたたまらんかった。なんだろ、あのおかしみは。
芝居の途中で席を立つ、立たれる、という多分演じる側としてはできればして欲しくないであろうことをネタにして笑いにしてしまう。
あざとくてわかりやすくて、演劇に浅いわたしみたいなのにも笑えるシーンではあったけれど、これ下手な役者さんがやったらグダグダになってただろうと思う。
本筋とはまったく関係ないシーンですらこの凝りようで。
いや、本筋ってなんだ。本筋なんてなかったぞ。
ケラさんの手によって、三宅弘城さん演じる武士之介と大倉孝二さん演じる人良のふたりという縦糸に、立派フォーの4人やお茶屋の三姉妹や尻侍や悪玉キーーン…(ああ、ほんとにワケがわからないでしょう、そりゃそうですよ、書いててもなんだこりゃって思うもん)などなどさまざまな思い出が横糸で絡みついて出鱈目で大きな布が織りあがって、観客がずっぽり包まれた感じ。
それがなんとも心地よかった。
あたしはナイロンのお芝居の中でも『イモンドの勝負』が大好きで、特にナンセンスコメディーが好みだったってのもあるのかな。
東京公演に撮影が入ってたから多分円盤化されるとは思うけど、されたら絶対買う。どうでもいい時に観たい。
大倉さんがおもしろくて素敵だったのは前回も書いたので書きません。
語彙力がなくなるんですよ褒めようとすると。なんなんだろうあの人。
なんなの!もう!!好き!!(熱)。
……という会話が何度も繰り返されたのが、観劇後のお茶会。
そう、九州在住の沼のひとおふたりとお茶会をしたのでした。
去年のNODA MAP大千穐楽後にお会いして1年ぶりの再会だったけど、顔を合わせた瞬間から昨日も一緒だったかのような自然な会話ができて、やっぱり好きなことが一緒なのって特別だなあと思った。
特にこの日は、放送後約6年経ってようやく待望の!念願の!『アンナチュラル・シナリオブック』が発売になって間がない日で。
わたしの住む地域では手元に来ていたけれど九州ではまだで、彼女たちのシナブはまだ到着していなかったのだった。
あ、言い忘れてましたが、わたしたちは大倉さんが好きでドラマ「アンナチュラル」も大好きなのです。
そんな彼女たちにわたしは軽い気持ちで、シナブの特典としてついてきた『UDI』(アンナチュラルの舞台になっている不自然死究明研究所)の名刺大カードを「ばばーん!」とテーブルに出して見せたのだが、彼女たちが二人揃って「わぁ…」とどちらも手をさっと引っ込めて、顔だけ近づけてまじまじとのぞきこんだのがとても印象に残っている。
…これがヲタク仕草というやつか。
なんと愛らしい。
今年も会えてよかった。また会えるといいなあ。
というかきっとまた会えるはず。
だって大倉さんの沼は深い。
というわけで、小倉まで大倉さんを観に行った話はおしまい。
小倉まで行って結局ごぼう天うどんも食べずに帰ってきたけれど、それよりずっとおいしい記憶ができたからいいのだ。
(本題に入ってからのヲタクみがすごい…)