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日帰りで博多へ行った話

終わってしまった。
NODA・MAP 「兎、波を走る」博多座、大千穐楽。

大阪公演よりもパワーアップしていて、我が推しはしょっぱなから絶好調でひとりで会場の笑いを掻っ攫っていた。

出てくるだけで、絶対何かするぞ今日は何をしてくれるのか、と期待を背負っていたことは間違いなく。

そしてその期待にさらりと応えていた推しは本当に本当にかっこよかった。

ひりひりするような展開の中でもその場を楽しんでいるようにすら見えましたよ、大倉孝二さん。大好きです。

アリスを題材にしたストーリー。

「さっと見れば兎に見えたのに」
「じっと見ちゃだめだよ、さっと見ないと」

というセリフの深い意味なんて考えずに、笑って見ているうちに後半それは思いもかけない方向へ転がっていく。

ああ冬にWOWOWで放送されるそうなので、見られる環境の人は見てほしい。

なにをどうしたらいいのかなんてわからないけれど、とにかくひとりひとりが忘れずにいること、が大事なのかもしれない。忘れないでそのことを考え続けること。


そんな「兎、波を走る」大千穐楽を観劇するにあたってわたしは15年ぶりくらいに飛行機に乗った。

若い頃は自分で航空券とホテルをおさえて海外旅行へ行ったりしてたくせに、15年のブランクはでかかった。

なにがなにやらわからない。

紙のチケットは手元に来ず、なにやら番号を打ち込むだけでいいという。

なんじゃそら。

なんならオンラインでチェックインしておけば、機内持ち込みだけならまっすぐ保安検査に行けばいいらしい。

なんじゃそら(2回目)。意味がわからない。

出発24時間前からオンラインでチェックインできるというので、早速家のPCからやってみた。

「搭乗券」と書かれたページが表示された。

それで終わりだった。

あまりにあっけない。

ほんとにこれで飛行機に乗れるのか。

これが搭乗券なのか。

どうやらすみっこに記載されたQRコードをかざせばいいらしい。

それだけか。それだけなのか。

あの、便名とか行き先が書かれたチケットはないのか。

紙を。

わたしに紙をください。

結果、わたしはその画面をプリントアウトして持っていくことにした。

紙、それは心の拠り所。


そしてわたしは当日、始発のバスに乗り地下鉄に乗り換え名古屋駅から中部国際空港セントレアに向かった。

遠い。

車で行けばという話もあるだろうが、わたしは高速道路はもちろん片側3車線の道路の運転はできない。

できないといったらできない。

車線変更ができない。

高速なんて高速教習で乗っただけだ。

おそろしい。

ははははは、自慢じゃないがわたしにはできないことが山ほどあるのだ。
……ほんとに自慢じゃない。


セントレアへは名鉄のミュースカイという特急で行く。

これも初めてだ。

この年になって初めてのことばかり経験していることに少々驚く。

まだまだ知らないことってたくさんある。


ミュースカイ車内では空港での注意事項や出発までの手続きなどが、小さな画面で流れていた。

荷物を預けるわけじゃないし、あとは空港へ着けば一安心だな、と思っていたところで画面に一瞬「モバイルバッテリーは持ち込みができない」という一文が出て消えた。

モバイルバッテリーは持ち込みができない、とは。

わたしはバッグの中の、二日前に買ったばかりのモバイルバッテリーを見た。
今まで使っていたバッテリーが使えないことが判明したのは出発二日前で、なんならスマホも機種変更してまだひと月経っていない。

バッテリーのもちは結構いい方だとは思うが、慣れない土地へ行くとスマホだけが頼りになる。

ってゆーか、ひとりで出かけるのにバッテリーなしで間に合うわけないじゃん!
ということで大容量のモバイルバッテリーを買ったのだ。

ちょっと待って、今みんなバッテリーくらい持ってるでしょ、それもヒコーキに乗るくらい長距離のお出かけならなおさら。

なのに持ち込みはできないとはこれいかに。

もう一度確認したいのに、すでにセントレアに近くなっていたせいかその画面は二度と現れず、わたしは不安なまま国内線出発ロビーへ向かった。

そしてまず、機内へ持ち込めるもの持ち込めないもの、と書かれたポスターをガン見した。

どうしよう、わたしはこの猫印ミルクさんの巾着にモバイルバッテリーをいれて手荷物として預けないといけないのか。

福岡空港について、ターンテーブルでトランクに混じってこの巾着が流れてくるのだろうか。


いくつかの注意事項の中に、PC、モバイル関連は別にしてカゴへいれてください、と書かれているのを見つけた時は心底ほっとした。

なんだよ、バッグから出して別にすればいいのか。
考えりゃ当たり前のことなのに、心配性ってほんとこわい。

出発20分前に保安検査場を通過しておけばいいのに、そんなこんなでわたしが保安検査場を通ったのは出発80分前だった。

前倒しが過ぎる。

まわりのひとが皆スマホをピッとかざして通っていくところを、わたしはガサガサと紙を広げてQRコードの部分をかざした。

問題なく通れた。

紙、最高。

安心感半端ない。

モバイルバッテリーもちゃんと別にカゴに入れた。

なにも問題なかった。

問題なさすぎて時間が余りすぎた。

搭乗ゲートはすぐそこだった。

とりあえずクロワッサンとカフェオレを買ってヒコーキを見ながら何枚も写真を撮った。

本も読んだ。

時間があえば博多で合流しようと思っていたチーム推しのみなさんへのお土産も、選ぶほど種類がなかったが買った。

セントレアにはあんなにたくさん素敵なお土産が売っているのに、とにかく搭乗ゲートまでまっすぐ来てしまったせいでわたしからのお土産は「うみゃーっ手羽」になってしまった。

きっと皆さんはおしゃれなお菓子とか持ってくるんだろうな、と思ったがもう遅い。

おまけにうみゃーっ手羽4パックがかなり重い。

会えなかったらわたしはこれをこのまま持って帰るのかと思ったら気持ちまで重くなった。


でも久しぶりの空港はとても楽しかった。

今から旅に出るのだというわくわくした気持ちでまわりを見渡すとお弁当をひろげている家族がいた。

お手製のお弁当だった。

こんなに朝早いのに弁当を作って持ってきたのか。

そしてその、からになった弁当箱を持ったままヒコーキに乗るのか。


保安検査もクリアしたんだな、とX線を通ってきた弁当を食べる家族連れ(それも二組いた)をぼんやり見ながら、モバイルバッテリーを持ち込めるかあんなに心配していた自分の小ささを痛感したわたしだった。


また長くなったので分けます。
まだ出発もしてない。










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