善と悪のパラドックス
少し投稿をさぼっていました。
スレッズの方が書きやすいのはなぜでしょうね。
最近読んだ本の感想です。
善と悪のパラドックス
ヒトの進化と〈自己家畜化〉の歴史
リチャード・ランガム
霊長類の研究者でハーバード大学の教授が、ほぼ同じ種であるボノボとチンパンジーの観察をする中で、その攻撃性の強さの違いから人類の進化の足跡を解き解そうという内容です。
面白い!
攻撃性と一口に言っても反応的なもの(衝動的で無計画)と能動的なもの(計画的で冷静に行われる)では、全く違う。人類の社会は反応的攻撃性を抑える方向で進化してきた。ボノボも反応的攻撃性がかなり抑えられた社会生活を送っていることから、チンパンジーとどのように違いがうまれていったのか、そこから人類の進化の過程が解明できるのではないか、という論旨が展開されています。
家畜化した動物の特徴から、人類も自分で自分を家畜化した(自己家畜化)のではないかという仮説を立てて、それを様々な研究から立証しようという試みをされていました。
とても丁寧に述解されていて説得力があります。なるほど、そうかもしれないと思えました。
中に出てくる印象的な一文(p.41)
人類学者のサラ・ハーディによると、飛行機の狭い区画に数百頭のチンパンジーを閉じこめると、暴力的な混乱状態になるが、ほとんどの人間は混み合った状態でも落ち着いている。しかし、デイル・ピーターソンが指摘したように、隠れた敵が爆弾を機内に持ちこまないように厳しい審査が必要だ。この対比は、人間の反応的攻撃性が低く、能動的攻撃性が高いことによって生じる。
というもの。人間は他の霊長類に比べて怒りや恐れなどの感情的な攻撃性は低いが、計画的、冷静な攻撃により他の霊長類より多数の犠牲を出すということを象徴的に表した一文だと思いました。
著者は、この本の前にも『男の凶暴性はどこからきたか』という本を共著で出しています。なんか直球なタイトルで笑ってしまいますね。こちらも面白そうです。