読書録「模倣と創造 13歳からのクリエイティブの教科書」
図工人が読んだ図書
「模倣と創造 13歳からのクリエイティブの教科書」を読んでみたので、アウトプットとして記事にしてみます。
この図書を読んだ理由
本書によると「13歳というのは、創造性のスランプが起こる」とある。普段、子ども達と接していて個人差はあるが11・12歳でも創造脳を使わなくなる子が多くいる。
その理由として、自我が芽生え、自分の内面のイメージよりも、外とどのようにコミュニケーションをとっていくかを大事してしまうからである。
図工教員としてしてては13歳の壁を乗り越える支援ができないかと考えていきたい。
本書を読むことで、日常の授業で活かせる事例が多数ありました。
創造というと特別な人の能力のように思われるが、学んで身につけられるスキルであり教育の現場でも活用できる実践が多く紹介されていました。
大学院でプロダクトデザインについて学んだ経験から、新しいプロダクトを開発するには創造力が必須であった。新しいプロダクトデザインを生み出すプロセスは、本書の内容と一致するところが多かったです。
本書の概略と図工の授業に活かせる点
はじめに
創造力は誰もが身につけられる希望の力で才能や遺伝ではなく、学んで身につけられるスキルであり、日常をより楽しく、人生をより自分らしくする。また「答えのない時代」を生き抜くための希望の力である。
これからの未来を作り出す子ども達にとって必要な力であり、教科の中では図画工作科がその一端を担っている。
創造性にはBig-CとMini-cの2種類がある
Big-C(大文字の創造性):は社会に大きな影響を与える創造性であり例としてスティーブ・ジョブズ、ピカソなどの著名人の能力。
Mini-c(小文字の創造性)は日常的な創意工夫であり、例として絵を描く、新しいレシピを試すなど誰でもできる創造的活動である。
Big-Cの前には無数のMini-cがあり、Mini-cの積み重ねがBig-Cにつながり現代は誰もが気軽にMini-cを発揮できるチャンスに溢れている。
Mini-cの絵で表現する領域の基礎や楽しさは、図工の授業の中で培う力である。特に楽しさは大切にしたいことです。
創造のプロセスは模倣→想像→創造の3段階
模様では対象を細部まで観察し、感性のセンサーを働かせ、美しさや心地よさなどの感覚のデータベースを脳内に蓄積する。具体的なトレーニング方法としては、目の前の物をデッサンするように観察し、好きなイラストを手書きで模写する。
図工の授業では、自然な流れで対象物を模倣させて、表現することを心がけていて、中学校の美術の授業のように名画を直接模写するような取り組みは、しないようにしています。
想像(えがく)では、模倣で身につけた型をベースに、自分なりのアレンジを加え、自由に発想を膨らませ、ユニークなアイデアを生み出す。
想像力を鍛えるには、日頃から好奇心を持って世界を観察することが大切とある。
創造(つくる)では、アイデアを形にし、新しい価値を生み出す段階で試行錯誤を繰り返しながら、完成度を高めていく。失敗を恐れずチャレンジし、フィードバックを得ることが成長につながる。
図工の授業で、大切なキーワード満載の項目であった。「試行錯後」「失敗を恐れない」など
手書きの習慣が創造に不可欠な理由について
描くことで考える行為は、創造の基本スキルであり、良い創作物の型を身体で覚え、創造の土台を築くことができる。手を動かすことで、自分の好みや個性が明確になっていく。
センスは模倣の積み重ねで磨かれる
センスとは良いものを感じ取った経験の総量であり「いまどんな心地なのか?」と自問しながら模倣することが大切。模倣を重ねることで、自然とセンスが磨かれていく。
やらなければならないタスクに追われてばかりでなく、感じる時間を意識して作りだしていきたいです。
創造の扉を開くための第一歩
本書は創造の入り口に立つためのガイドブックであり、模倣から始めることで、誰もが創造の扉を開くことができることを教えてくれる。「答えのない時代」を豊かに楽しく生きるヒントが詰まった1冊でした。
まとめ
「模倣と創造 13歳からのクリエイティブの教科書」は、13歳からの入門書として書かれていますが、大人が読んでも学びが多い一冊です。
特に美術教育に携わっている私には、創造性を身につけるための実践的なアドバイスが満載で、刺激になりました。
著者の佐宗邦威氏は、デザインやビジョン思考の第一人者であり、その知見が惜しみなく披露されています。
創造性を高めたい人、新しいアイデアを生み出したい人には必読の書と言えます。