西日暮里で文化を育む場づくりを。HAGISTUDIOとBook Apartmentのまちづくり
あなたは「シェア本屋」という言葉を聞いたことありますか?
それは最近日本全国にひろがっている、新しい本屋の形。
店舗の本棚を月額料金で「棚主」とよばれるユーザーに貸し出す仕組みで、誰でも小さな本屋を始めて、自分の本や好きな本ことができるのが特徴です。
都内ではおそらく、吉祥寺にある「吉祥寺BOOK MANSION」が一番最初ではないでしょうか。三鷹で無人古本屋「BOOK ROAD」を運営する店主の中西功さんが「本屋をシェアする文化の発信基地を作りたい」という想いで立ち上げたお店だそうです。
その他都内では東急池上線の池上駅ちかくの「池上ブックスタジオ」、今年2月に松陰神社前にオープンしたばかり「100人の本屋さん」などがあります。
この日は2019年12月に西日暮里駅直結の2階建の建物「西日暮里スクランブル」内にオープンした「西日暮里Book Apartment」さんに初めて伺ってきました。
店内に入ると約80組の小さな本屋さんが本棚に納まっていて、それぞれセレクトした本が1区画ごとに並んでいます。
この日は、Book Apartmentの店長であり、建築設計事務所HAGI STUDIOの設計士でもある田坂創一さんに話を伺いました。
そもそもこのBook Apartmentが入っている「西日暮里スクランブル」というビルは、もともと数年間空き家だったとか。現在はそれをHAGI STUDIOさんが「まちをまぜる」というコンセプトのもとに、JR東日本さんの協力も得ながら運営しているとか。
シェア型本屋の他にも、立ち食いカレースタンド、精神疾患のある方の就労継続支援をする事業所が運営する雑貨のショップ、セルフサービスの立ち飲み屋、ジェラート屋、ワークショップスペースなどが、西日暮里の駅と街にうまく融けこむかのように配置されています。
カレースタンド「SPICESH(スパイセッシュ)」
田坂さんによると、Book Apartmentという場は、棚主にとっては、「売る人」と「買う人」その両面で西日暮里という街に関わることができる場であり、また道行く人々にとっては、いろんな個性の小さな本屋に出会える場になっているとか。
実は西日暮里はもともと駅前に本屋がなく、地域の方から本屋が欲しいという要望もあったとか。かつて街になかった役割を埋める役割も果たしているわけです。
一つ一つの書店の棚主も、作家の方やひとり出版社の方だったり、自主出版的なZINEを発行している方だったりと、本当に個性豊か。そのせいか一般の新刊書店では出会えないような本が沢山ならんでいて、見ているだけでわくわくします。
そして棚主がお店に立つことができる「1日店長」という仕組みもあり、自分の本を中央の展示スペースに面出しして、来店したお客様に対面で紹介することもできます。
その他にもJR東日本との連携企画として、駅構内コンコースの壁を利用して「旅する本棚」という本が駅を通る人とのコミュニケーションを誘発させる取り組みもしているとか。
建物の内部だけで完結する複合施設は沢山ありますが、駅と街と溶け合いながら、道ゆく人と自然とコミュニケーションができる企画をしている施設は珍しいと思います。
シェア本屋の立ち上げの経緯やその過程については、田坂さん自身が書いているnoteがありますのでこちらをどうぞ。
もし西日暮里付近を通りかかった際には、ぜひ西日暮里スクランブルとBook Apartmentに立ち寄って、あなたも道ゆく人として「混ざり合う」ことをおすすめします。