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幸せなおじぞう(第5話)

父はお地蔵さんを探してあちこち掘りました。

しかし1年たっても2年たってお地蔵さんは出てきません。

その代わり、堀った後から桃の木が生えてきて

いつのまにかたくさんの実をつけるようになりました。


掘れども掘れどもお地蔵さんは見つからず、

桃の畑のほうはどんどんと広がっていきました。


あたり一帯が津波のように流されていましたから

父一人でやっていたのではなかなかはかどりません。

そこで父は近くの農家を回り、借金を肩代わりするからといって

協力を呼びかけました。


私の生家はつくり酒屋で、私以外皆亡くなっていましたが、父ががれきを取り除いていたときに見つけたつづらの中に、証文の束が入っていたんです。

それはあたりの農家と私の生みの親との間で交わされた借金の契約書でした。父はその借金を引き受けると自分から申し出たのです。


借金を肩代わりしてもらえると聞いて、村人たちは喜んで父のいうことを聞き、荒れ地を掘り起こしていきました。荒れ地はみるみるうちに豊かな桃の畑にかわってゆき、そのすさまじい勢いは驚き呆れるほどでした。


父が亡くなるころには、小高い丘から眺めるとあたり一面桃畑で、地元の名産品として遠い国まで知られるようになりました。

その桃のおかげで、父は肩代わりしていた借金をすべて帳消しにしてもなおありあまるほど豊かになりました。

物事がうまく運ぶたびに父は畏れおののき、なお一層お地蔵さん探しに努めました。

けれど、お地蔵さんはどこを探してみても見つかりませんでした。

(幸せなおじぞう 第5話 おわり)

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