アニサキス飼育日記 2日目「君の名は」
いつまでも「こいつ」とか「アニサキス」とか呼ぶのも他人行儀なので、名前が欲しい。ところがどっこい、性別がわからないのでどんな名前をつけたらよいのやら…
と、途方に暮れかけたところでふと気づく。
もしいつか子どもを持つことになったら、特定の性別を想起させないような名前をつけたいな～と思っていたのに、こいつの名前を考えるとなったら咄嗟に性別切り口で考えているじゃないか。まだまだ内在化した固定観念を持っていたなと反省。
というかそもそもアニサキスに性別という概念はあるのか…？
まあ手がかりは多いほうがいいだろうということで、早速調べてみることに。
アニサキスの性別
どうやら雌雄異体ということまではわかったが、ググれどググれど判別方法が見つからない。情報少なすぎ。ちゃんとした論文とか書籍を読めばいいんだろうけどそんな時間も気力もない。こちとら『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』すらも読むのしんど～～と思っている社会人だ。舐めるな。
ネット徘徊を重ねた結果、なんか、回虫の成虫の雌雄判別方法が載っているサイトに辿り着いた。アニサキスは回虫目アニサキス科の生き物らしいので、まあだいたい一緒だろ～ということにする。
雄の方は体が短く、やや細く、そして尾端が腹側に弧状に曲がり、その先端（Ｂ）には針状の交接刺がある。(https://www.chiringi.or.jp/k_library/survey/h18survey/ippan/1807.htm）
手元のアニサキスを見ると、針状の何やらは見当たらない。
……というわけで、あなたは今から「メス」ということにします！よろしくお願いします。
てか雌雄異体ってことは、寄生先でさらに異性と出会って交尾しなきゃいけないのか。かなりハードル高い気がする。たまたま同性ばっかりのクジラに寄生しちゃったらどうすんだろ。鱈のうちから一緒の幼馴染的な相手と「30歳なってもお互い独身だったら結婚しようね笑」みたいな約束しとくのかな。勝手に期待して傷つくだけだしやめときなよ～。
いざ、名前を考えよう
「アニサキス」をもじった名前はさすがに安直すぎるので避けたいところ。わたしが「ヒト科ヒト属だからヒトミちゃんにしたよ〜」とか言われたら、親のこと信頼できなくなると思う。
(もしそういう由来のヒトミさんがいたら本当にごめんなさい、素敵な名前です)
形から名前をつけるなら「線」とか…？悪くない。
いや、悪くないどころか、わたしが人生で一番好きな漫画『おしゃべり階段』のなかでも一番好きなキャラクター、中山手線くんと同じ名前。贅沢な名だね！！ということでナシ。(ここまで一息、超早口)
線くんの良さは別途語らせてほしい。
色から名前をつけるなら「シロ」？出身地を由来にするなら「タラちゃん」？いずれも国民的アニメがちらつくのでナシ。
うーん、難しい。どれもいまひとつしっくりこないので友人に相談してみた。
一人目は、大学時代の先輩。お子さんもいるし猫も飼ってるし、私よりよっぽど名付け経験を積んでいるであろう名付け界の大先輩。かなり期待できる。
メルヘンなご提案ありがとうございます。
早速アニサキスに呼びかけてみるが、どうみてもショコラとかマロンという容貌ではないのでウケてしまう。
二人目は大学時代の友人。名付け経験の有無は知らないが頭の切れるクレバーな人なのでこちらも期待大。
いろいろ提案してもらったなかでひとつビビッとくるものがあった。
…りりちゃん！！
響きもかわいくて呼びやすいし、何よりこう、風刺めいた……社会性のあるメッセージなども………
なんかうまいこと言おうとしたけど無理だった。ブラックジョーク効いてて好きなのでりりちゃんにします。ありがとう。
いいかい、今からお前はりりちゃんだよ
名前が決まった途端に愛らしさが増してきて、在宅勤務の合間に何度も眺めにいってしまう。
りりちゃんはいつ見てもかなり元気で、丸まったり伸びたりうねってみたりとせわしなく暴れまくっている。ペットボトルのキャップだとなんだか手狭なようなので、ちょっとした瓶に移し替えた。
透明の容器にしたことで、横からもりりちゃんを見られるようになって嬉しい。
せっかくだし飼育日記の名前も「りりちゃんはびんちゅうです」にしちゃおうかなと思ったけど、どう考えてもすべってるのでやめます。