「害獣を保護しよう」と呼びかけるマッチラベル
「紙もの」を絵解きしてみた その③
おそらく1950年代末から60年代のチェコのマッチラベルに「狩猟動物を守ろう」と書かれたものがありました。「稀少動物を守ろう」ならしっくりくるのですが、狩猟の対象なのに「守ろう」と言っていることに違和感を覚えました。確かに動物がいなくなれば狩猟ができなくなるのですが。同じくスロヴァキアのやはり1960年代前半のものと思われるマッチラベルに「冬には動物にエサをあげよう」と書かれたものがありました。鹿が描かれていますが鹿は農作物を荒らす「害獣」のはず。1960年代のチェコスロヴァキアは農業が不振で、国の定めた5か年計画の目標も達成せず、天候不良で不作も重なるなど大変な状況であったとのことで、作物の敵である鹿を保護する絵はなんとも不思議でした。
鹿を保護して狩猟の獲物を増やす発想
ネットで検索していくとあかりんごさんという方がジビエについて書いた「獣害=餌付け!?ヨーロッパの林業の超プラス思考とは」と題したサイトの記事を発見しました。この解説では、ヨーロッパでは鹿を餌付けし、栄養を取ってもらうことで繁殖率を上げれば、狩猟する権利を売ったり、獲物をジビエとして販売できるので、鹿を害獣として認識していないとのこと。この説明が当時ののチェコスロヴァキアに当てはまるのかはわかりませんが、国からのメッセージの手段である社会主義時代のマッチラベルで、鹿の保護を訴えているのは、鹿を保護して一定の捕獲量をあげ、それが国の経済計画に組み込まれていたのではという推測が成り立ちます。
東ドイツのクリスマスカードにも
ヨーロッパのクリスマスカードには鹿が絵が描かれているものがあります。トナカイのイメージというよりは、鹿の角は生え変わるので、新年のイメージなのだと思います。東ドイツの切手の貼ってある絵はがきには「メリークリスマス」の言葉とともに、餌場に集う動物をそっと見ている子どもの図柄がありました。冬の餌付けが農村部でみられたのかもしれません。
まとめ
このようにマッチラベルに動物がどのように描かれているかを絵解きすることで、当時の人との関係が紐解けます。
参考 あかりんご「ジビエーる 獣害=餌付け!?ヨーロッパの林業の超プラス思考とは」2021のサイト記事