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城山文庫の書棚から 038『東京裏返し』吉見俊哉 集英社新書 2020

吉見さんの本は学生時代に読んだ『都市のドラマトゥルギー』以来だから四半世紀ぶりか。副題にある専門の社会学的知見を活かした街歩きは、仕事がら都市のハード面にばかり目を向けがちな自分にとって意義深い。

都心北部、特に旧東京市の周縁にあたる荒川区や北区を取り上げているところが新鮮だ。先日この本を片手に訪れた王子はいま話題の渋沢栄一ゆかりの地だし、都電荒川線終点の滝の川では彰義隊の墓や投げ込み寺に地霊を感じた。これまでノーマークだった蔵前はいつの間にか「東京のブルックリン」と呼ばれているそうだ。近々ぜひ行ってみたい。

かれこれ半世紀も暮らしている東京だけれど、まだまだ新しい発見があるはずだ。本書のテーマである時間の積層を見つけに、懐かしい未来を探し求めて。