Ken H

東京在住♂ さて、読書会共同主宰、づめ散歩主宰 飼い猫は千(カズ)と萬(ヨロズ)の2匹

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最近の記事

城山文庫の書棚から094『エリアマネジメント 効果と財源』小林重敬+森記念財団 編著 学芸出版社 2020

『まちの価値を高めるエリアマネジメント』の続編。都市再生にとってエリアマネジメントが有効なのは明らかだ。ではその効果をどのように測定し、どう伝えるか。そしてその財源をどうやって確保するか。実務者が直面する課題に実践的に答えたのが本書である。 効果の測定については、横浜駅西口広場とグランフロント大阪における社会実験による調査事例が紹介されている。費用便益、いわゆるB/C分析には科学的な分析手法の活用が不可欠だ。効果を伝える手法として、国内外の活動報告書を紹介する。 持続的な

    • 城山文庫の書棚から093『まちの価値を高めるエリアマネジメント』小林重敬+森記念財団 編著 学芸出版社 2018

      最近よく耳にするようになったエリアマネジメント。特定の区域で地権者、事業者、住民や行政など様々なステイクホルダーが関わって地域の価値を高めるまちづくりの取組みだ。都心のオフィス街だけでなく郊外の住宅地などでも採り入れられている。 我が国が参考にしたのが欧米のBIDとTIFだ。いずれも特定のエリアで地権者等が租税等の負担により地域を良くするための財源を確保し、エリアマネージャー=AMを選任してその任に当たらせる。東京駅前の大丸有や大阪駅前の梅きたの活動が代表的だ。 公共空間

      • 城山文庫の書棚から092『タクティカル・アーバニズム・ガイド』M.ライドン+A.ガルシア晶文社 2023

        アメリカ発祥・最新の都市デザイン理論、タクティカル・アーバニズム。本書で初めて耳にした。「短期的かつ低コストで規模を変更できる介入と政策を用いて、近隣のまちづくりと活性化を行う手法」と定義されている。市民からの小さなアクションから始まるのがポイントだ。 紹介されている事例に共通するのが、現状のまちの不満に対して小さな抵抗を試み、そこから波紋を広げて公的承認を勝ち取っていること。初めからルールに従うのでなく、制度の不備を突いて近隣の共感を生み出し結果的に行政を動かすというゲリ

        • 城山文庫の書棚から091『インフォーマル・パブリック・ライフ』飯田美樹ミラツク 2024

          カフェ文化研究家の飯田さん、時間をかけ満を持して書いた2冊目の著書のテーマは“パブリック・ライフ”。街は誰のものなのか。アメリカ型の郊外の何もない街で子育てを経験したことが彼女の執筆の原動力となっている。 整然としたニュータウンで子育てに孤軍奮闘し、疎外感と孤独を味わった飯田さんは「郊外の街にこそサードプレイスが必要だ」と強調する。そこに欠けているのは親密な空間であり、多様性を許容するオープンな場所だ。 人が惹かれる街には法則がある。彼女はそれを7つのルールにまとめている

        • 城山文庫の書棚から094『エリアマネジメント 効果と財源』小林重敬+森記念財団 編著 学芸出版社 2020

        • 城山文庫の書棚から093『まちの価値を高めるエリアマネジメント』小林重敬+森記念財団 編著 学芸出版社 2018

        • 城山文庫の書棚から092『タクティカル・アーバニズム・ガイド』M.ライドン+A.ガルシア晶文社 2023

        • 城山文庫の書棚から091『インフォーマル・パブリック・ライフ』飯田美樹ミラツク 2024

          城山文庫の書棚から090『コミュニティデザインの現代史』饗庭伸・山崎亮学芸出版社 2024

          都市計画家である饗庭伸さんとコミュニティデザイナー山崎亮さんの往復書簡。市民参加型まちづくりの歴史を辿りながら時代を築いたキーパーソンを訪ねインタビュー。饗庭さんとは大学同期。自身が学んだ時期前後の動向も確認することができた。 行政が策定する都市計画に市民が参加するようになり、呼び方も柔らかいまちづくりへ。最近では横文字でコミュニティデザインとも呼ばれる。いずれもすべてを言い表せているのではなく、重なり合ったり補完しあったりする呼び方だと思う。 この界隈のトップランナーと

          城山文庫の書棚から090『コミュニティデザインの現代史』饗庭伸・山崎亮学芸出版社 2024

          城山文庫の書棚から089『住宅の世代間循環システム』住総研 編 萌文社 2019

          日本では中古住宅の流通市場が成熟していない。米英仏の全住宅供給量に占める既存住宅の比率が7〜9割なのに対し、日本のそれはわずか13.5%。新築を促す国の政策とそれに乗っかる住宅業界、新築好きな国民性など理由は多重的だ。 最近になってようやく、リノベーションによる中古住宅のカスタマイズの価値が評価されているが、大勢を動かしている訳ではない。本書では住宅・不動産の専門家が3年間討議した活動成果をまとめたもの。仕事でお世話になった野城先生が総括を務めている。 戸建住宅は建てて2

          城山文庫の書棚から089『住宅の世代間循環システム』住総研 編 萌文社 2019

          城山文庫の書棚から088『建築と経営のあいだ』高橋寿太郎学芸出版社 2019

          創造系不動産の高橋寿太郎さん第二弾。副題に「設計事務所の経営戦略をデザインする」とあるが、発注者のプロジェクトマネジメントにも通じる内容だ。建築を作ることが事業の一環である以上、そこには必然的に経営が関わる。当たり前の話だ。 これまでの施設計画で定石だった「与条件から建築設計を始める」という実務的なプロセスが当てはまらないケースが増えているという。社会や技術の変化が加速し、様々な業界ごとの「経営の定石」が確たるものでなくなっているからだ。VUCAの時代ならではの現象である。

          城山文庫の書棚から088『建築と経営のあいだ』高橋寿太郎学芸出版社 2019

          城山文庫の書棚から087『建築と不動産のあいだ』高橋寿太郎学芸出版社 2015

          「建築と不動産のあいだを追究する」をコンセプトに掲げる創造系不動産株式会社の高橋氏。建築出身で設計事務所と不動産屋を経て起業、建主を建築と不動産の両面から支える仕事をしている。 住宅という人生最大の買物には、建築と不動産という2つの側面がある。それぞれに別々の業界があり別々のプロが関わるのが通常の在り方だった。今や建築家には不動産の知識が求められ、不動産屋には建築の知見が求められる。 著者が主戦場とする住宅業界、建築デザインを取り巻く社会背景・ビジネス環境は2000年辺り

          城山文庫の書棚から087『建築と不動産のあいだ』高橋寿太郎学芸出版社 2015

          城山文庫の書棚から086『チョンキンマンションのボスは知っている』小川さやか 春秋社 2019

          著者はタンザニアでフィールドワークを行いスワヒリ語を操る文化人類学者。登場人物は香港のチョンキンマンション=重慶大厦に暮らすタンザニア出身の商人たち。彼らのボスと称されるカラマとの交流を通じて、アングラ経済の仕組みを解き明かす。 カラマは決して力強いボスではない。時間にルーズで顧客にはいつも怒られ、若者達からも煙草の吸い過ぎを嗜められている。けれど憎めない愛されキャラで同郷人達の信頼を獲得している。日本人の著者とのツーショット写真までビジネスに活用する強かさも併せ持つ。

          城山文庫の書棚から086『チョンキンマンションのボスは知っている』小川さやか 春秋社 2019

          城山文庫の書棚から085『マルクス・ガブリエル 日本社会への問い』丸山俊一 NHK出版新書 2023

          欲望の時代を哲学する、マルクス・ガブリエルシリーズ第三弾。昨年5月に来日した哲学界の“ロックスター”がインタビュー形式で語るわかりやすい入門書。首都高を走る車内でタルコフスキーの映画『惑星ソラリス』を想起して興奮する彼にとって、東京は刺激的な街のようだ。 世界の現状をガブリエルはネステッド・クライシス=「入れ子構造の危機」と表現する。相互に絡み合い影響し合う輪の中で、もはや一つの危機が他の危機の一部となって組み込まれているような状態だ。すべての出来事の背景には気候危機がある

          城山文庫の書棚から085『マルクス・ガブリエル 日本社会への問い』丸山俊一 NHK出版新書 2023

          城山文庫の書棚から084『全体主義の克服』マルクス・ガブリエル、中島隆博 集英社新書 2020

          8月28日の夜に開催するガブリエル氏シンポジウム、後半のパネルに登壇される中島教授との対談。現在起きている問題の核心にあるのが、公的な領域と私的な領域の区別の破壊。その背景にある新たな形の全体主義に現代社会は脅かされているのではという問題提起。 「上からの力」によって民主主義が攻撃されている訳ではない。それは「市民的服従」によるものであり、新たな全体主義の本質だという。GAFAをはじめとするグローバル・テック企業の科学と技術が全体主義の台頭を加速する。我々は国家とは別の物語

          城山文庫の書棚から084『全体主義の克服』マルクス・ガブリエル、中島隆博 集英社新書 2020

          城山文庫の書棚から083『倫理資本主義の時代』マルクス・ガブリエル早川書房 2024

          「哲学界のロックスター」の異名を取るガブリエル氏が日本の読者のために書き下ろした新書。一般層にも伝わるよう平易な言葉づかいで資本主義のめざすべき方向を指し示す。「脱成長」に対するオルタナティブとして彼が提示する「倫理資本主義」とは何か。 現代の世界が直面する難題をガブリエル氏は「入れ子構造の危機」と表現する。複雑に絡み合った危機を乗り越えるため、倫理資本主義が実行された後に「エコ・ソーシャル・リベラリズム」という未来志向の社会像を描く。 すべての企業に倫理部門の設置を義務

          城山文庫の書棚から083『倫理資本主義の時代』マルクス・ガブリエル早川書房 2024

          城山文庫の書棚から082『見ることの塩 上 イスラエル/パレスチナ紀行』四方田犬彦 河出書房新社 2024

          20年前にテルアヴィヴ大学客員教授としてイスラエルに滞在した際に書かれた本を二分割して緊急再出版。虐殺が繰り広げられているガザの今を四方田さんが見つめる「見ることの蜜は可能か」を追補。二国共存の希望が残されていた時代から絶望の今を照射する。 80年代にコロンビア大学でサイードから薫陶を受けていた四方田は、イスラエルに向かう定めだったのかもしれない。背中を押したのは山口淑子;かつての大女優・李香蘭その人だった。彼女は70年代初頭にテレビ番組の収録でパレスチナ難民キャンプを訪れ

          城山文庫の書棚から082『見ることの塩 上 イスラエル/パレスチナ紀行』四方田犬彦 河出書房新社 2024

          城山文庫の書棚から081『自壊する欧米』内藤正典 三牧聖子 集英社新書 2024

          ウクライナ戦争ではロシアを非難するのに、ガザに侵攻するイスラエルには沈黙し続ける。どちらも国際法違反が濃厚な戦争犯罪だ。欧米のダブルスタンダードの背景にある論理を、老練な中東研究者と気鋭の米国政治学者が炙り出す対談。 アメリカにはユダヤ人ロビーと軍需産業、ドイツにはホロコーストのトラウマがある。英国には3枚舌外交の後ろめたさがあるのかもしれない。だからと言って、イスラエル国家の非道を批判することと反ユダヤ主義の区別もできない状況は極めて危険だと内藤氏は指摘する。 欧米諸国

          城山文庫の書棚から081『自壊する欧米』内藤正典 三牧聖子 集英社新書 2024

          城山文庫の書棚から080『ガザとは何か パレスチナを知るための緊急講義』岡真理 大和書房 2023

          昨年10月7日に突然始まったわけではない。我々日本人も惨状から目を背けてはならない。100日を越えたイスラエル軍による今回のガザ侵攻はあまりにも度が過ぎている。3万人以上が殺され、その多くは民間人の子どもたちだ。岡真理さんが10月20日と23日に行った緊急講義を緊急出版。 1948年にパレスチナ人を襲った民族浄化の暴力、ナクバ。今回のガザ侵攻はその再来、いや規模で言えばそれ以上だ。背景には欧米列強の煮え切らない中東政策と国連によるパレスチナ分割がある。国際社会の無関心が今も

          城山文庫の書棚から080『ガザとは何か パレスチナを知るための緊急講義』岡真理 大和書房 2023

          城山文庫の書棚から079『誰も断らない こちら神奈川県座間市生活援護課』篠原匡 朝日新聞出版 2022

          「面白い」という感覚の裏側にあるのは驚きであり、驚きの根源にあるのは「知らないこと」だと篠原さんは言う。さらに言うと「見えていなかったこと」の中に何かが始まる萌芽があるとも。本書はまさにそんな本だ。 座間市役所生活援護課の職員たちの取組みを取材したルポルタージュ。民間出身で熱血漢の課長を軸に、周りでサポートするNPOやサービス会社による「チーム座間」の活動も紹介。生活援護を受ける市民にもフォーカスして、普段目に見えない社会の様相を浮かび上がらせる。 生活困窮者自立支援制度

          城山文庫の書棚から079『誰も断らない こちら神奈川県座間市生活援護課』篠原匡 朝日新聞出版 2022