
城山文庫の書棚から096『中国哲学史』中島隆博 中公新書 2022
8月に開催したマルクス・ガブリエル氏シンポジウムに登壇頂いた中島先生近著。ご専門の中国哲学4千年の歴史を春秋戦国時代の諸子百家から宋の朱子学、現代の新儒家まで一気通貫にわかりやすく解説。中国哲学を知ることは、中国を知ることに繋がる。
古代に現れた孔子や老子は高校時代に軽く触れた。荀子が説いた礼は天に由来しないことが重要だという。『老子』の中でも重要な位置を占める水が古代中国思想のキーワードというのが面白い。「無」を万物の根源と規定する形而上学を打ち立てた王弼という人に個人的には惹かれる。
西洋による中国哲学の需要が興味深い。中でも17世紀に中国論を書いているライプニッツはモナドロジーなど自らの哲学においてキリスト教的な世界観と朱子学的なそれを繋ぎ合わせた。彼が意識していたスピノザにも中国哲学の影響が窺える。神無しでも世界は存在しうるという問いかけはあまりに衝撃だったのだろう。
現代の中国思想についても触れている。胡適や熊十力、唐君毅といった人名を本書で初めて知る。古来の中国思想を踏まえ西洋やインド、日本の思想を咀嚼して新しい哲学を打ち立てている。「帝国の脱中心化」がひとつのキーワードとなる。毛沢東時代の文化大革命の影響はどうだったのだろうか?気になるところだ。